第179話 類友 前篇

 タクシーで利用すると徒歩の扱いになる。

 徒歩の場合は、前金1万円を頂き退室時にお釣りを渡すシステムになっている。

 当ホテル…残念ながら原因不明の電子鍵の故障により現在、電子ロックができない。

 つまり…自由に出入り出来てしまうわけで…

「徒歩でご利用の場合、前受で1万円頂いております」

「解りました」

「それと、シャッター開けっ放しなのですが、閉めても構いませんか?」

「えっ?そうですか、閉めてください」

 正直、徒歩でシャッター開けっ放しだと逃げる前提だと私は考えている。

「すいません…お金が無くて1万円払えません」

 やっぱり逃げる前提の利用か?

「申し訳ありませんが、ご用意頂けないと退室をお願いしております」

「いえ…最初からカードで支払おうと思ってたので」

「先ほど、前受了承しているということは現金お持ちなのではないのでしょうか?最初からカードというのは、少し話が変わってきますが?」

「いえ…その…明日、朝7時に下ろしにいくので、宿泊させてください」

「解りました、ただし、身分証コピー取らせてください」

「はい」

 でフロントに来たのだが…

「免許書お願いします」

「はい」

「あの免許証を?」

「はい」

「ですから、目の前の箱に入れて頂けますか?」

「はい?入れましたけど!!」

「はいってないでしょ!!」

「あれ?」

「下に落としたんじゃないですか?」

「……あっ…落ちてました」

「あの…何時まで居られますか?」

「はい?」

「宿泊だと何時まで居られますか?」

 本来は12時まで居れるのだが…次のシフトに回したくなかったので

「10時までですね」

「あ~じゃあ10時に下ろしに行きます」

「10時に行ったんじゃ間に合わないでしょ!!」

「えっ?どうしてですか?」

「10時回ったら延長になるんですよ」

「あ~」

 で免許証を返したのだが…

 エレベーターに乗ったり降りたり…

 またフロントに戻ってきて

「すいません。僕は何処の部屋に帰ったらいいのでしょうか?」

「はっ?」

「いや…部屋は何処かと思って」

「あなたは今、出てきた部屋が解らないんですか?403ですよ、自分で買って、1度入室してるでしょ!!」

「403か…4階?」


「という客が403に居ます」

「困ったバカだね…酔ってるの」

「おそらく、まぁ7時になったら電話して確認しますよ」


                               続く

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