第132話 採用条件

「桜雪さんの代わり、この人みたいですよ」

 辞めると決めて、残す勤務も2週間。

 履歴書が机の上に置きっぱなしになっていた。

(個人情報とか…感覚無いんだな…バカだから)


 浪人して大学行って…2年留年して…就職した会社、4ヶ月で退職…

「ダメだろ…メンタル弱そうだし…すぐ辞めそう…というか当日、ドタキャンしそう」


「それとこの人、俺達の時間で採用するんですって」

 写真の無い履歴書

 他人の事は言えないが…字が汚いのレベルじゃない…というか日本人か?

(こんなの使うのか…普通面接すらしないよな…バカだからしょうがないか)


 中卒…半年務めた会社がない…資格もちろんない…というか空白ばっか、白い履歴書だな…

「ダメだろ…もはや常識を疑うレベルだろコレ…はたらきたいって、ひらがなで書いてあるよ…一番、熱意を込めて書けよって部分だろ」


 もう誰も言うことを聞いてくれないので、自分より年下で、あからさまなバカしか選べなくなっているのだ。


 Wワークで働く連中の枠は厚い、つまり稼げないのだ。

 普通の奴から辞めていく…社員もバイトも、他で使い物にならない連中しか残らないのだ。


 僕もそうだが、脛に傷持つ者しか来ないのだから…。

 目くそ、鼻くそって事だ。

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