ぐるぐるの森【童話】

カリン

第1話 【障壁】と【葛藤】 『 はらぺこオオカミと、くるくるヒツジ 』


 はらぺこオオカミは、う~む、と悩みます。

 草原に、おいしそうな、ごちそうがいるのです。

 白くて、柔らかそうな、くるくる巻き毛が、お日さまに、ふわふわ輝いています。

 

 緑の中にいる、くるくるヒツジは、とても、きれいに見えました。

 はらぺこオオカミが着ている毛皮は、茶色くて、ゴワゴワかたいので、

 白くて柔らかそうな、くるくる巻き毛が、秘密の宝もののように、まぶしいです。

 

 はらぺこオオカミは、う~む……! と悩みます。

 とっても、とっても、はらぺこです。

 昨日から、なんにも食べていないのです。

 隠れていた林の中を、とりあえず、うろうろしてみました。

 かいけつ方法は、みつかりません。

 

 はらぺこオオカミは、うう~むっ! と悩みます。

 くるくるヒツジを食べてしまうと、あのきれいな白い毛が、赤く汚れてしまいます。

 せっかく宝物を見つけたのに、それは、とても、イヤなのです。

 茶色い毛皮の腕をくんで、首をひねって、考えてみました。

 かいけつ方法は、みつかりません。

 

 はらぺこオオカミは、ううう~むっ! と悩みます。

 はらぺこのおなかがクークーないて、早く食べよう、と誘います。

 ないてるおなかを、両方の手で、押さえてみました。

 かいけつ方法は、みつかりません。

 

 くるくるヒツジは、お食事中です。

 白く美しい、くるくる巻き毛を、お日さまにぽかぽか照らされて、

 それはそれはおいしそうに、緑の草を食べています。

 

 くるくるヒツジは、しあわせそうです。

 林の中で、はらぺこオオカミが悩んでいることなど、くるくるヒツジは、ぜんぜん知らないのです。

 はらぺこオオカミは、足音や匂いを消してしまうのが、とっても上手でしたから。

 

 はらぺこオオカミは、うううう~むっ! と悩みます。

 シラカバの木を、がしがし、牙で、かじってみました。

 おなかは、なりやみそうにも、ありません。

 そもそも、木の皮は固いので、あんまり好きではありません。

 

 はらぺこオオカミは、決心しました。

 うんっ! と、大きくうなずいて、シラカバの林を出ていきます。

 きりっ、と、顔を前にむけ、

 両手をふって、ずんずんと、

 くるくるヒツジに向かいます。

 

 くるくるヒツジは、顔をあげ、「なにか、ごよう?」 と、ききました。

 はらぺこオオカミは、ごくり、と、つばを飲みました。

 

 

 

「お友だちから、はじめませんか?」

 

 

 



      ~ はらぺこオオカミと、くるくるヒツジ ~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る