ショート・ストーリー

めるる・めりー

ひとりぼっち

ロス・タイム

 3月の最終日、31日は温かい風が吹いていた。先日までの猛吹雪と低い気温は、嘘のようだった。

 明日から、4月――新年度が、始まるわけである。

 ある者は、社会人として仕事へ。ある者は、進学し新たな学校へ。そんな新しい物語ストーリーが始まろうとしているのに、俺は一人、夜の街を歩いていた。

「案外、見慣れた景色でもこう時間があると、異世界に来たみたいだ」

 月は雲に隠れている。灯と呼べる物は、街灯と家の灯。車はあまり通らない。完全に暗いというわけでもないである。でも、見えづらいことには変わりない。そんな曖昧に明るい場所を歩いていた。

 暗い道、先が見えない、そんな風にネガティブな発想を続ける。……無理もないか、明日の自分も見えてないんだから。

 そんな、高校最後の日。

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