{第百四話} 無理ゲー

先ほどからフロストは昌を標的にして、集中的に狙っている。

ネイの近距離攻撃は少し払い除ける程度で気にも留めない。

ネラの遠距離攻撃は硬い装甲に弾かれて無意味に近い。

そのため、ネラはフロストの気を引く事に徹していたが、ほぼ意味が無い。


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監視室のモニターからフロストと昌達のそんな戦いの様子をオイラーとガウスは見ていた。

「てこずっていますね」

「何をやっているんだっ!さっさと殺してしまえ!」

冷静なガウスを他所に、オイラーは苛立ちを見せていた。


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「私の会社を再建の為、コイツを!」

フロストを操るケティングは昌を倒せば自分の会社を再建出来ると信じて疑わず、オイラーの嘘の混ざった話をすべて本当の事だと思ってしまっている。

「破壊する!」

コンテナの隙間にいた昌を巨大なアームの強大な力でコンテナごと押し潰した。

コンテナごと押しつぶされたが、コンテナが床との隙間が出来る形で破壊されたため、昌は動くことができたが、右足が床のヘコミとコンテナの破片に挟まれて、その場から逃げることができない。

いくら動きが遅いとはいえ、対象が動かなければ外れることはまずありえない。

昌は必死に足を引き抜こうとするが、抜ける気配は全く無い。

フロストがアームを振り下ろした瞬間、ネイの短剣が飛んできてコンテナの破片に刺さった。

ネイの短剣が刺さった事が原因で、昌の右足を挟んでいたコンテナの破片が少し曲がり、足を挟んでいる床とコンテナに隙間が出来きた為、足を引き抜くことに成功し、フロストの攻撃を紙一重で避けることが出来た。

「ありがとうネイ」

ネラに感謝するが、フロストのレーザー攻撃によって一息ついている暇は無かった。

フロストのレーザー攻撃は止まることをしらず、連続で撃ってくる。

レーザーの隙を付いて攻撃する事は出来るが、攻撃したところでといった現状の為、ただただ攻撃を避けているという現状。

昌の脳内には「無理ゲー」といった単語が飛び交っていたが、そこに関連意してゲームの辛かったボス戦を思い出し「どんな辛いボスにも弱点や大きな打撃を与えられるチャンスがあった」事を芋ずる式に思い出した。

ここで最初に考えた「カメラを無力化する」事を更に思い出すが、事実はなくまだ仮定の段階だ。

その仮定を事実に変えなければならない為、クリエイトを使って大きな布を出し、フロストの頭部を覆うようにかぶせた。

結果は想像通りフロストは攻撃を止めて、頭部を辺りを見回す様に左右や上下に動かし、レーザーを放ち頭部を覆った布を切り落とした。

完全に仮定を事実に変える事が出来た瞬間だ。

これで勝利への活路の片鱗が垣間見えた。


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オイラーの工場が見える位置に設置された塔の展望台にマスターとソアリンが立っていた。

マスターは双眼鏡で工場の様子を見ていた。

「やはり、工場はどこも警戒態勢に入っていて警備レベルが上昇している。これでは迂闊に近づけない」

工場の出入り口はもちろんのこと、外部から侵入しうる可能性がある箇所すべてに懐中電灯を持った警備員達が集まっていた。

「俺達に任せておけと言ったのに」

マスターから双眼鏡を借りて、ソアリンも工場の様子を確認して言った。

双眼鏡をソアリンに渡したマスターは塔の階段に向かっていた。

「おい、どこへいく」

「助けに行くしかないだろう」


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昌達はフロストのレーザー攻撃のせいで、簡単に近づけずに手をこまねいていた。

しばらくレーザーを避けていると、攻撃が止んだ。


「何っ、レーザーのエネルギーチャージが間に合わないだと」

フロスト内部の操縦席に設置されたモニターにはエラーメッセージが表示されていた。

ここにこにはおじさんも開発時、非常に手を焼いた事の一つである。

エネルギーのチャージに掛かる時間を消費するのに掛かる時間が下回っている為であるが、エラーメッセージにとしてはまだ表示されていないが、レーザーの発射口が継続的なレーザー発射による発熱も原因の一つだ。

これに関しては、空冷式と水冷式を組み合わせて多少は改善させたが、物理的な限界が来てしまった為にその状態の物が搭載されている。

その為、レーザーをこのまま使い続けると次は発熱のエラーメッセージがモニターに表示される。


「あのレーザーにはやっぱり、リキャストタイムが存在するんだ!」

このチャンスを逃すわけにはいかないと、昌は頭部を狙うべく高く飛び上がった。


「そうはさせるか!」

ケティングは武器をレーザーからアームに切り替え、アームの先端を高速回転させて飛んできた昌の腹部を突いた。

すぐさまGOSでシールドを出して受け流したが、直撃を避けただけで大きなダメージを受けてフロストの後方に飛ばされてしまった。

床に叩きつけられて、すぐに起き上がらない昌に決定的な一撃を与えるべく、方向転換しようとしてところ、フロストが自分のアームで作った床のヘコミにキャタピラがはまって動けなくなってしまった。

フロストの動きが止まった一瞬をネラは見逃さず、爆発魔法が込められた矢をレーザーの発射口に打ち込んだ。

発射口に刺さった矢の矢尻が爆発した。

矢尻が小さいため、爆発も小規模だったが、発射口を破壊するには十分だった。

発射口を破壊した爆発によって巻き起こった黒煙で目の前が見えなくなった所を、昌がGOSで出したナイフを2本投げて、両目を潰した。


「し、しまった」

内部モニターにはカメラが破壊されたエラーメッセージが表示され、正面のガラス映し出されていたカメラ映像は砂嵐になっていたが、さすがおじさんが作った物と言えばいいのか、カメラが破壊された時の対応策が用意されていた。

ケティングはモニターを操作し、正面ガラスの丁度裏に設置されたシャッターのような物を開けて直接目しで見れる状況になった。

このガラスはマジックミラーになっており、昌達からは中の様子は見えないが、中のケティングからは外の様子を見ることが出来る。

これでカメラを破壊した意味があまり無くなってしまった。

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