第9話 今日も元気だ。ご飯が美味い
『異世界Third Earth編 前編』
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タイトル:
歌手:チーム・ナルイハーW
作詞:檀上イルモッツア
作曲:シルフィード藤岡
僕らは一人じゃ何もできないけど
みんなといれば勇気が出る出る
信号無視だって 万引きだって
みんなといれば何でもやれる
D・A・K・E・D・O
勇気を出しても
犯罪行為は No! No! No!
僕らは正義の使徒故に
勇気を出すなら正義で示せ
正義こそが僕らの証
証こそが僕らの勇気
僕らが勇気は凄絶神器ナルイハーW(ワルツ)!
その名の下に勇気を示せ
僕らがナルイハーW(ワルツ)!
絶対勇気の力を示せ
僕らがナルイハーW(ワルツ)!
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「あああああああああああああああああああああああああああああああ」
コックピットの中でずっと流れ続けている電波ソングのせいで、俺は頭がやられそうだった。
こんな理解不能な歌詞の歌を聞き続けると、気が狂いそうになる!
誰が止めてくれ!
誰かスピーカーを壊してくれ!
くそっ、俺は操縦席から動けないんだ!
敵を倒さない限りベルトが外れない仕様の操縦席とか拷問だろうが!
ロボ軍団が敵だろうがなんだろうが、俺なら一人で倒せるはずなのに、どういうことだよ!
力が制限されているだけじゃん!
頼む!
誰か俺の代わりに壊してくれ!
スピーカーを! いや、この巨大ロボを!
というか、檀上イルモッツアって誰だよ!
シルフィード藤岡って何者だよ!
「責任者は出てこい! こんな歌、こんなコックピットを作った責任者だ! 修正してやる!」
* * *
最近、俺は東海林志織の事が正視できない。
志織の方も何故かしら避けるようになっていて、なんていうか志織の地雷か何かを踏んでしまったかのような避けられようだ。
志織は最初から俺の事を嫌っていたはずだから、それがさらに進行しただけなのかもしれないが。
昼休み。
例の特等席にいると、志織と鉢合わせしそうだからと、わざわざ行く場所を変更した。
もう一つの俺の特等席、そこは!
体育館裏!
幸いな事に日陰だし、何よりも昼休み中はあまり人が来ない。
壁に身体を預けるように座り、購買部で買って来たおにぎりをほおばる。
「今日も元気だ。ご飯が美味い」
本来ならば、教室で学友同士、わいわいと騒ぎながら昼飯を食べるべきなのだろう。
友達があまりいないと言えば聞こえが悪いが、あくまでも俺は孤高だ。
それ故に、一人で昼飯を食べているのだ。
決して友達がいないワケじゃない。
鮭のおにぎりを食べ終え、次のおかかに取りかかろうかとした時、
「俺とつきあってください!」
体育館の手前くらいから、男の滑舌の良い声が響いてきた。
なんだ?
そう思って、声がした方に視線を向けてみるも、死角になっていてよく見えなかった。
こういう現場はのぞき見るべきではないのだが、何せ俺は好奇心旺盛な召喚獣だ。
どこのどいつが、どんな人に告白しようとしているのか知らなくは。
「私には好きな人がいるから断る事にしているんだけど……。でも、みんなにチャンスをあげているのよね」
「チャンスですか。聞いていた通り、自転車レースですか?」
「うん。とある直線コースで私を一度でも抜く事ができたら、考えてもいいかも」
うお!?
告白されているのは、東海林志織か!?
男の方は、バスケ部の主将・
ヤバイ。
見ていたなんて知られちゃ、大変な事になる。
俺はそそくさとさっきまでいた位置に下がり、なるべく音を立てないように体育館裏から出て行こうとしたのだが……。
「……こんな時に……」
直後、俺は何者かの召還を受けた。
* * *
人っ子一人いない大通りに俺はいた。
白昼夢を見たと思わざるを得なかった。
テレビなどで見た事がある東京という街がそこに広がっているように思えたからだ。
「国会議事堂に……靖国通り……だと?」
ビルなどの姿形に見覚えがあるだけではなく、通りの名前さえ東京の『それ』そのものだったからだ。
だが、違和感がある。
否定のしようもない違和感だ。
「これは……違う!」
国会議事堂の裏にあるのは、見覚えが全くない戦国時代にでも建てられたかのような城があった。
国会議事堂よりも、後ろの城の方が本丸とさえ思える。
「もしかしなくても、パラレルワールドという奴か? そういった異世界もあるという事なのか?」
パラレルワールドの東京。
そんな異世界もあっていいような気がするのだが、人が誰一人いないのが気になる。
『江戸の諸君、降伏せよ、降伏せよ。即座に降伏したまえ。江戸の諸君、降伏せよ、降伏せよ。即座に降伏したまえ。江戸の諸君、降伏せよ、降伏せよ。即座に降伏したまえ』
どこからともなく、スピーカーからと思われる渋い男の声が流れ続ける。
「江戸? 東京じゃなくて?」
この世界がパラレルワールドだとするのならば、どんな世界線の日本なんだろう。
誰かと誰かがこの東京……じゃなくて江戸で戦っているというのか。
「君か! 召還に応えてくれたのは!」
今度はスピーカーからではない生の声が頭上から降ってきた。
「トォッ!」
「ハッ!?」
「ほいっ!」
「はいっ!」
空を見上げると、アクロバティックな格好をして飛び交う4つの影が次から次へとよぎっていった。
「俺のソウルネームは、Rセブンティーン!」
「わしのソウルネームは、のど飴太郎じゃ」
「私のソウルネームは、ストロベリー昌子!」
「あっしのソウルネームは、風穴太郎でありんす」
人影を追うように顔を動かしていくと、変なポーズを決めながら、俺の前に四人の降り立った。
「4人揃って我ら貴族戦隊ソウルジェネラーズ!!」
それが決め台詞だったのか、びしっと決まった瞬間、四人の背後で軽い爆音と共に白い煙が上がる。
「……はぁ?」
四人とも色つきのレザースーツを着ており、一体感があるような気がする。
外見だけは。
鍛えていないであろう、ひょろひょろの体躯が戦隊ものとしての違和感を醸し出す。
「君が召喚獣くんか! さあ、俺たちチーム・ナルイハーワルツと共に凄絶神器ナルイハーWに乗り、江戸の平和を守ろうじゃないか!」
全員、白い歯をきらりと輝かせながら、爽やかに微笑んだ。
この時、何かとてつもない嫌な予感がしたんだ。
だが、この四人に従わざるを得なくもあった。
今回のミッションがどんな内容なのか知るためにも。
そして、俺は何の説明もないまま、コックピットに放り込まれたのだった……。
異世界Third Earth編 前編終了
後編の第10話へと続く
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