暗黒騎士物語
根崎タケル
プロローグ
時刻は夜。空には星が瞬いている。
そんな夜空を光り輝く流星が飛び交う。
流星が向かうのは、星空に広がる黒い闇。
その黒い闇の中に漆黒の鎧を纏った者が浮かんでいる。
暗黒騎士。
そう呼ばれる者である。
暗黒騎士の体から黒い炎が吹き出している。
その黒い炎が広がり、闇を作っている。
それは星空に穴が開いたかのようであった。
流星はその暗い穴へと吸い込まれるように向かって行く。
正確には流星ではない。
流星に見えるのは、輝く翼を持つ天使達である。
天使は光の神々に仕える者だ。
魔王に仕える暗黒騎士とは敵対関係にある。
天使達は純白の鎧を纏い。剣を掲げて暗黒騎士に挑む。
空では正に光と闇の戦いが繰り広げられているのだ。
「馬鹿な! 相手はたった一騎だぞ! 我ら聖騎士が、全く歯が立たないだと!」
赤い炎の剣を持つ天使が叫ぶ。
たった一騎の暗黒騎士により、仲間の半数はすでに地面に落とされてしまった。
残りは数名しか残っていない。
天使達が暗黒騎士を見付けたのはつい先刻である。
地上にある。女神の神殿が暗黒騎士に襲われていると連絡を受けて、急いで駆け付けたのだ。
しかし、その時には暗黒騎士は神殿を後にしていた。
急いで追いかけて、戦闘になった。
いや、戦闘になったというのはおかしいだろう。
炎の剣を持つ天使は思い出す。
天使達は暗黒騎士に全く敵わず、叩き落とされただけだ。
その様子は五月蠅い虫を叩き落としているかのようだった。
あれは戦闘と呼べるものではなかった。
暗黒騎士からは戦う気が感じられない。相手にする気もないようだ。
「お願いだから、退いてはくれないか?」
暗黒騎士は頭を横に振って言う。
その声は小さく聞き逃してしまいそうだった。
「駄目だ! 貴様は女神様の神殿を襲った! 邪悪なる者を許すつもりはない! 皆の者! 奴を倒すぞ!」
目の前の暗黒騎士は美しき光の女神アルレーナの神殿を襲うという大罪を犯した。
許せる相手ではない。
「邪悪か……。そう、なら仕方がないか、相手をしよう」
暗黒騎士がそう言うとその右手から何かが姿を現す。
それは巨大な剣であった。
黒い剣身には赤い紋様が描かれ、その紋様が
暗黒騎士が剣を振るうと衝撃波が天使達を襲う。
たった一振りで天使達は動けなくなる。
「何と言う力だ……」
天使達が呟く。
先程までは暗黒騎士は剣を使っていなかった。
つまりは本気ではなかったのだ。
その事に天使達は驚きを隠せない。
「
天使達は翼を広げ暗黒騎士へと突撃する。
翼が光り輝き帯を作る。
その様子は流星である。
暗黒騎士の体からさらに黒い炎が吹き出す。
黒い炎が広がり、天の星輝きを塗りつぶしていく。
流星達は暗黒騎士が作る闇へと迫る。
そして、全ての流星が闇に飲み込まれた時だった。
闇が弾けるように四散する。
そして、中から吸い込まれた流星が全て弾き出され、地面へ落ちていく。
「化け物め……」
炎の剣を持つ天使は落ちながら天を見る。
星空の中、暗黒騎士は悠然と浮かんでいた。
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