霞む

MM

1日目 浮かぶ輪郭

君にイヤホンを借りた

降り注ぐ雪の中 赤点滅の信号機の下

誰もいない坂道に立ち止まってふたり


心地のいいリズム

接着する優しい右側

その二つだけが

この坂道にある


右側だけ通り抜けぬ風

君がくれたイヤホンが

全てを消す


ない

何もない

心を

私を潰すものなど


ここにあるのは

心を預けられる愛おしさだけ


流れ出すリズム ビート数は知らない

ドロドロに参った私を刻んで

子守唄のように近づいてくる


接着する右側が

そこに居ることを認めてくれる

君はそんな大きなことをしているつもりもないだろうが

私は

その

無言で差し出されたイヤホンに

今も

ただすがっている


いい歌でしょ

そう呟いた輪郭が

濡れたように煌めき、浮かぶ 夜

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