第114話 エピローグ②

 都内某所にある、超お嬢様校、聖清(せいせい)女子学院。

 全国の政界財界のお嬢様たちが通うこの学校は、名前だけは有名であるにも関わらず、ほとんどの人がその詳細を知らないという、ベールに包まれた女子高等学校である。

 その校門には筋骨隆々の警備員が二人常駐し、常に学校から見た外界へその目を光らせている。また、都内にもかかわらず広大な敷地を持ち、その敷地内には地方から来た生徒や外国からの留学生のための女子寮も設置されているため、24時間体制で厳重な警備がされていた。

 立地は高級住宅街の中にあり、その校門もまるで隠されているように、突然現れる。

 また、何本もの一方通行の道を通らないと辿り着かないようになっており、つまり、この聖清女子学院を目指す意思がなければ、この校門の前にも来れないのだ。

 今、この聖清女学院の生徒である瑞穂とマリオンは無言で校門の前で車を降り、緑の溢れた広い敷地の中を校舎に向かって歩いていた。

 元々、瑞穂はこの学校の生徒だったが、マリオンは瑞穂の勧めで四天寺家の口添えもあり、この学校に超例外の編入が許されたという経緯がある。

 校内の綺麗に整備された並木道を瑞穂は機嫌が悪そうに歩いていた。

 瑞穂は自分の携帯電話を確認する。ここ数日、何度も見せている行動だ。

 マリオンは瑞穂の横を無言で歩いている。


「マリオン、連絡は来た?」


「いえ……まだ来ていません」


 誰とは言わない。

 瑞穂の顔がさらに険しくなって、不機嫌モード全開だ。

 時折、挨拶してくる学友には笑顔で対応するが、すぐに顔が険しいものに戻る。

 ミレマーの任務から二週間が経った。

 機関からの報酬も数日前に入金されていることを確認済み……。


「なあにやってるのよ! あいつは!」


 ついに我慢しきれなくなった瑞穂は、大声を上げる。

 そんな大声に慣れていない近くにいたお嬢様たちは驚いて瑞穂の方を集中してしまう。

 マリオンは慌てて瑞穂を宥めた。


「まあまあ、瑞穂さん。まだ、携帯を買ってないんじゃないですか?」


「だから、それのことよ! あれほど、すぐに買って、すぐに連絡しろって言ったのに!」


 因みにこの主語を省かれた話題の当人である祐人は、トイレ掃除と草むしり、それと怒った一悟の嫌がらせのような、お助け係(拒否権なし)の猛威の前に、超多忙な毎日を過ごしていたのは、二人に知るよしもない。

 もちろん、その後にバイトも継続中だ。


「私たちのこと忘れたんでしょうか……」


「な!」


 マリオンは形の良い眉をハの字して、寂し気な表情をする。


「日本に帰って来て……祐人さんにとっては、今まで通りの日常になって……」


「そ、そんなことないわよ! マリオン。単純にグズグズしてるだけよ、あいつは!」


 と言いつつも、瑞穂も一瞬だけ慌てるような素振りを見せた。


「「はあー」」


 二人は同時に溜め息を吐く。

 二人の黒髪、金髪美少女が同時に肩を落とすというシュールな光景。

 そこで、マリオンがハッと顔を上げた。


「ま、まさか……ミレマーで祐人さんが言ってた幼馴染の女の子に迫られて……押しの弱い祐人さんは!」


「!」


 マリオンのその言葉で顔が青ざめる瑞穂。

 因みに祐人は、毎日のように、その幼馴染にトイレ掃除と草むしりを「心からの反省を込めながらするように!」と迫られていたが……。


「そそ、それは! そんなのは認めないわよ! 私のいないところで、そんなこと!」


「は……はい! そうですね、瑞穂さん! 私たちのいないところでは絶対に認めませんよね! その通りです」


「そうよ、マリオン! もし、このまま連絡がなかったら……」


 瑞穂の背中から闇オーラがユラユラと噴出し始める。


「な、なかったら……どうするんですか?」


 瑞穂の気迫にゴクリと息をのむマリオン。


「……ど、どうにかするわ!」


「……」


 ピンポローン!

 その時、二人の携帯にメールの着信が同時に入った。

 瑞穂とマリオンは携帯を見る前にお互いの目を合わせる。


「「……」」


 二人は互いに背を向けて、すぐに携帯を確認。


“携帯を買ったよ! 祐人”


「……何て書いてあった?」


「携帯を買ったよ……と」


 瑞穂はプルプル震えだす。


「書くことは……それだけなの!? あいつは! もっと色々あるでしょうが!」


「……本当です。これだけなのは……ちょっと、酷いです」


 怒る瑞穂にマリオンは同調するが……その目は少しだけ潤みが見えた。

 瑞穂とマリオンは諦めたように笑い、マリオンは細い指で軽く目を拭う。

 その後、二人の顔は目に見えて明るいものになったのが分かるものになり、足取りも軽く教室に向かうのだった。




 瑞穂とマリオンは同じクラスである。

 2人は、校舎2階にある教室に入ると普段は大人しいはずのクラスメイトたちがざわついていることにすぐに気付いた。

 この超お嬢様しかいないこの学校では、珍しい光景である。

 何かあったのか、と思いつつも瑞穂とマリオンは先程とは違い、落ち着いた感じで教室の最後尾にある自身の机に鞄を置いた。

 瑞穂は右隣の席のマリオンを見るが、マリオンも首を傾げている。

 そこに二人に気付いたクラスメイトが挨拶をしてきた。


「あ、マリオン様、瑞穂様、おはようございます」


「おはようございます」


「ええ、おはよう。どうかしたのかしら? 皆、騒がしい感じですけど……」


 瑞穂はまだ楽し気な空気を醸し出している教室に目をやりつつ、クラスメイトに聞いてみる。


「ええ、瑞穂さんはお休みされていらっしゃったからご存じなくて当然ですわね。実は噂なのですけれど、転校生が来るらしいのですわ。先週からその噂で持ち切りで、それで今日、その方が来られるらしいんですの」


「転校生? へえ、珍しいわね、この学校に」


「はい! ですから私も、どんな方なのか楽しみでワクワクしていますの。今、皆さまも、その話しで盛り上がってますわ」


 瑞穂とマリオンは、ようやく今のクラスの状況が理解できた。マリオンが編入してきた時もこんな感じだったのだ。

 その時、マリオンもクラスメイトから大変な歓待を受けて、慣れないお茶会や夕食などの数々の誘いに四苦八苦していたのを思い出す。


「しかも、その方は外国の方らしくて……ああ、本当に楽しみですわ」


 皆、良家のお嬢様でさほど娯楽のない生活のため、この程度のことが楽しくて仕方がないのだ。瑞穂も、家格としては同じようなものなのだが、能力者の家系ということから、ここにいるお嬢様たちよりは世間を知っているため、興味はあるが、そこまではしゃいだりはしない。


「外国のねえ」


 この学校には海外からの留学生も多いので、それ自体、それほどは珍しいことではない。

 瑞穂も興味はなくはないが、普段通り席に着いた。

 今はそんなことよりも、気になることがあるのだ。

 瑞穂は席に着くとすぐに携帯を取り出して、メールの欄を見つめ……そわそわしていた。しかも、無意識にマリオンには見えない角度で携帯をいじっている。

 それはマリオンも一緒で、心なしか二人ともにんまりした顔でメール欄を開けて、どうしたものかと思案する表情をしていた。

 何度も返信ボタンを押し、そしてキャンセルボタンを押す、ということを繰り返している瑞穂とマリオン。

 チャイムが鳴り、さすがにお嬢様たちも席について静かに担任を待つ。瑞穂とマリオンも結局、何もメールをうつことが出来ず、鞄にサイレントモードで携帯をしまった。

 チャイムから数秒すると担任が入ってきた。

 その若い女性の担任は、お淑やかで清潔感のある容貌をしており、もちろん、この聖清女子学院のOGでもある。


「起立……」


 これだけはどこの学校も変わらない挨拶を行い、担任が生徒たちを見渡した。


「ふふふ、今日は皆さんに新しいご学友を紹介いたします」


 途端に喜びざわめく教室内。

 ここにきて瑞穂とマリオンも興味を持って前を向いている。


「もう……噂が流れていたようね。いつも、どこから漏れてしまうのでしょう?」


 不思議そうに小首を傾げる担任。

 どこか、ふわふわしたオットリ感のある先生だ。


「じゃあ、こちらへどうぞ」


 担任がそう言うと、教室の前方の扉が開き、一人の華奢な少女が入ってきた。

 生徒たちはこの少女に注目して感嘆の声が上がる。

 その整った品のある風貌のアジア系の美少女を見ると、お嬢様たちは早く話しかけたいとそわそわしてしまっていた。


「き、綺麗~」

「ええ、とてもお上品ですわ」

「まあ、綺麗なお肌。羨ましいです」


 そのやや褐色の肌をした美少女は、担任の横に立ち優雅にスカートの裾を摘まみ、お辞儀をする。

 瑞穂とマリオンはというと……驚愕のあまり、石のように固まっている。

 何故なら……

 よく知っているのだ、この少女を。

 その固まっている瑞穂とマリオンと目が合った転校生は柔らかい、だが、隙のない微笑をした。

 この時、瑞穂とマリオンは何か嫌な予感がする。

 それは……何故か、乙女の勘が警鐘を鳴らしていたのだ。


「皆さま、初めまして。本日より聖清女学院に通うことになりました。ニイナ・エス・ヒュールと申します。ミレマーという国から参りました。仲良くしていただけると嬉しいです。以前から日本の文化に興味があって、日本に来るのが夢でもありました。是非、皆さまに色々とご教授頂けると嬉しいですわ」


 教室から歓声。


「はい、皆さん、ニイナさんと仲良くしてくださいね」


 お嬢様たちは待ってましたと、手を上げて、この新しくクラスメイトになる少女に質問が一斉にされる。

 ニイナはニッコリと笑い、学友の質問に丁寧に応じていく。


「数ある国の中で日本に来られたのには、何か理由があるのでしょうか?」


「はい、本当はアメリカの大学に留学する予定だったのですが、私はこれまで家庭教師に学ぶばかりで、このように学校に通ったことがありませんでした。それで、私は歳の近い友人が少なかったんです。それで私の父が、そのことにお心を砕き、安全で先進的な国であります日本の学校に通ったらどうか、と言ってくださったんです」


 瑞穂は顔を引き攣らせ、マリオンは固まっている。

 ニイナの話はもっともらしく聞こえるが、その話の中に日本の高校に通う、ということを決定する理由など、どこにもない。

 つまり、どこかに嘘が混じっているのではないか、と瑞穂とマリオンだけは感じてしまっていた。


「私は周りが大人ばかりの環境で育ったもので、常識的なことが分からず、皆さまにはご迷惑をおかけすることがあるかもしれませんが、色々と教えてくださるとうれしく存じます。私はこちらの寮にお世話になりますので、その辺のルールもご教授頂ければと存じます」


 ニイナが頭を下げると、教室からまたまた歓声。


「まあ! 何でも聞いてくださいね」

「わたくし、校内をご案内しますわ」

「じゃあ、わたくしは寮についてご案内を」


「はいはい、皆さん~、それはお休みの時間にしましょうね。じゃあ、ニイナさんの席ですけれど……四天寺さんの隣が空いていますね。ニイナさん、一番後ろのあちらに」


「はい、先生」


 ニイナは背筋を伸ばし、クラスメイトの視線を一身に浴びながら最後尾にいる瑞穂の隣に向かい、腰を下ろした。


「では、ホームルームを始めますね」


 顔を引き攣らせている瑞穂の隣に、ニイナは何食わぬ顔で座っている。


“ニ、ニイナさん……あなた”


“瑞穂さん、よろしくお願いしますね、これからはクラスメイトとして。大丈夫ですよ? 瑞穂さんとマリオンさんのことは、もちろん、誰にも話しませんから”


“そ、そんなことじゃなくて……何故、日本に? しかも……この学校って、私に学校のことを細かく聞いてきたのはこのためだったのね”


 ニイナはその瑞穂の質問に目を閉じて、微笑した。


“その辺のことは、また後ほど……”




 だが休み時間になると、ニイナの周りは人だかりができて、ゆっくり話すことが出来ず、結局、放課後になって瑞穂とマリオンは人気のない屋上に行き、ニイナと待ち合わせをすることになった。

 しばらくするとニイナは、ようやくクラスメイトのお誘い攻勢を抜け出せたのか、屋上に姿を現すと、瑞穂とマリオンに頭を下げる。


「瑞穂さん、マリオンさん、驚かせてごめんなさい」


 突然のニイナの謝罪に瑞穂とマリオンは顔を見合わせた。


「ニイナさん、本当に驚いたわよ。突然、転校してくるんだから……しかも、私たちと同じ学校に」


「はい、本当に驚きました」


「ごめんなさい……これは、挨拶した時の話は本当で、一回もこのような学校も通わずにいて、同世代の友人が少ない私のことを父は気にかけていたみたいなんです。それで大学に行く前に、同世代の多いハイスクールを経験するのも良いだろう、って言ってくれて」


「……そうだったのね」


「はい……それは私にとっても、とても魅力的な話しだったので、すぐに飛びついちゃいました。瑞穂さんからも話を聞いていて、正直、本当に羨ましいと思ってたから……」


 そのニイナの話を聞いて、瑞穂とマリオンは軽く頬を緩める。先程、一瞬でもニイナに警戒心を持ってしまった自分が恥ずかしい。


「ここに入学できたのは、父が日本の政府の方に相談してくれて……この学校を紹介されたんです。ですので、この学校に来たのは半分、偶然なんです。もちろん、この話が来た時、私はすぐに瑞穂さんたちが通う学校だと気づいて……」


 ニイナは瑞穂とマリオンを見つめた。


「本当に嬉しかった! また、瑞穂さんとマリオンさんに会えるって、しかも、クラスメイトとしてなんて」


 ニイナはニッコリ笑う。

 その笑顔に瑞穂とマリオンも反射的に笑顔になった。

 ニイナのミレマーでの境遇を知っている瑞穂たちは、ニイナの学校生活を心から応援しようと思う。


「こちらこそ……よろしくね! ニイナさん。私たちはもうすでに友達だけどね」


「ふふ、よろしくお願いしますね、ニイナさん。何か分からないことがあったらいつでも聞いてください」


「はい」


 校舎屋上に心地よい初夏の風が笑顔の三人を撫でた。

 三年しかない高校生活を楽しもう。

 よく考えれば、この場所に、能力者という事情を知っている同級生がいるのは、ありがたいことかもしれない、と瑞穂たちも思った。

 瑞穂とマリオンはミレマーでの大変な経験をしているニイナの今の笑顔がとても眩しく感じられる。


「実は……日本に来たのは、私が父を説得したんです。どうしても日本に行きたいって」


「「……は?」」


 ……不穏な空気になった。


「前から日本の文化に興味があったのは本当なんですが、父が高校に通うことを提案してきたとき……何故か日本しかあり得ないって思えたんです」


 ……雲行きが怪しい。


「ななな、何故、そう思ったの?」


「実は……分からないんです。でも、ここには……日本に私は行かなくちゃいけないって。そして……ここであると思うんです」


「ななな、何があるんです?」


「……えっと、わ、笑わないで下さいね」


 ニイナは恥ずかし気に顔を朱に染める。

 瑞穂とマリオンは顔を青くした。


「男性との出会いが……です」


 頬に手をやり恥ずかしそうにしているニイナは、瑞穂とマリオンに笑っていないか目をやると……そこには、

 頭を抱える瑞穂と……

 両膝を折ったマリオンが……


「瑞穂さん!? マリオンさん!? ど、どうかしました? やっぱり、おかしかったですか?」


 あたふたするニイナの声など二人には届いていない。

 そこに三人のいる屋上の扉が開いた。


「あ、ニイナさん! こんなところにいらっしゃったのですね? これから、寮をご案内いたしますけど、いかがです?」


 ニイナはクラスメイトとの約束を思い出し、嬉しそうに返事をする。


「ありがとうございます! 是非! あ、じゃあ、瑞穂さん、マリオンさん、また!」


 ニイナはクラスメイトと共にいなくなると、瑞穂とマリオンだけがこの屋上に取り残された。


「マママ、マリオン……」


「は、はい、瑞穂さん……」


 二人の間に初夏の強い風が吹き抜けていく。


「どどど、どうする?」


「取りあえず、することは決まっています」


「そうね……決まってるわね!」


「はい!」


 瑞穂とマリオンは……何故か影で見えない顔をしたまま、この場を後にしたのだった……。




 今、祐人は吉林高校の校庭の端で、草むしりを一生懸命に取り組んでいた。

 もう、7月である。正直、暑い。寄ってくる虫も煩わしい。

 もう帰りたいのだが、後ろにある大きなかごをむしった草で埋めないと帰れない。

 祐人の監視役に抜擢されたのは同じクラスの水戸静香だったが、実質、その権限は静香と同じ剣道部の茉莉に移行しているため、一切のズルは通じない状況だった。


「何で……いつも僕ばっかり、こんな目に……。でも、ずる休みしたのが悪いのか」


 一際大きい草を引き抜いた祐人は、タオルで汗を拭いた。

 一人、愚痴をこぼしつつも、実は、祐人は機嫌が良かった。

 というのも、祐人は昨日、ようやく携帯電話を購入したのだ。

 祐人が生まれて初めて持った携帯電話。

 これが嬉しくてたまらない祐人は、昨夜は遅くまで携帯の機能を確認していた。

 その時、連絡先を知っているは瑞穂とマリオン、そして、忘れていたが世界能力者機関日本支部支部長の秘書をしている垣楯志摩のものだったので、すぐに携帯の電話帳に登録をした。

 それだけで嬉しい。

 何故かそれだけで、大人になった気分だ。

 それで今朝、ドキドキしながら瑞穂とマリオンに人生初のメールもしてみた。

 祐人は携帯を取り出すと、携帯画面を確認する。

 今日、何度もしている行動だ。

 連絡があれば、携帯が通知してくれるのは分かっているのだが、こうやって確認することをやめられない。


「何も返信がないけど、瑞穂さんたちに届いてるのかな? というか、用事がなければ使わないものなのかもな~」


 そうつぶやくと同時に携帯がブーンと震えた。


「あ!」


 祐人はドキッとした。初めてのメールの着信。

 それだけで……ジーンと感動を噛みしめる祐人。

 早速、メールを確認する。

 すると、2通も来ているではないか。


「あ! 瑞穂さんとマリオンさんだ! いや~、初のメール受信! 嬉しいなあ~」


 鼻歌を歌いながら、メール欄を開く祐人。


「うん? 2人とも無題なんだ~、そんなもんなのかな? 僕はまだ慣れてないからなぁ」


 祐人はまず、瑞穂とマリオンのメールを順番に開いた。


『説教よ!! 覚悟なさい!』


『大説教です!! 連絡ください!』


 祐人は笑顔のまま、額から汗を流し……そっとスマートフォンの画面を切った。

 校庭の運動場から土埃まみれの暑苦しい風が祐人に吹きあたる。


「えっと…………」


 祐人は顔を上げて、突き抜けるよう青空と白い雲を眺めた。

 そして、息を吸い込むと……




「何故にーーーーーーーー!?!?」




 その祐人の心の叫びは、吉林高校の運動部員たちの喧騒にかき消されたのだった……。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました。これで2章完結となります。


ご評価、ご感想を下さり、本当に感謝です。力になりました。

作者の未熟なところも散見されたと思います。にもかかわらず、辛抱強くお読みいただいた皆様には、本当に頭がさがります。

また、ここまででも結構ですのでご感想、評価を頂けたら嬉しいです。今後の励みに致します。


また「魔界帰り」は皆様のおかげでシリーズ化しました!✨

書籍版はWEB版にはない描写や新シーンをたっぷり追加しています。私自身、とても満足のいく内容となっています。是非、応援いただけると嬉しいです😊

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