コラボ小説という存在。
「昔から那知にはそういう所があるよね」
姉は溜息をつき、呆れたように言った。
一体どういうことだ。どうして姉がここにいる。姉も佐倉井さんとコラボ小説の件について話し合っているはずじゃ…
「やぁ聡美、加賀先生もお元気そうで何よりだ」
苦手なショートヘアババアが来てしまった。
「……どうも」
もし佐倉井さんに他人の心を読む能力があったら殺されるな。
ドアを開け、喫茶店に侵入してきたのは姉の担当編集者である佐倉井よしこさんだ。
元気なのは元気なのだが、気になっているのはそこではない。
「どうして姉さんと佐倉井さんがここに?」
姉と佐倉井さんが話し合ってるのを待つ、とは何だったのか。
「そんなことも分からないの?」
また姉が呆れる。分かっていたらこんなこと聞かない。
「書くの。コラボ小説を」
「は?」
姉は偶に訳の分からない事を言う。
「じゃあ始めちゃおっか」
片瀬さんは立ち上がり言った。
「コラボ小説の話し合い!」
どうやら着いていけていないのは俺だけらしい。
「すみませんミックスジュース一つ下さい」
冷静になる為に喉を潤す。ちなみにアイスコーヒーは飲み干した。
「じゃあ私もミックスジュースで」
こういう時、必ずと言っていい程姉は便乗してくる。
俺は誰かと何かが被るのが嫌いだ。何というか独占欲みたいな。
「それで二人にはどんな小説を書いてもらうんだ?」
まず口を開いたのは佐倉井さんだった。
まだ俺は書くなんて言ってないんだが。
「お互いのキャラの絡みとか欲しいよね~」
「ダメです」
片瀬さんの提案は却下だ。
「似たようなキャラ同士の会話なんて需要ないでしょ」
コラボである必要がない。それに普通に姉の小説を読んだほうが早い。
「と、なると完全新作か。この時期の咲には厳しくないか?」
その通りだ。アニメ化云々で姉は忙しい。結局姉にメリットはない。
「いいじゃん新作。やろうよ那知」
また姉は訳の分からない事を言って俺を困らせる。
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