米田参考人に対する意見聴取‐四

(乾委員)

 参考人は任期満了を待たずに本年一月末に退官されました。はっきり申し上げますと、参考人のいう武器の使用が法を逸脱した規模だったことについて責任を取られた、若しくは取らされたといって良いかもしれません。そのような事情による退官なのではないかと国民の多くが疑念を抱いています。任期満了前での退官理由をはっきり説明してください。


(米田参考人)

 ですので縷々説明いたしましたように、私としては武器の使用について、法を逸脱したような事実はなく、寧ろ「摩耗」の威力を完全に見誤り、最終的にはこれを撃破いたしましたが、人員装備を多数喪失した挙げ句に本来任務を全うできなかった責任を取ったつもりであり、委員のご質問は邪推の類いであって到底受け容れることはできません。


(乾委員)

 それでは参考人は、六ヶ所村の再処理施設の襲撃を防ぎきれなかったことについて責任を取られたわけですね。


(米田参考人)

 それもありますし、結果的には六ヶ所村での撃破に成功いたしましたが、同時に多数の隊員や装備を喪失いたしました。その責任を感じている方が退官理由としては大きいです。人員装備を多数喪失した挙げ句に本来任務を全うできなかったことについて責任を痛感いたしましたので退官を決意したわけです。

 後任は大変な思いをされてこれから自衛隊そのものを再建していくことになりますが、本件における対応を一つの教訓にして、類似事案に対する対処能力を向上させていってもらいたいと考えています。


(乾委員)

 わかりました。それでは質問を変えます。

 参考人は南相馬市及び六ヶ所村近郊において直接的に部隊を指揮する立場にはなかったと思いますが、その後現地部隊が作成し、参考人のもとに提出された戦闘詳報については、これを決裁する立場にあったと思います。まずは南相馬における自衛隊の活動報告について、説明願います。


(米田参考人)

 南相馬及び六ヶ所村における「摩耗」との戦闘記録につきましては、当時の私の任命権者である廣瀬前防衛大臣、現内閣総理大臣でありますが、廣瀬大臣からの許可を得ておりますのでご説明申し上げます。

 先ずは南相馬における戦闘経過について申し上げます。二〇二X年十二月二十九日午前八時、命令による治安出動下令に先立ちまして、非常招集された福島県議会の全会一致による議決を受けた、要請による治安出動を検討いたしました結果、これは当然我が国で初めての治安出動となる案件でありましたから、自衛隊法に則り適切に事案対処する必要を認めたわけであります。

 具体的に申し上げますと、自衛隊法には治安出動に際しての事前調査という項目がございますが、要請による治安出動に際しては事前調査に関して明文の規定がございませんでしたことから、私といたしましては、事前調査に明文の規定が存在する、命令による治安出動を逆に大臣に提案させていただいた次第であります。

 といいますのも、冒頭申し上げたとおり私どもは所謂そういった戦闘のプロ集団なわけでありまして、事前に報告を受けておりました「摩耗」の形状に関して、これを全く他国の侵攻兵器として把握している状況にはございませんでした。また史上初の治安出動ということもありまして、これは明文の規定にしっかり従って運用しなければ大変な国政上の問題となるという危機感がございました。出動に際しての事前調査というものは、命令による治安出動には明文されておりますが、要請による治安出動に関してははっきりそれをおこない得るかどうかの規定がなかったことが、命令による治安出動の逆提案という形につながったわけであります。

 幸い廣瀬大臣にはご理解いただきまして、航空総隊司令官に対して、百里基地からのRF4EJによる「摩耗」及び「摩耗」による襲撃地域の偵察行動を命令したわけであります。地上からの観測も並行しておこない、比較的早い段階で「摩耗」が体内に使用済み核燃料を収納したという情報を入手することができました。

 RF4EJによる偵察行動の結果、福島第一原発廃炉作業区に大規模な破壊の痕跡を認めましたので、航空自衛隊第七航空団偵察航空隊所属のT4に集塵ポッドを装着し、廃炉作業区上空の大気を採取し解析した結果、相当量の放射性物質が採取され、付近一帯の放射能汚染が認められたことから、これは隊員に被曝の危険があるなという強い懸念を抱いたわけであります。

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