書籍1~2巻部分
プロローグ
綺麗なものと可愛いものが大好きだった。家庭科の授業も大好きだ。料理も裁縫もお掃除も、洗濯だって彼は大好きなのである。だがしかし、ここで間違えないで貰いたいのは、彼はあくまで
幼少時、幼稚園時代ぐらいまでは、彼の人生は平和だった。男の子達はチャンバラごっこに忙しく、女の子のおままごとになんて付き合ってくれない。その中で、嫌な顔一つせずに、一緒に遊んでくれる悠利は実は地味にモテモテだった。「悠利ちゃんはパパね!」と笑顔で誘われて、おままごとを楽しんだ日々は平和で、幸せだった。
だがしかし、小学校も高学年にさしかかると、そうはいかない。
女子は女子らしく、男子は男子らしく。誰が決めたか知らないが、世間一般の常識はそうなるわけで、子供達もそれに従うのだ。男子でありながら女子のようなものが好きと公言する悠利は、異物とされた。男子には「女みたいで気色悪い」と言われ、女子には「男の子なのに、変」と存在を真っ向否定された。それでも自分の性質は変えることなどできず、悠利はぼっち生活を堪能していた。
別に、ぼっちでも良かったのである。
可愛いものや綺麗なものを眺めているだけで、幸せだった。母親の家事を手伝っている時間は、とてもとても楽しかった。家庭科の授業は彼にとって大好きな時間で、頑張れば先生に褒められた。なお、悠利はどちらかと言うと内向的で自己評価は低いが、勉強も運動も標準以上にこなせるスペックは持ち合わせていた。内向的というのも、単に趣味が
ただし、可愛いものや綺麗なものが好きなくせに、悠利は自分には無頓着だった。多分、磨いたらそれなりに見栄えがするだろう素材だが、無頓着。髪は無造作に伸ばしているので、男にしては長めの短髪。前髪で目元が殆ど隠れてしまっている。もっとも、見えたとしても洒落っ気の一つも無い黒縁の丸眼鏡があるだけだが。
そんなわけなので、
さて、そんな
「……ここって、どこ………?」
学校から帰る途中で唐突に光に包まれたと思ったら、見知らぬ場所(石造りのダンジョンっぽい)に突っ立っているのであった。
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