四本目 恋は盲目、人は沈黙

 今日は朝から生憎の雨模様。街全体が暗く沈んで見えるのは、太陽の顔が見えないからだけではない気がする。

 そしてここにも一人、暗く沈んだ顔の人が。本日のご依頼である。

「それで、本日はどういったご依頼で」

 挨拶もそこそこに、本題に入る。ちょうどみんな出払っていたので、我らが糸玉異能力探偵事務所のエース、有田川由良が応対している。美浜は奥でゲームしてる。

「えぇ、実は、その、ストーカー、されてまして」

 ちなみにこの方、男性である。だが先入観でものを見るのは良くない。女性はガラス細工で、男は欲望みたいな。

「それならば、警察にどうぞ」

 警察に言えば、警告をしてくれるだけでなく、防犯ブザーの貸出や被害防止の教示などの支援が受けられるぞ(宣伝)。やったねたえ

「ま、待ってください。その犯人がキード持ちなんですよ」

 ………ただし、ヴィーナスへの対策は未だ整っておらず、外部の民間団体へ委託することも多い。

「詳しく聞きましょう」


「三年前にも同じ人の、干鉢かんはち なみだにストーカーをされて、その時はキードを購入して返り討ちにしました」

「え、ひとりで?!」

「はい。しかし出所した干鉢は、懲りずにまたストーカーをしてきまして。しかも今回は、向こうもキードを購入してきて。だから警察もあてにできなくて」

「へー、その能力は分かってるんですか?あと、あなたの能力は?」

「はい、それが分かってないんです。三日前に来たときに、また返り討ちにしてやろうと追いかけたんです。そしたら角を曲がったところで、なぜか見失ってしまって。その道は真っ直ぐ一本道で、横道もないので、見失うはずかないんですけど。だから、『速』とか『消』じゃないですかね」

「なるほど、ありそうですね」

「それと、僕のキードは『扉』です。空から扉が降ってきます」

「降ってくる時、天井があったりしたらどうなるんです?」

「すり抜けます。あと、落下地点を決めることができます。人を下敷きにしたりとかできますよ。扉は普通のドアだったり、なぜか動く自動ドアだったり、回転扉なんかも、選んで落とせます」

「ほほう。なかなか面白い能力ですね」

「いや、そんなことより。今回の依頼内容は、干鉢を一緒に捕まえて貰いたいのです。もちろん僕も、協力は惜しみません。この依頼、受けていただけるんでしょうか」

「………はい、お受けいたしましょう。誠心誠意、頑張らせていただきますよ!」

 所長は事後報告でも許してくれるでしょう。

「では早速、準備に取り掛かりましょう。ちょうど、朝から続いてた雨もやんだようです」

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