第32話 殺し屋と不死鳥と新学期 その2

 体育館で校長先生の長々しい話を聞いた後(振りをして思いっきり寝ていた。校歌歌い終わって座ってからの記憶がない)一年間お世話になるであろう3年2組の教室へ向かった。

 友達付き合いの多い訳でもない俺だが、クラスの三分の一ぐらいは顔の知っている人だった。

 特にこいつらに関しては。

「良かったな、俺と同じクラスになれて」

「なんで、そんなに高飛車なんだ?」

 肩を叩かれて、振り向くとそこには爽やかに髪をなびかせたいけ好かない顔があった。

「だって嬉しいだろ?体育祭とかお前と味方同士で居られるんだから」

「別に運動はそこまで出来るわけじゃないのに?」

 俺はスポーツで期待されるタイプではない。

 むしろ、どうやって炎天下のグラウンドから逃げ出してエアコンの効いた教室でサボるのかを考えてる人間だ。

 ちなみに、体力については本当に一般人と変わらない。

 死神と言われている殺し屋だけれども、戦闘に優れているわけではないからだ。

 殺し屋が磨くのは暗殺術であって、軍人のような強靭な身体ではない。

 なので、足の速さなんて鍛えてないし(足音を消したり狭い足場を進むための訓練鳴らしたことがあるが)長時間太陽の日差しから耐えることなんて御免だ。

「別に勝つことだけに意味があるわけじゃないでしょ」

「確かにそうだけどさ」

「俺はみんなが頑張っているのを応援したり、写真撮るのは楽しいよ」

「それは陽キャの発想だ」

「そうやって、線引きするのは良くないって」

 と、座っていた机から涼輝は急にすっと降りて自分の席に戻る。

 その直後手を叩く音が二回聞こえた。

 音が聞こえた方向を向くとやはり見知った顔があった。

「はい!そろそろ静かにするように、間も無く新しい担任の先生が到着します」

 烏の羽根のような色の髪を後ろで結んだスラックスの彼女は教室中の話し声を完全に止めた。

 さすが風紀委員だ。

 あ、学年が変わったら委員会とかも変わるのか。

 まあでも、園田さんが他のところに行くことは無いと思うけど。

 なんて考えていったら教壇の彼女に目があった。

 目を丸くした園田さんはそっぽを向いて急ぎ足で席に着いた。

 どうしたんだろう。

 そんなに嫌がらなくてもいいのに。

 時計を見ると確かにロングホームルームの時間になる。

 ところで1つ席が空いているんだよな。

 って、未来がいない!

 あいつどこにいったんだ!

 と、ガラガラと音が聞こえて扉を見ると未来が早足で席に着いた。

「すまない、少し遅れてしまったかもしれないね」

 もう一つの人影が扉の向こうから出てきた。

「ちょっと迷子の生徒を見つけたもので送り届けようとしたが、まさか自分のクラスの子とはびっくりだよ」

 どうせそんなことだろうと思ったよ

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