第11話 殺し屋と殺人鬼の公園 その2

 アメリカの殺人鬼、ガウリル ウォールはその強靭な肩を使って青龍刀を右へ左へ振り回す。

 先程とは違い、死角がない状態で近づいてくる。

 俺は、拳銃を構えながら神経を尖らせた。

「あレ?どうしたんですカ、少しぐらい動いてくださいヨ!」

 急に刀を伸ばして振りかざしたが、俺は何も無かったかのように避ける。

 たがガウリルは避けた俺の方に刀の軌道を変えてきた。

 今度はすんでのところでステップで躱す。

 次々と剣撃が飛んでくる。しかも一つ一つが致命傷になるであろう威力を伴って。

 だが、それでも脅威ではない。

 俺は次々と躱して、飄々とした表情をみせる。

 ガウリルは少し苛立ちを含んだ笑みででこっちを見ている。


「分かった、そこまで言うなら見せてやるよ」

 俺はそう言って、改めて左手で構え直した。

 狙いを定め引き金を引く。弾が発射されたと同時に、次の的を目掛けて引く。

 弾丸は6発、それぞれガウリルの四肢と頭に向かう。

 彼は容易く刀を使って全弾を弾いた。

 青龍刀なのに強度は高く、刃こぼれは見当たらないだろう。

 まあ、俺には見えない位置なのだが。

「! どこ行きやがっタ!」

「ここだ」

 俺はそう呟いた。

 ガウリルは即座に振り向いた。

 が、もう遅い。

 右手のナイフで胸部を切り裂く。

 身体がどれだけ堅いだろうが、このナイフは何だろうと切り裂く。

 この為に俺は毎日ナイフを磨いているんだ。

「クソ!ここまでなのカ」

 彼は膝から崩れ落ちた。

 だが、その殺意を持った目はこっちを向いたまんまだ。

 俺は銃を右手に持ち替えて構えた。

 すると彼の目が少し緩んだような気がした。

「さあ殺セ。

 お前の噂を俺は研究所にいる間、ずっと聞いていたんダ。

 そんなお前に殺されるなんてナ」

 俺の人生も案外悪くはなかったんダ と呟いて彼は目を閉じた。

「心得た」

 引き金を1発引いた。


 それにしても、俺の噂?

 何で研究所の人がそんな事を話しているんだ?

 俺は只の殺し屋であり、彼らとは一切関係のないはずである。

 まあ、今はいい。

 それよりも、

「さあ、彼女を解放しろ」

 俺はずっとこの戦闘を傍観していた2人に呼びかけた。

 いや、見ているのは1人か。

 細身の男はこっちへ近づき、メガネをクイッと上げながらそう言った。

「分かっているさ、データは充分に取れた。

 未来ミクさんはそこのベンチで寝ているから連れて行くがいい」

 言いたいことはいったとでも思っているかの表情で彼は意外とあっさり去っていった。

 やっぱり彼らの考えていることがわからない。

 それでも、

 依頼人を護れた。

 未来を護ることが出来た。

 今はそれでいいんだ。

 俺は静かに息をしながら寝ている未来を見ながら、そんなことを思っていた。

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