春雷

天気予報は、むこう一週間は晴れの天気だと告げていた。

夜半に轟く雷鳴に、浅い眠りが破られる。

雨の音はしないのに雷鳴だけが響き、稲光いなびかりが時折闇を切り裂く。

こんな予報は出てなかったと、微かな苛立ちと共に寝返った。


躰の奥底に共鳴する

唸るような雷鳴が、ひっきりなしに轟くのは

冬の日本海の怒濤を思い出させ

心に木枯らしが舞い戻ったような鬱々とした気分が押し寄せた。


昼間はまるで初夏のような異常気象の高温だったから、積乱雲が生まれたのだろう。

夏の夕立のように、黒々と聳え立ち

けれど私の躰を満たすのは、冬の海の濤声と吹き荒ぶ風だ。


春の夜に、冬と夏が真っ向からぶつかり合う。

現実には有り得ない闘争を妄想するうちに、雨が降りだした。


あぁ、夏が勝ったのか…

荒れ狂う冬の日本海の怒濤は、強まる雨音に追いやられ

上昇する湿度に蒸し暑さを覚え、私は布団から足を出す。

夜気に晒される爪先は渓谷の冷たさを思い出し、心地好い眠気を運ぶ。


不意に止む、雷鳴。

春の夜の他愛ない妄想は、再び浅い眠りに沈む。



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