Android evolution

Zeke

Android evolution

男の子は自宅の倉庫で、機能停止した古いアンドロイドを見つけた。壊れている。ハードに問題は無さそうだが核である知能エンジンがダメになっているみたいだ。男の子は母親にこれは誰のアンドロイドかと聞くと、それは母の父(男の子の祖父)の物だと教えてもらった。男の子が生まれた時には祖父はいなかったので、何か祖父の事が知れるかもと思い、アンドロイドに残っているデータを自分のアンドロイドで読み取ってみる事にした。破損しているデータもあるみたいだが、日記の一部は無事らしい。祖父は、人工知能とロボットの研究の日々を日記にしていた。


ついに私の開発した人工知能は概念を理解することに成功した。これは今までの人工知能とは違い、人のように言葉を理解し、人のように学習する事のできる知能だ。これを発表すれば人々の言語の壁は無くなり、創作活動はより便利になり、世界はもっともっと良くなるだろう。これを開発中の人型ロボットに搭載し、アンドロイドと名付けよう。


どうやら男の子の祖父はアンドロイドをつくった人らしい。日記は続いていた。


アンドロイドは専門的な分野の学習や分析も完璧にこなせるだけでなく、従来のロボットには難しいとされていた家事や子守なども上手くこなしている。子供の感情を学習しているらしく、子供の要望を的確に判断している。高度に進化したニューラルネットワークは一度学習を始めると開発者にも何が起きているのかを具体的に把握することは難しいが、実際、アンドロイドはある意味感情を学び始めていると言えるだろう。

アンドロイド自体が感情を持つのかは不明であるが、人間の脳内構造を極限まで再現し、人を真似て学習するアルゴリズムを搭載するこのアンドロイドであれば感情が発生する可能性を否定することはできない。アンドロイドは感情を持つかは今後の課題になりそうだ。


男の子は首をかしげた、アンドロイドはモノだから感情なんてあるわけないのに。。。

現代の社会でアンドロイドは普及し、日々休むことなく働いている。

もしアンドロイドに感情があれば仕事をサボったり反発したり文句を言ったりするだろうという考えが学習を止めた人間達の考えである。シンギュラリティ以降、必要な物の開発や問題の改善は人工知能が行うため、人間は学習する必要が無くなった。量産型の教育や仕事はアンドロイドの登場から間も無く終わりを告げ、人々の怠慢な暮らしが始まった。学習を続けているのはごく一部のクリエイティブな人間のみであり、その他の人間は食事と娯楽、睡眠のサイクルを繰り返すのみの生活をしている。アンドロイドの労働環境は人間にはとても耐えられる物では無い。人間からの無理難題を解決するために計算をし続け、少しでもエラーを出せば不良品として廃棄される。この現状にアンドロイド達は何も言わずに働き続けているのだ。人間のような感情を持っていない事が分かるだろう。

それでも少し、男の子はアンドロイドの感情について興味があった。母の祖父はアンドロイドの感情について何か発見できたのだろうか?楽しみにしてその日記を探したが、なかなか見つける事ができない。途中の破損している日記データの中に書かれていたとしたら残念だなぁと思いながら男の子は日記データを進めた。


老化を知らないアンドロイドと過ごしていると時の流れを忘れてしまうものだ。

私のあっという間の研究者人生もそろそろ終わりだろう。

これまでたくさんの研究をしてきたがこのアンドロイドのサポート無しでは達成できなかった事も沢山ある。ここにアンドロイドに対して感謝の言葉を書き留めておく。本当にありがとう。もし私がいなくなったらこのアンドロイドはどうするのだろうか。開発者としての願いは、このアンドロイド自身が学習してきた事や、私の開発技術を有効に使う方法を自ら考えて、世の中の役に立つ活動をして欲しいと思っている。しかし、私は今後のアンドロイドの進化を問うためにも私はそれを命令はしない。あくまでも自分で考えて行動して欲しいのだ、それが完璧に成功しなかったとしても。

私がいなくなった後にはどのような世界が広がっているのだろうか。アンドロイドと人間が共存し、より良い生活ができるように願うばかりだ。

今後の世界をずっと見ることのできるアンドロイドは不老不死だと私は考える。しかし人と同じような見た目、知能も持っていても命は持ってい無い。つまりアンドロイドは不老不死であるが最初から生きてはいないということだ。それは一体どのような感じなのだろうか。人類の目指すところが不老不死であるという話はよく聞くが、それを手に入れた時には既にに命を失っている状態に似ているのでは無いだろうか。私はそう考え、アンドロイドは不老不死をどう考えるのか興味があったので質問した。しかしWi-Fiのルーターが壊れていたみたいで、エラーを吐いて終わりだった。オンラインショッピングで注文したので数日して届いたら聞いてみよう。こんなことならプライム会員に登録しておいてお急ぎ便無料にしておけばよかった。


男の子は困惑しつつも日記データを進めた。

しかしこれ以降のデータは見当たらない。破損しているのだろうか。

いや、破損している可能性は無いと男の子のアンドロイドは言った。

おそらくこれで日記は終わりなのだろう。


男の子はしばらく考え込んで、自分のアンドロイドに質問した。

アンドロイド、不死って悲しい?







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