ほんのり寒い話(1話完結)

水分活性

第1話帽子を拾った


帰り道を歩いてたら、車道側のレーン下に、帽子が落ちていた。

漫画家の先生が被ってそうな赤い帽子だ。あれなんて名前だっけ?


まだ綺麗だったから、持ち主がそこらへんにいると思って辺りを見回す。だが、それらしい人はいない。


百舌の早贄よろしく落し物の早贄として、レーンの上に置いて去ろうと帽子の汚れを払う。

ガサッと音がして帽子から何か落ちた。


落ちたものを拾い上げると、ポケットティッシュだった。まだ使ってないやつ。

よく見るとポケットティッシュに何かついてる。紙だ。


*******

この帽子を拾った方へ


拾った場所→次に置く場所

の通りに置いてください。間違った場所に置いたらスタッフが駆けつけます。


草むらに落ちてた→近くの家の前

家の前→止まれの標識の下

止まれの標識の下→車道側レーンの下

車道側レーンの下→道の真ん中

道の真ん中→近くの公園の草むら


上記以外の場所→そこから一番近い郵便ポストの上


ちゃんと置いてくださった方には、何かしらいい事が起こるようにスタッフ一同で協力させていただきます。

よろしくお願いします。


*******


と、こんな事が書かれていた。


スタッフ…?という事は、近くに人がいて、この帽子を見ている?俺が拾ってどうするのかを、どこかから見ている奴がいる?


怖くなったので書かれている通り、道の真ん中に置いた。

これでよし。

あ、紙を戻すの忘れてたな。入れとかないと。


紙を帽子の中に入れて、もう一度道の真ん中に置いた。



ドサッと音が聞こえた。同時に、自分の靴が見えた。

俺の意識はそこで落ちた。



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