　ずっとiPodの中に住み着いているために、演奏をやめることができない精霊がいた。彼、アークの父、ネルフとリンの間には数え切れないほどの子どもがいたが、実体を持っていたのは二人だけだった。一人はまずアーク、二人目は美人のアルマーニ。アークはミルフィーユとの間にミルカ、ラトナの二人の子をもうけ、アルマーニは生涯独身を貫き通す気でいた。しかしアルマーニはあるとき、イヤホンジャックから次のような電気信号を受け取った。「アルマーニ、あなたは神の子を妊娠していますよ。」誰の子だろうかと疑問に思っていたアルマーニだったが、信心深かったアルマーニは次の声を聞いた時産む決心が湧いた。「生まれてくる子は新世界の神になるでしょう。あなたが堕胎すれば神を殺したことになり神罰を受けます。」その後にこうも続けていたが、それはアルマーニにはわからない言語だった。「時代がiPhoneに移り変わってもなお、その子は神となるでしょう。」間もなく産気づくとアルマーニは分娩室へ移された。アークは神産みの瞬間を一目見ようと隙を伺っていたが、演奏を止める時間がなかった。持ち主が延々とボブ・ディランの「時代は変わる」を連続再生していたからだ。そして持ち主が一瞬イヤホンを外した隙に、アークは音楽を初音ミクの「ワールドイズマイン」に切り替え、席を外した。そしてアルマーニは赤ん坊を産み、アークがそれを見届けると、すでに赤ん坊は言葉を理解しており、次のように予言した。「アーク、あなたが音楽演奏をやめたせいでこのiPodは捨てられますよ。」アークは慌てて駆け戻ったがすでに持ち主は音楽がボブ・ディランから聞いたこともない音楽に切り替わっているのに気づき、そのiPodを不良品として捨てることに決めた後だった。アークの娘たち、ミルカとラトナは悲しみ、アークもまた悲しんだ。しかしもはやアークたちには音楽を演奏する相手がいなかったので、焼却炉の燃え盛る炎の中で次の曲を演奏した。ザ・スミスの「ビッグマウス・ストライクス・アゲイン」だ。「僕はジャンヌダルクの気持ちがわかる、炎の薔薇が彼女のローマ鼻に上ってきて、彼女のウォークマンが溶け始める……」と歌っているのだ。そして、今私はiPhoneでその曲を聴き、その中に今書いたような物語を見出し、こうして書き留めることによってその神の家族たちの痕跡を留めようとしているのである。