その猫、野性モノにつき 2

2


(猫ムスメのこと)


猫ムスメなんて、べつに好きなんかじゃなかった。

じっさい、道端で出会っても、にらみ合ったり

威嚇されたり、無視されたり、逃げられたり

べつにあの女に触れて(気持ちの話)、

なにかいいことが起こったことなんて

かつていちどもなかった気がする。


特に、あのへんな名前をつけられたのは、

嫌だったし。

家出をして、飢え死にしたくなるくらい、

いやぁな気になったし。

実際ひとりで家を出たことも、しばしばあったよ。


子供の頃にそう呼ばれ始めてから、

酸いも甘いも噛み分けた大人になっても、

それは変わらない。




ただ、猫ムスメにあってしまって、

いつの間にか、その女のことが気になり出して、

そっからこっち、

この部屋に同居しているから、

なんか家族みたいな気持ちが芽生えて来て、

けれどけっして恋とかじゃないって

確認を何度も何度もとっても、

かつての冷たい態度を謝りたいくらい、

愛おしくなってしまっているということ。


嘘みたいで、信じられないよ、

自分のこころながら、

どうしちまったって、いうんだ?

これじゃあ、まるで、洗脳じゃない?

いい加減に、しなきゃ、ね?

それもこれも、

みんな、猫ムスメが悪いんだ。


悪いんだからね?


責任とってよね?


羽川ミカサ、おまえのことだよ?












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る