赤い月なのに……猫のくせに……3 (乱れる、こころ)


ひとみな眠る 真夜中の

真っ赤な月が 低い街、


私は帰れず 公園の

ベンチでひとり 待っていた。


それは 遠い 約束で

私自身が 夢ではないかと


疑ってしまう まほろばの

ふたりの愛の かなう国、


人外のもの 私を愛す。

人外のものを 私も愛す。


真っ赤な月が かすむ夜

奇跡が訪れ あなたを 返せ。


嫌だ、私は、知らないさ。

あなたは猫の 国にいる


あなたは私に 逢いに来る。

あなたと私の 約束は


なにがあっても 破られない。

ふたりして そう 誓ったよね?


天がふたりを 裂こうと しても

死が ふたりを 分かつとも


絶対 ふたりは 別れない。

まとわりつくけど 嫌うなよ、って


ちゃんと、約束したじゃない?

ねえ、覚えてる?


覚えてるわよね?

初めての ひとりと いっぴきの


初めての キスの 前の 誓い、

まさか、忘れては、いないよね?


猫だから。って?

猫のくせに、私を待たすな。


猫のくせに、私をなかすな。

猫のくせに、もったいつけるな。


猫のくせに、…………今、逢いたい。

逢いたくて、逢いたくて、


逢いたくて、逢いたくて、逢いたくて

ああ、ひとみな眠る夜でよかった。


こんな。

こんな、たかだかいっぴきのあなたのために


こんなにみっともない泣き顔さらして

ひとり寒風にさらされている私、って、


あきらかに、おかしい人だもんね?

ああ、でも、うそ。


ほんとは、だれになんておもわれても

ぜんぜんいいの、ええ、


エロ猫に堕とされたバカ女とゆびさされても

のぞむところよ?


ただ、あなたに逢いたいだけ。

嘘つきで、見栄っぱりで、


気分屋で、甘え上手で、

気高くて、冷たくて、


あたたかくて、畜生で、

天敵で、


心もて遊ぶ、天敵で、

会わなきゃ良かったかな?


会わなきゃ、私に、なってなかった。

天敵で。


絶対、勝てない、天敵で。

私があなたを愛し過ぎてしまう、


そんな愛が重いはずなのに、

か、軽いもんさ、と顔ゆがめ、


強がってくれて、

私のこと、どれくらい好き、って聞くと


死んでもいいくらい、君のためなら

死んでも、いいくらい、


って、バカ!

ほんとに、死ぬヤツ、あるかよ!


……………………

……………………


私、待つわね。

約束だから、ね?


まさか、あの、まぼろしよりも

こころ蕩けさせるキスのあとの約束を


破るなんて、あり得ないものね?

うん。


あり得ない、あり得ない。

あり得ない、っつってんだ、わたしが。


待ち続けることができるか、

どうか、って、だけの、話さ。


そう、

それだけの………………猫のくせに、


焦らすんじゃ、

ないの、………………ね?


はやく、……出て……おいで?












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