第42話 3節 重力波の衝撃(3)

「少し難しいかもしれないが、ブラックホールの向こうに別の宇宙があると考える科学者もいる。この宇宙を含む三次元の巨大空間の中に無数の宇宙があるというイメージだ」

シュウジはヒロやサーヤが理解できるか、ためしている。


「ブラックホールの向こう側にある別の宇宙は、子宇宙っていうんでしょう?子宇宙を見てみたいなあ」

ロンはシュウジが連れて行ってくれることを期待している。


「そのまま行くのは危険だよ。ブラックホール付近には巨大な力が働いて、重力波が発生しているんだ」

シュウジの声を聞いて、ロンは落胆した。


しかし、楽天的な面も持っているケンが、ヒロたちに話しかける。

「ブラックホールの向こうに行くのは無理だとしても、重力波が発生しているブラックホールの近くまで行ってみようよ」


「いや、そんなに簡単じゃないんだ。別の宇宙については、違うイメージを抱いている科学者も多い。つまり、この宇宙を膨張するボールの表面のようなものと仮定すると、この宇宙とは異なる次元方向に広がっている別の宇宙があるというイメージだ」

シュウジは、ケンの視野が広がるように誘導している。


「我々の宇宙は膨張しているけど、過去の姿を残しながら現在から未来に膨張しているってことですか?」

ケンが反応する前に、ミウがシュウジにたずねる。


「そうだね。過去の姿が残っているから、この宇宙の膨張する方向と逆の方向に移動できれば、現在から過去に遡ることができる。今、君たちがいる影宇宙の中で上昇するということは、我々の宇宙の過去に向かって移動するということだよ」


シュウジの声を聞いて、すぐにケンが反応する。

「そうか、我々の宇宙が膨張しながら過去の姿を残しているから、影宇宙を通って過去に行けたのか」


「なるほど、ブラックホールの向こうにある子宇宙は我々の宇宙と同じ三次元の中にあるけど、影宇宙はこの宇宙と違う次元方向に広がっているんだ。だったら、同じ三次元の中にある子宇宙を見に行くよりも、影宇宙の中で冒険している方が面白そうだね、ヒロ」

ロンは一人で納得して、ヒロに同意を求めた。


「そうかも知れないけど、早く地球に戻って母さんの所に行きたいよ」

「そうよ、最初の目的を忘れて冒険している場合じゃないのよ」

ヒロとサーヤが口をそろえて、ロンに言い返した。


「あれは何なの?アニメの戦艦みたいな艦隊が見えるよ」

ジリュウの中で遠くを見ていたマリが、百機ほどの宇宙戦艦が移動しているのを見つけた。

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