第33話 2節 オリンポス惑星の住人(14)

二人が広場に着いた。

ヒロが自動車から降りて、走り出す。


「地球と同じ感覚で飛べるかな?」

そう言って、スピードを上げて走ると風が巻き上がった。


「あっ、すごーい、ヒロがつむじ風になって飛んでいる」

アルテミスが空を見上げて感動していると、金色に輝く高級車が向こうの空から飛んできた。


「あれっ、空飛ぶ自動車が飛んで来たぞ。うわっ、ぶつかる」

ヒロが急上昇して高級車をよけると、端正たんせいな顔立ちの青年がクルマの窓から顔を出した。


「君は、その宇宙服で空を飛んでいるのか?」

青年がヒロに向かって問いかけると、地上からアルテミスが説明する。


「アポロン、その子は忍術を使って飛んでいるのよ。お父様が言っていたヒロよ」

「おっ、アルテミス、こんなところで遊んでいたのか。研究所でみんなが待っているよ」


アポロンは、アルテミスとヒロがなかなか研究所に現れないので、探しにきたのだ。


「ヒロ、紹介するわ。双子のアポロンよ。科学、芸術、なんでもできる天才だけど、今度作った金色の空飛ぶ自動車は派手すぎるわ」

地上に降りたヒロに、アルテミスが笑顔を向けた。


「すごいクルマだね、アポロン。どうやって飛んでいるの?重力をコントロールしているの?」

ヒロが強い興味を示すと、アポロンは金色の自動車から降りて得意げに話し始めた。


「重力に負けない浮力を作っているのさ。詳しいことは研究所に行ってから説明するけど、翼が無いのに空を飛べるってすごい発明だろう?ところで、君は忍術を使って飛んでたようだが、何の装置も無いのにどうして空を飛べるんだい?」


「忍術っていうのは、厳しい訓練によって修得するものだよ。でも、僕のつむじ風の術は例外で、気が付いたら飛べるようになっていたんだ」

ヒロは、アポロンが信じてくれないだろうと思いながら、アポロンの反応を待った。


「そうなのか、訓練しなくても空を飛べたのか。僕も同じだよ。みんな信じないけど、気づいたら何でもできるようになっていたんだ。だから天才って言われるんだろうな」

アポロンは、自分の良き理解者に巡り合ったように喜んだ。


「私は双子だから、アポロンは訓練嫌いな天才だって分かっているよ」

アルテミスが、アポロンの肩をたたいて明るく笑った。

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