Birthdays4
少しばかり西に傾き始めた太陽の光を浴び、美しく煌めく金色の髪を揺らす。歩幅は均一で、完璧な挙動は息を飲むほどに魅惑的。浮かべる笑みは女神以外の言葉が、否、女神という最高峰の賛辞さえも物足りぬほど人の心を掻き乱す。
絶世の美少女であるフィアは、上機嫌な鼻歌を奏でながら住宅地を歩いていた。そしてその頭の中で考えていたのは、『違法薬物』とそれを扱う『元締め』についてだ。
最近になって台頭してきた薬物密売組織。
欲望塗れで好き勝手しながらも、警察やライバルの攻撃を難なく切り抜けている謎の存在。人間にしては中々のやり手なのだろう……が、フィアは全く脅威を感じていない。人智を凌駕する能力と、種として誇る優秀な嗅覚、更に本能の力を以てすれば、人間など虫けら同然であると彼女は信じて疑わないのだから。
警察が手こずる連中をこてんぱんにして颯爽と捕まえれば、成程確かに並々ならぬ成果と言える。思えばあんな『雑魚』を捕まえたぐらいでお金をもらえるなら、賞金稼ぎをする人間がたくさんいなくてはおかしいではないか。我ながらしょうもない早とちりをしてしまったものだ。お金が欲しいのなら捕まえるのは並の人間では手に負えないような奴等でなくてはなるまい。
……と、一匹勝手に納得したフィアは、早速その密売組織の『元締め』を捕まえようと目論んだのである。元締めが一人とは限らないので一人捕まえれば良いのか、何人も捕まえる必要があるのかは分からないが、どうせ人間だ。『全員』捕まえる事など楽勝であろう。仮に難しくてもやらねばならない。全てはお金のため、そしてそのお金で花中への誕生日プレゼントを買うためだ。
此処に花中なり晴海なりが居れば「なんか話が大きくなり過ぎてない?」とツッコミの一つでも入れただろうが、生憎今のフィアはただ一匹。野生動物らしく身勝手な思い込みと自分の価値観だけを胸に、
さて。志を抱くのは良いが、それだけで事が上手く運ぶ訳もない。
何しろフィアはその元締めが支配している密売組織……仮に『新密売組織』と呼ぶとしよう……については、警察官から噂話として聞いただけである。言っては難だが、彼のホラ話という可能性も否定出来ない。加えて『新密売組織』のメンバーの臭いなど知らないので、偶然町中でメンバーとすれ違っても捕まえる事など出来やしない。
まずは情報だ。知らなければ何も始められない。
花中と一緒に暮らす事九ヶ月。フィアは花中を通じて、情報を得る事の大切さをしっかりと学んでいた。
「あ。すみませんそこのあなたちょっと伺いたいのですが危ない薬を売ってる人間について何か知りませんか?」
尤もその情報収集の方法は、偶々すれ違った通行人に堂々と尋ねるというものだったが。
いきなり話し掛けられ、通行人A(大学生ぐらいの女性)は明らかな困惑を見せる。絶世の美少女を前にして一時息を飲んでいたが、質問文を理解した頃には顰め面を浮かべていた。というより嫌悪が露骨に表に出ている。
何しろ先の質問、勘繰れば「お前薬物の売人を知っているんじゃないか?」と疑われているとも取れる内容なのだ。早い話、お前は薬物中毒者か、と問われているに等しい。
「はぁ? 知る訳ないでしょ」
拒絶の意思をハッキリと見せながら、通行人Aはすれ違う前よりもずっと速い足取りで去ってしまった。言葉通りの意味で尋ねただけのフィアは、女性が何故あんな不機嫌そうなのかが分からず首を傾げる。
しかしながらフィアにとって、他者の感情など些末な疑問だ。そんな事よりも、今は『新密売組織』の情報を得る方が大事である。
「すみませーんそこの方ちょっと良いですかー危ない薬を売ってる人間について知りたいのですがー」
懲りる事なく、フィアは次に近くを通った通行人Bに声を掛け、先と全く同じ質問をする。
善良な市民だと思われる通行人B ― 三十代ぐらいの男性 ― は、一瞬鼻の下を伸ばし、だがすぐに変な奴に話し掛けられたと言わんばかりに顔を顰めると逃げるような早歩きで通り過ぎてしまった。されどフィアは諦めない、というより何が問題か分かっていない。なので通行人Cに、通行人Dに、通行人Eに……次々とチャレンジしていく。
『人間的』な視点で今のフィアを見れば、さぞ奇怪に映るだろう。何しろ道行く人々を手当たり次第に疑い、詰問しているように見えるのだから。頭がおかしいんじゃないかとか、なんで疑心暗鬼を募らせているんだと、人間ならば通行人達の心の声が聞こえてくるに違いない。
そして同時に、フィアに対してこうも思う筈だ――――お前、薬が欲しいのか……と。
「むぅ困りましたね。何故誰も教えてくれないのでしょう?」
人々が取り合ってくれない理由が分からず、歩道のど真ん中で立ち尽くして考え込むフィア。目を瞑り、口をへの字に曲げ、首を傾げる姿は愛らしさの塊だ。
そんなフィアを、遠くから眺める『男』が居た。
『男』はフィアをしばしじっくりと、まるで観察するように見続けていたが……やがて静かな足取りで歩き始めた。彼が向かう先には、今も首を傾げているフィアが居る。
そして『男』とフィアはすれ違い、
……特段、男は何もせずに通り過ぎようとした。
「おっとそこのあなた一つ尋ねたい事があるのですが」
新たにやってきた『通行人』だったのでフィアはすぐさま問い掛けたが、『男』は無視して歩き去ってしまう。返答すらない反応に、フィアは口を尖らせて不満を露わにする。
が、ふと首を傾げた。
先程の輩……何か引っ掛かる。
「……………?」
キョトンとし、フィアは唇に指を当てながら思案。違和感の正体を探ろうとする。
されど考え込んでいた時間は、ほんの僅かでしかない。
今は初めて見る人間の事を考えている場合ではない。花中の誕生日プレゼントを買うためにも、早いところ『新密売組織』を見付けねばならないのだ。
「すみませーんそこの方ちょっと待ってくださーい」
フィアは悩んだ後も何一つ変わる事なく、通行人を見付けるやなんの躊躇もなく正々堂々と尋ねる。
そして……
……………
………
…
……あれから、ざっと一時間は経っただろうか。
太陽は一層西へと傾き、時計を持たないフィアにも時間の経過を教えてくれた。町を歩く人の姿も疎らになり、他人とすれ違う事も少なくなる。
ここにきて、ようやくフィアも焦りを覚え始めた。
「うむむむむ弱りましたねぇ……」
一旦通行人への質問攻めを中断し、フィアは問題の洗い出しをする事にした。
闇雲に探し回っても『新密売組織』を見付けるのは難しそうである。だから薬物を売ってる人間を突き止め、その人間から『新密売組織』について聞き出す……というのがフィアの当初の目論見だった。本体を探すのが無理なら痕跡から探す。獲物を探す時の基本的方法の一つだ。
ところがどっこい、順調どころかいの一番で蹴躓いているのが現状である。
これまでに話し掛けた通行人達の反応を思い返すに ― 尤も、直近の数人分程度しか覚えていないが ― 人間とは、薬物の売人について知らないかと訊かれる事が酷く不快らしい。知らないなら知らない、知っているのなら知っていると答えれば良いのに何故怒るのか。フィアには全く理解出来ないが、元々人間とはよく分からない生き物なので仕方ないと諦める。
問題はここからだ。売人について知らないか、と尋ねると怒るのなら、ではなんと訊けば教えてくれるのだろうか?
これがさっぱり分からない。
「……これじゃあ足で探す方が早そうです」
あっさりと『人間的』な方法に見切りを付けたフィアは普段通りの、つまりは知性ではなく己の『力』に頼った方法に切り換える。
無論、闇雲に探しても見付かりそうにないから聞き込みをしていた、という根本的原因を忘れた訳ではない。持ち前のパワーで全てを薙ぎ払いながら進むためにも、目的地が何処にあるのかぐらいは見当を付けねば徒労に終わるのは明らかだ。ヒントとまでは言わずとも、微かな『つながり』は見付けねばなるまい。
なんらかの『つながり』を――――
「……ん?」
考え込んでいたところ、一人の女性がフィアの傍を通った。
年頃は四十か五十ぐらい。身長は同年代と比べればやや小さめで、痩せこけていて、顔色もあまり良くない。如何に不健康そうな人間だ。かといって目を見張るほど珍しいかと言えば、人混みで似たような容姿を探せば二~三人は見付かりそうな程度でしかない。
要するに、普通のおばさんだ。
そんな普通のおばさんを、フィアは後ろからじっと見つめる。顎を指先で撫でながら、何時までも見つめ続けていた。五メートル、十メートルと距離が離れても、宝石のように澄んだ偽物の碧眼を彼女から逸らさない。
やがて普通のおばさんは、住宅地の脇道に入ってフィアの視界から消えた
「ちょっとお待ちになってください」
「ひぃっ!?」
のとほぼ同時に、フィアは持ち前の『身体能力』を活かしておばさんの正面まで移動した。時速二百キロものスピードがあれば、十数メートルの距離など一秒も掛からず埋められる。
突然目の前に現れたフィアを見て、おばさんは悲鳴を上げて尻餅を撞く。普通ならば驚かせてしまった事に謝罪の一つでもするだろうが、生憎フィアは普通の『人間』ではない。引き攣ったおばさんの顔など興味も持たず、自分の都合で彼女に顔を近付ける。人間的にはあまりにも奇怪なフィアの行動に、おばさんは尻餅を撞いたまま後退りした。
「あなた危ない薬をやってますよね?」
ただしその後退は、フィアのこの一言で止まったが。
「な、なな、何を、いっ」
「やってるのかやってないのかだけ教えてくれれば良いのですが」
フィアは淡々と質問をぶつけ、おばさんはごくりと息を飲む。おばさんの額には冷や汗が浮かび、顔色はすっかり青ざめていた。
「や、やってないわよ! 変な言いがかり付けないでちょうだい!」
ややあって吐き出された否定の言葉もあからさまに狼狽していて、正直に話していない事はフィアですら察せられた。
おばさんは慌ただしく立ち上がると、文字通り逃げるように走り去る。人間如きがいくら全力で走ったところで、フィアを振りきる事など不可能なのだが……フィアが追い駆けなければその限りではない。
角を曲がった事でおばさんの姿は見えなくなり、フィアは呆れるように肩を竦める。
「……何故噓を吐くのでしょう? 私が警察官にでも見えたのでしょうか。やはりこーいう薬を使っていると頭がおかしくなっちゃうんですかねぇ」
そしてその手に持った、粉が入ったビニール袋をしみじみと眺めた。
フィアの手に掛かれば、人間の懐から物を盗み出すぐらい造作もない。能力によって作った『糸』を忍び込ませ、引っ張り出せば任務遂行となるのだから。この小さなビニール袋 ― 透明でチャック付きの代物だ ― はあのおばさんのズボンのポケットに入っていた。よもや偶々拾った物をポケットに入れていた、なんて事はあるまい。
そんなビニール袋をフィアは鼻に近付け、すんすんと音を鳴らして臭いを嗅ぐ。チャック付きとはいえ、微かな隙間から臭いは漂っていた。フィアの嗅覚ならば、捉える事は難しくない。
フィアは確信した。『あの男』から漂っていた臭いの一つと同じものだ。
フィアは
その嗅覚が導き出した結論が、このビニール袋の中身である『粉』が発する臭いと、自分が警察に突き出した薬物中毒者の臭いと一部合致するというもの。実際のところあの男の臭いはもっと複雑で『変な臭い』はまだまだたくさんあったが、少なくともこの『粉』と同じ物をあの男も使用していたのは確実だ。
この粉が、警察が言っていた『ぶれなんちゃら』という薬なのかは分からない。しかし一つのヒントなのは間違いない。この粉を作っている人間、もしくは売った人間ならば、危ない薬と身近な可能性が高い。
ならばそいつらから話を訊けば、『新密売組織』にも近付ける筈。
「ふふんやっぱり慣れない事はするもんじゃありませんね。やり方を変えたらすぐですよ」
上機嫌な笑みを零すと、フィアは手に入れたビニール袋をポイッと捨ててしまう。ビニール袋は排水溝の蓋の隙間を通り、その奥底へと落ちてしまった。排水溝は大して深くないので蓋を外せば人間でもビニール袋を拾えるだろうが、何かも分からぬ粉を求める人間は滅多にいない。そもそも見付けられるかも怪しい。いずれ雨が降れば袋は川まで流され、破れた場所から撒き散らされた粉は大量の水によって希釈されるだろう。無造作に捨てても、他者への影響はほぼあるまい。
別にそこまで考えていないフィアは袋の事などさっさと忘れ、軽い足取りで歩き出した。ほんの少し前まで悩んでいた事すら忘れたように、浮き足立っている。
臭いを追った先に答えがある。そう信じて疑わないフィアに、もう『悩み』などないのだから。
住宅も疎らにしかない町外れの一画に、その巨大な『施設』はあった。
敷地内へと通じる金網のフェンスは南京錠によって封じられ、中への気楽な侵入を妨げている。とはいえフェンスの高さは三メートルあるかないか。乗り越えようと思えば、平均的な運動能力を持った男性ならば易々と成し遂げられるだろう。
そうして大した苦難もなく辿り着いた先にあるのが、廃工場。
かつてはなんらかの薬品や加工品を製造していたのだろうか。工場の壁面には無数のパイプが走り、天井辺りから何本もの煙突が伸びていた。放置された年月を物語るようにあらゆる物が錆び付き、腐食し、崩れかけている。窓も割れ、壁も一部が崩落していた。施設の外側だけでなく内側にも小さな草が疎らながらも生えており、段々と自然に還ろうとしているのが窺い知れるだろう。この様子だと、大きな地震があれば一瞬で倒壊するかも知れない。
当然この施設に電気など通っておらず、明かりなんて上等なものは点かない。割れた窓から入り込む日差しだけが工場内を微かに照らすのみ。
その日差しが届かない建物の奥深く。薄暗い場所に、十人の男達が居た。
男達は五人ずつに分かれ、二つの集まりを作っていた。一方の集まりは三十~四十代の男性ばかりで、スーツを着た、少し顔立ちが厳つい事を除けば普通の日本人の集団。もう一方は二十~三十代ほどの男達で、南米系の顔立ちをし、格好も派手な柄が描かれた洋服姿と、まだまだ若さとやんちゃさの抜けない集団だ。どちらの集団も一人が金属製の大きなケースを一つ持ち、ケースを囲うように残りの四人が陣取っていた。まるで『何か』があってもケースだけは守り抜くかのように。
「……約束のブツは持ってきたな?」
日本人の男の一人が質問すると、もう一人の日本人が南米風の男達に英語で先の質問をする。問われた南米風の男達の中の一人が、独特なイントネーションの言葉で自分達の集団に話し掛け、リーダー格らしき人物がこくりと頷いた。
そして南米風の男達は自分達が持つ金属製のケースを置き、日本人の男達に中身を見せ付けるように開く。
ケースの中身は、ぎっしりと白い粉が詰まったビニール袋。
日本人の男達は中身をしっかりと見届けると、今度は自分達が持っていたケースを開けた。こちらの中身はぎっしりと詰められた札束。それも百ドル紙幣であり、大まかに換算してざっと五百万ドル……五億円相当の現金だ。
南米風の男達はニタリと笑い、粉の詰まったケースを閉じると一人の男に粉入りケースを運ばせる。日本人達も一人が現金入りのケースを持って移動を始めた。ケースを持った二人は同時に自分が持つケースを前に出し、相手のケースを掴んでから自分のケースを手放す。
これにて彼等はケースの交換を終えた。十人の男達は満足げに笑い、各々が踵を返して
「すみませーんちょっとお話を伺いたいのですがー」
工場内に能天気な少女の声がするのと同時に、全員が声の方へと振り向いた。
彼等が振り向いた先に立っていたのは、金髪碧眼の美少女ことフィアだった。
「随分と暗いですねぇどっかに明かりのスイッチとかありませんかー?」
足下にある廃材や鉄パイプをガンガンと蹴飛ばしながら、フィアは男達の方へと歩を進める。
フィアの姿を目の当たりにし、男達はしばし動かずにいたが……やがて南米風の男達の一人が行動を起こした。
彼はなんの躊躇いもなくズボンのポケットに手を入れ、そこにしまっていた黒いモノ――――拳銃を取り出したのだ。銃器に詳しいものならばその銃が『ベレッタ』と呼ばれる、世界でも広く流通した、しかし日本では滅多に見られない一品であると気付いただろう。
日本人の男達は南米風の男の行動に一瞬目を見開き、彼等もまたスーツの懐に手を入れたが、警戒心を解くのにさして時間は掛からなかった。
南米風の男の取り出した銃の先が示すのは、突然の侵入者であるフィアだったからである。
「……んぁ?」
男達が何か行動を起こしている事を察知し、フィアは今更ながら彼等をちゃんと見ようとした、が、最早手遅れ。
パンッ、パンッ。
軽快な破裂音が二つ鳴るのと同時に、南米風の男が構えた銃口から鉛玉が放たれる。直径九ミリ程度の大きさながら、秒速三百メートル以上の速さで飛ぶ事で大きな運動エネルギーを有する金属の塊。小さいからと侮るなかれ、スペック上有効射程は五十メートル、つまり五十メートル離れた人間を殺せる力がある。十数メートル先の『少女』相手ならば、弾丸は十分な殺傷能力を保っている筈だ。おまけに此度の弾丸は正確に頭部を捉えており、狂いなくその命を刈り取るだろう。
殺人への嫌悪が欠片もない、どす黒い一撃。目撃者を許さない狂気的な思想が一人の少女の命を奪おうとした。
尤もフィアは人間でなく。
カキン、と金属音 ― ひしゃげた弾丸が勝手に立てた音だが ― が鳴るだけで、フィアがダメージを受ける筈もなかった。
「……!?」
「おや? 今何かしましたか? 何かが当たったような気がしたのですが」
銃弾が奇妙な音を鳴らしただけでなく、当たった筈の少女がぴんぴんしている。
『あり得ない』事態を前にして、人間達は身を強張らせた。もし彼等が野生の獣だったなら、この時点で危機感を覚え、逃げ出しただろう。
しかし人間は知性を発達させ、『常識』を手に入れてしまった。自分達の発展と力が、揺るぎないものだと信じている。どこぞの島に現れた大怪獣ならいざ知らず、生身の『人間』に銃弾が弾かれるなどあってはならない。
彼等の脳が下した判断は「弾が外れて壁にでも当たった」であった。
「ちっ、下手くそが」
日本人の男達もまたスーツの懐に忍ばせていた銃を取り出し、フィアに向けて発砲する。しかし何発撃とうと弾かれるような金属音がするだけで、フィアは倒れない。最初は一人二人だった射手は続々と増え、銃弾の雨を作り上げた。
対するフィアは、ようやく自分が撃たれている事を『理解』した。無論彼等が自分に何かをぶつけてきている事は感知しているのだが……暗くてよく見えない上にあまりにも弱過ぎて、その正体が全く分からなかったのである。銃だと理解出来たのも探知用に展開した水の『糸』で直接男達、そして彼等が握っている銃を触ったからでしかない。
男達の『攻撃』は、その程度の関心しかフィアから引き出せなかった。加えて今回、この男達をボコボコにする訳にはいかない理由がフィアにはある。
この男達から、少し前に遭遇したおばさんから『拝借』した薬と同じ臭いがするのだ。彼等は知っている可能性がある。
そう、『ぶれなんちゃら』を売っている奴等について。
「別に撃ちたいなら撃ってて良いですけど話は聞かせてもらいますからねー」
軽い発砲音にすら紛れてしまう能天気な前置きをしてから、フィアは男達の方へとずんずん歩み寄った。
男達は今や半狂乱になっていた。最初は様子見していたメンバーも参加し、十人全員が銃撃戦を仕掛けている。いくら一発一発は小さな発砲音とはいえ、パンパンパンパンパンパン、立て続けに鳴り続ければ喧しい。家が疎らで通り掛かる人も稀な地区とはいえ、こうも騒げば銃声を聞かれるのは時間の問題だ。いずれ警察も乗り込んでくるだろう。
しかし男達からすれば、銃弾を何発受けても怯みもしない『化け物』の方が警察の何百倍も恐ろしい。
そして暗い所為で彼等の引き攣った顔が見えないフィアは、見えたところであまり変わらぬ暢気な口振りで話し掛ける。
「あのですねーちょっと訊きたいのですけど」
「う、うわああああああっ!? な、なんだコイツ!?」
「そのケースの中にあるのって危ない薬ですよね?」
「じ、銃が効かねぇ!? ばば、化け物だ!」
「薬を売ってるって事はあなた達は密売組織ですよね?」
「まさか、や、奴等が来たのか!? なんで俺達なんかを!?」
「実は私訳あってとある密売組織の元締めを捕まえたいのですが」
「もう駄目だ! 逃げ」
「あ。逃げちゃ駄目ですよ」
逃げようとする男の声を聞き逃さなかったフィアは、走り出した『影』目掛けて腕を伸ばす。文字通り、五メートルほどぐにょーんと。
フィアからすれば作り物の『身体』をちょいっと弄っただけだが、人間視点では最早化け物というより妖怪変化の類。漫画なら今頃目玉が飛び出していそうなほどに目を見開き、国や人種の違いを乗り越えて男達は全員同じ顔になる。
尤も、驚きのあまり思考停止をしていられた時間は一秒もない。何しろ面倒臭がりで大雑把なフィアは、伸ばした腕で逃走者だけでなく、他の男達もついでに薙ぎ払ったのだから。
「うげっ」
「ギッ!?」
「グブッ」
年齢も国籍も関係なく、男達の口からは大体同じ悲鳴が上がる。まるで子供が蹴飛ばした小石のように吹き飛ばされた彼等は積まれていた廃材の山に突っ込み、呻きを上げるだけで動かなくなった。
フィアは逃げなくなった人間達を見て、満足げに鼻息一つ。ゆったりとした歩みで男達に近付くと、一人の男の襟首を掴み、引っ張り上げた。この男を選んだ事に理由はない。強いて言えば、偶々一番近くで倒れていたからである。
フィアにとって幸いな事に、彼は日本人。彼がフィアに向ける言葉は日本語だった。
「ひっ……な、なんなんだお前……俺達をどうする気だ?!」
「別にどうもしませんけど。というかこちらは最初から訊きたい事があると言っているではないですか。それに答えてくれれば十分です」
「き、訊きたい事……?」
強面を子供のように怯えさせながら、男は訊き返してくる。フィアはこくんと頷き、凡そ何時も通りの笑みを浮かべた。
「そうです。あなた達『ぶれなんちゃら』について知りませんか?」
「ぶ、ぶれ……?」
「あの粉がそうなんじゃないですか? 危ない薬なんですよねアレ」
「た、確かにあれは薬物だが……」
「おおまさかの一発ビンゴでしたか。じゃあとりあえず全員ボコボコにしてから警察に」
「ひぃっ!? ま、待ってくれ!? 確かにアレは違法なもんだが、お前の言うぶれなんとかじゃない! ただの覚醒剤だ!」
男の弁明に、フィアは眉を顰める。覚醒剤という時点で『ただの』なんて言えた代物ではないのだが、フィアとしては『ぶれなんちゃら(既に名前を殆ど忘れている)』を売っている奴等に用があり、覚醒剤なんかどうでも良い代物。男の答えを欠片も疑わず、目当てのモノと違うと分かってガッカリした。
しかしフィアとて、いきなり『本命』にぶち当たるなんて幸運はさして期待していない。気を取り直し、改めて最初の質問の答えを求める事にした。
「そうですか。では『ぶれなんちゃら』とかいう薬について何か知りませんか? 具体的には売ってる奴等について知りたいのですが」
「い、いや、何かと言われても……そもそもなんだよ、そのぶれなんとかって」
「名前は忘れました。確かそんな名前だったと思うのですが」
「な、なんてあやふやな……」
「まぁそんな訳ですのでなんでも良いから教えなさい。教えないと酷い目に遭わせますよ?」
「そんなっ!?」
既に酷い目に遭っている男は理不尽な質問を前に絶望しきった表情を浮かべ、縮こまってしまう。今や違法薬物の売人としての風格など何処にもなく、まるで本物のヤクザに出会った半端者のチンピラのようにビクビクとしていた。
されど彼の態度などフィアの心には響かない。男が情報を教えてくれるまでぽけーっと待つつもりだ。
「な、なぁ、その……お前が探しているのって、『ブレインハック』の事か?」
男の仲間がおどおどしながらも尋ねなければ、フィアは本当に何時までも目の前の男を掴んでいただろう。
何かを知っていそうな者が名乗り出たため、フィアは捕まえていた男をポイ捨てする。数メートル先にある廃材の山に頭から突っ込んだ男は、そのまま動かなくなった。ピクピクと痙攣しながら呻いているので、死んではいないだろうが。
物理的に捨てた男など見向きもしてないフィアは、自分がした事に気付かぬまま何かを知っていそうな男に顔を近付ける。目の前で起こった惨劇に男は思いっきり慄いたが、フィアはお構いなしに問い掛けた。
「ぶれいんはっく? おおっ確かそんな名前だった気がしますね。あなた詳しいのですか? 私それを売っている奴等に用があるので教えてほしいのですが」
「く、詳しいというか、その、お、俺達にとっては目障りなヤクだからよ……売ってる奴等は雑な仕事をしているようだから、そのうち警察に捕まると思っていたんだが、捕まるどころかますます調子付いているみたいで……だから何時か、その売人共をとっちめてやろうと思って調べていたんだ」
「ほほうそうだったのですか。具体的にどんな事が分かったのです?」
「……分かったと言えば分かったんだが……」
フィアが尋ねると、男は躊躇い気味の口振りでこう話した。
曰く、『奴等』は八人ほどの小さな組織である。
メンバーの顔と名前は割れている。『奴等』の仕事はハッキリ言ってど素人のそれで、さして緻密な調査をせずとも簡単に情報を集められたからだ。それは自分達だけでなく警察や、他の売人達にとっても同じだったようで、様々な連中が『奴等』を壊滅させようと手を打っていた。
ところが『奴等』はその全てを躱した。
警察が拠点を見付けても、逮捕状を取る頃にはとんずらしている……これぐらいなら、この界隈では珍しくもない出来事だ。しかし法に則った正規の手続きなど取らない、巨大密売組織が送り出した『戦闘員』の襲撃さえも、『奴等』は尽く回避していた。襲撃とて金なしでは始められない。無駄な資金を使わされた組織には隙が生じ、『奴等』はその隙間を縫うようにして勢力を拡大。今ではこの街で最も有力な密売組織となっていた。
……というのが裏世界の中でも『浅い』位置の情報。これだけなら奇妙な連中が参入してきたというだけの話である。しかし男は更に詳しく調べた。『奴等』の所為で仕事が減り暇になっていた事で、調査はじっくりと念入りに行えた。
そして調べた結果、奇妙さは恐怖へと変わった。
『奴等』は確かに度々巨大組織の襲撃を受けていた。だが浅瀬で言われているように躱したのではない……返り討ちにしたのだ。
違法な薬物売買を行う、危険な巨大密売組織の襲撃である。戦闘員の武器は金属バットなんてチンケなものではない。海外から密輸した銃器であり、人間なんて簡単に殺せる代物だ。おまけにその戦闘員達の大半は薬物中毒者……薬のためなら喜んで人を殺す頭のイカれた連中である。味方の死すら厭わない、最悪の兵士。それが何十と送り込まれたのだ。敵も味方も関係ない殺戮が繰り広げられる筈だった。
だが、蓋を開ければ死んでいたのは巨大組織の兵士のみ。
おまけに死を恐れぬ筈の彼等は、その大半が恐怖で顔を歪めていた。何が起きたか、それを語る者は誰一人として残っていない。お陰で最初はうっかり仲間割れでも起こしたのかと巨大密売組織の幹部達は思い、今度は正規の、薬物中毒者と比べれば幾分まともな奴等を送り込んだ。しかし結果は変わらなかった。
『奴等』は逃げきれる警察とは戦わない。だが襲い掛かってくるライバルは殺してでも黙らせる……そうだと分かる頃には、巨大密売組織はその力を衰えさせていた。今ではすっかり『奴等』との争いを避けるようになり、町から撤退する組織も一つ二つではない。『奴等』は恐怖の対象となり、最早誰にも止められなくなっていた。
やがて『奴等』は密かにこう呼ばれるようになり、『奴等』自身もこう名乗るようになった。
『クリーチャーズ』と。
「だっさい名前ですねぇ。もっと可愛いものにした方が良いと思うのですが」
散々恐ろしげに語った売人の言葉を、フィアはさっぱりと切り捨てた。フィア的には可愛いものが好みなので。
「た、確かに可愛くはないけどよ……でも化け物としか言えねぇんだよ。『クリーチャーズ』の構成員は、末端の売人を除けば十人もいねぇと聞く。対して送り込まれた刺客の数はその何倍もの数。普通の人間なら二対一になった時点でまず一方的にやられるのに、一人も殺されずに返り討ちだぜ? 人間業じゃねぇ」
「ふーむ確かにそうかも知れません。まぁ人間数十人を殺すぐらい私なら造作もないですけどね」
「……なぁ。アンタは、その、『クリーチャーズ』の一員じゃない、のか?」
「? 違いますけど?」
何故そのような事を訊くのです?
『クリーチャーズ』なるダサい組織に加わった覚えのないフィアは首を傾げ、男に真意を尋ねた。
「だ、だってアンタ、銃も効かなくて……その、本当に『化け物』だと思ったから……」
すると男はおどおどしながらそう答えたので、フィアは成程確かにそうも思うかと納得する。
そしてふと考えが脳裏を過ぎった。
言われてみれば、ただの人間が何倍もの戦力差をひっくり返すというのは奇妙な話に感じる。
その戦力差をひっくり返したとなれば、
或いは本当に『化け物』なのかも――――
「……面倒ですねぇ」
出来る事なら楽にその組織の元締めを捕まえたかったフィアは、本音をハッキリと言葉にする。されどだからやっぱり止めよう、という訳にもいかない。花中の誕生日プレゼントを買うためにも、そいつらを警察に突き出さねばならないのだ。
「まぁ良いでしょう。実際戦ってみたら拍子抜けするほど弱いかも知れませんし……ところでそいつらが今何処に居るか分かっているのですか?」
「い、いや、そこまでは……」
「ならそいつらの持ち物とかありませんか?」
「持ち物って言われても……お前、何か持ってないか?」
ひそひそと、売人の男は隣で震えていた仲間に尋ねる。震えていた仲間は他の仲間に、他の仲間は通訳を通して南米風の男達に……質問の輪はどんどん広がる。
フィアに酷い目に遭わされたので、機嫌を損ねたくない一心からの行動なのは男達の焦りの浮かんだ顔を見れば明らかなのだが、フィアからすればこれは好都合。何もないならそれで良し、何か出るならもっと良しと考えながら、男達の事を黙って見守る。
「……×××××××××」
やがて、南米風の男の一人が何か喋った。
喋ったが、生憎フィアは日本語以外の言葉が分からない。首を傾げていると別の南米風の男が通訳をしていた日本人に話し、日本人通訳が日本語でフィアに説明する。
「……どうやらコイツ、『ブレインハック』を持っているらしい」
「むむ? つまりコイツはその『クリーチャーズ』とかいう連中の一人だという事ですか?」
「いや、売人から買っただけらしい。母国に持ち帰って、混ぜ物をして何十倍に水増しして売るつもりだったようだ。この世界じゃ珍しい話じゃないな。売った連中が『クリーチャーズ』の一員なのか、或いは仲介役かは分からん……が、今の日本であのヤクを売ってるのは連中ぐらいだ」
『クリーチャーズ』の成功を聞いて真似したアホという可能性もゼロじゃないが、と最後に付け加え、日本人側の通訳は肩を竦めた。
通訳が話を終えると、件の南米風の男はズボンの中から小さなビニール袋を取り出した。袋の中には粉が入っており、恐らくはそれが『ブレインハック』だと思われる。薬物についての知識など全くないフィアには、小麦粉入りの袋にしか見えなかったが。
南米風の男は卑屈な笑みを浮かべ、『ブレインハック』入りの袋をフィアに渡してきた。貴重な薬物を献上してご機嫌取りをしたいのか……などとは欠片も思わず、フィアは渡されるがまま袋を受け取る。
そしてなんの躊躇もなく、その袋を破いて穴を開けた。
「お、おま!?」
「何をする気だ!?」
男達は一斉に騒めき立った。違法薬物入りの袋を開け、中身を取り出したなら、『使用』が脳裏を過ぎりもする。『ブレインハック』は極めて強力な幻覚作用を伴う薬であり、使えば錯乱する危険性のあるモノだ。
銃弾すら効かぬフィアが錯乱すればどうなるか、不安になるのは至極当然。しかしながらフィアもこんな危ない薬を使うつもりなどない。
「くんくん。くんくん」
やるのは、臭いを嗅ぐ事。
フィアの『奇怪』な行動に、男達は呆気に取られて固まる。そんな彼等の事などお構いなしなフィアは、さながらワインのテイスティングでもするかのように臭いを深く味わう。
覚えがある臭いだった。
警察に突き出した、あの薬物中毒者が纏っていた臭いの中に似たようなものがあったのを覚えている。やや『風味』が異なるものの、作った時期が違うとか混ぜ物の有無で成分に差異があるのだろう。あの薬物中毒者がこれと同じ種類の薬を使っていたのはほぼ間違いない。
なら、この臭いを追えば『クリーチャーズ』に辿り着ける筈だ。
「……ふふん。ようやく見付けましたよ」
フィアは袋を無造作に投げ捨てる。当然穴の開いた袋は、工場の床に落ちるのと同時に中身である薬をぶちまけた。南米風の男が慌てた様子でこぼれた薬に駆け寄ったが、フィアはもうそんな薬に興味などない。もっと言えば男達にも用はない。
別れの挨拶一つなく、踵を返したフィアは男達に無防備な背を向け、工場の出口目指して歩き出す。
今ならその背中に銃弾を当てる事は難しくない。
しかし誰一人として銃を構えようともせず、ただ静かに見送り……フィアはのんびりとした足取りで、廃工場の外へと出て行った。
残された満身創痍な男達は、無言のまま仲間と顔を見合わせる。廃工場内に満ちる沈黙は、長くは続かない。全員が一斉に安堵のため息を吐いたからだ。
「……一体なんだったんだ、アイツは」
「人間じゃない事は間違いないが……つーか、あーいう化け物と遭遇したら普通はこう……全滅するもんじゃねぇか?」
「止してくれ。そういう事を言ったら現実になりそうだろ」
ぐだぐだと、それこそそこらのチンピラのように仲間で集まって駄弁る男達。日本人達だけでなく、南米風の男達も同じく仲間同士で塊を作る。
恐るべき、それこそ自分達を殺す事など造作もないだろう存在が、ちょっと『お話』しただけで帰ってくれたのだ。気が緩み、だらけてしまうのも仕方ない事である。
「すみませーん一つ忘れていましたー」
故に帰った筈のフィアがまた戻ってくれば、先程以上に彼等の顔は引き攣ってしまうのだ。フィアは最初と同じように人間達の反応など気にも留めず、僅かながら後退りしている男達にずんずんと近付く。
「よくよく考えたらあなた達も薬の売人ですよね?」
それから脈絡もなく、そんな質問を彼等にぶつけた。
フィアの言葉が分かり、正しく薬の売人である日本人の男達は、こくりと全員一斉に頷く。
「あ、ああ。まぁ、そうだな」
「つまりあなた達の売った薬によって頭がおかしくなった人間がそれなりの数いるんですよね?」
「そ、そうなるな」
「私は別に人間が死んだり狂ったりしてもどーでも良いのですが私の友達である花中さんはそういう人達を見たら悲しむと思うのですよ。人が死んだり苦しむのは嫌だって聞いた覚えがありますし」
「……え?」
「でもって私は花中さんの悲しむ顔はあまり好きじゃありません。にこにこ笑顔が一番可愛いのです」
「え? え?」
なんだろう、話の流れが悪い方に向いている気がする。彼等の顔色がそんな胸の内を明かしていたが、生憎フィアには伝わらない。
「花中さんの笑顔のため二度と薬を売ろうと思わないようあなた達は全員とりあえずボコボコにしておきますね♪」
天使のような微笑みを浮かべながら、フィアは握り締めた拳を男達に見せる。
男達は ― 日本語が分からない南米風の男達すらも ― その握り拳を目の当たりにすると、何もかも察したように朗らかな笑みを浮かべ、
十五分後。市民からの通報を受け廃工場にやってきた警察官が見たのは、顔面が風船のように膨れるまで殴られた、気を失った男達の不様な姿だけであった。
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