1-9
爽やかな風が心地良い五月。日射しが
佳くんは四月に入ると、また夏に会おうねと口にして、笑顔で東京へと帰っていった。それでもLINEで簡単に連絡が取れるので、それほど寂しいとは感じなかった。
「で? 最近はどうなってんの?」
「え? 何が?」
高校時代に知り合った親友の
今はバイトの休憩中だ。休憩は交代で取ることになっている。平日である今日のこの時間は、愛実と私の二人しか居ないようだった。
「ほら、東京の」
「ああ、うん。LINEは結構してるよ」
愛実とは何でも話し合える仲だ。愛実は口が堅いので、相談事や心配事などは、彼女にだけは必ず伝えていた。
今回の佳くんとの件は何となく言ったことだったけれど、彼女はとても興味を示したのだ。
「そういうの、いいよねぇ。出逢い方が恋愛ドラマとか少女漫画みたいだもん。しかも名前の響きが同じとか、もう、運命じゃん! あたしも素敵な出逢いがしたいよぉ……」
愛実は栗色の長い髪を指に巻き付けながら、うっとりとしたような表情で言った。
「ね、写真とかないの?」
「写真はないなぁ。私、自分が写真に写るの苦手でしょう? だから自分からも
「だよねぇ……」
残念、と言って、彼女は自分のお茶をぐいっと飲んでお菓子をつまんだ。
「っていうか、私の彼氏じゃないしさ」
「まあね、螢には自転車屋さんの幼馴染みくんがいるしね?」
「俊太はただの幼馴染みだってば。それ以上でもそれ以下でもないよ」
愛実は俊太を一度だけ見かけたことがあるのだ。
その日は天気予報が大ハズレをして豪雨になってしまった。
彼は雨具を持っていなかった私を、母に頼まれたのだと言って、車で迎えに来てくれていたのだ。
田舎では車に乗れなければ生活がしにくいため、私も運転免許は持っている。しかしバイト先は私の自宅から近い場所にあるので、交通費は貰わずに自転車で通勤しているのだ。
愛実は俊太を見て大興奮したらしく、その日の夜は、携帯を充電しながら愛実と通話したのを覚えている。
確かに俊太は、顔は悪くないと思う。体格は普通だけれど、身長がやや高めなせいか少し目立つのだ。サラサラした黒髪の短髪がよく似合っていて、女性に騒がれてもおかしくないだろう。
「で、螢はどっちがタイプなの?」
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