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「ん? ケイ? 君もケイなの? へぇ、なんだか親近感がくなぁ」

 彼はそう言って柔らかく笑った。

 なんだろう。何となく、不思議な雰囲気のある人だと思った。

「あの、この町の人ですか?」

「ううん、違うよ。今って春休みでしょ? だから、祖父母の家に滞在してるんだよ。普段は東京の専門学校に通ってるんだ。演劇関係の、今度二年生になるんだ」

「あ、私も二年生。大学の」

 演劇。なるほど。数年前に高校時代の担任が「演劇部の連中は変わり者が多いんだよ。顧問こもんの俺も含めてな」と言っていた事があった。この独特な雰囲気は、演劇をやっているからなのかもしれない。

「演劇か。いいね。私、るのは結構好きだよ」

 そう言うと、星原くんはとても嬉しそうに笑って私を見た。それは、本当に演劇が好きなんだろうなと思わせるような表情だった。

「演劇、楽しいでしょ? 観てるとやりたくならない?」

「昔、ミュージカルにあこがれてたことがあったんだよね。でも演技は自信がなくて、ミュージカルだったら、合唱部もありかなと思って、そっちに……」

 どうしてだろう。あまり他人には話したくない事のはずなのに、星原くんには話せてしまった。

「ねえ、ちょっと演技やってみない? ちょうど相手役が欲しかったところなんだ」

 そう言って、手に持っていた本のようなものを持ち上げてみせた。彼が読んでいたものは、どうやら脚本きゃくほんだったらしい。

「え、無理だよ! 演技なんて、小学校の学芸会が最後だし、どうやったらいいか……」

 首を思いきり横に振ったけれど、星原くんは楽しげに微笑んで、脚本を私に差し出した。

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