異世界での俺の妹は、幼女で紅いドラゴンみたいデス

飼猫 タマ

第1章 修行編

第1話 序章

  俺は今から冷凍される。


  現在の医療技術では、俺のかかった病気は治せないので、その医療技術が開発されるまで冷凍されるというわけだ。


  思えば、俺の人生は小学2年生から31才になった今まで、時計の針が止まったままの様だった。


 事の初めは小学2年生の時だ。夏休みを利用して母親の実家に家族で遊びに行っていた。母の実家は山あいの凄い田舎にあり、家の裏には山があった。


  毎日、裏山で妹とカブトムシを採ったり、山を探検したりして楽しく遊んで過ごしていた。


 ある日いつもの様に妹と裏山を探検していると、小さな洞窟を見つけた。その入口は小さな子供がやっと入れる位の大きさで、周りは落ち葉や雑草で埋もれていて、パッと見では洞窟があるとは解らない様な場所だった。


  妹が

「怖いから入るのやめようよー」


  と言ってるのを振り切り、今から冒険が始まるとワクワクしながら身をかがめて妹を置いて一人で洞窟の中へ突入していった。


  洞窟の中は、外の様な真夏特有のジメッとした暑さと違い少しヒンヤリとしていた。


 少し進むとすぐに、タタミ3畳位の大人がなんとか立てる位の空間が広がり、その中央には高さにして50センチ位の丸い石が3分の1位埋まっていて石の真上を見ると✕印が刻まれていた。


  それを見た俺は、ドクッドクッと自分の心臓の音がとても速く響いているのが聴こえた。


  宝物を発見したと思ったからだ。


  よくマンガなどで出てくる宝の地図には、宝物がある場所には必ず✕印が書かれてある。


 両手を挙げ

「宝物見つけたぞー!」

 と叫び、興奮して震える手で✕印が刻まれた50センチ位の丸い石を体全体の力を使ってグッと押してみた。


  石は拍子抜けする程簡単に動いた。そのままの勢いで、グググッと石を移動させると、突然身体が凍りつきそうな程の激しい寒気が襲い、身体ガクガク震え出し、自分でも聞こえる位カチカチと歯が鳴った。

 

  恐る恐る、石が移動した下を見てみると

  口で説明するには難しい恐ろしく不快な叫び声が聴こえた瞬間、何か禍々まがまがしい赤黒い物体が石の下から出てきて俺の口から入って行くのを感じた。


  そして


  視界が真っ黒になった。



  「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

  妹の叫声で目が覚めた。


 俺の妹 空木からぎジュリは血相をかえて俺を揺すっていた。

「ウーン…」

「アッ!お兄ちゃん。良かった。死んじゃったと思ったよぅ」

 ジュリは泣きそうな顔をして俺の顔を心配そうに見ていた。


 どうも俺は石を移動させた途端、気絶していたらしい。


 ジュリは洞窟の外でずっと待って居たのだけど、俺の「宝物見つけたぞー!」と言う声が聞こえた後、いつまで経っても戻ってこない事に不安になり、30分経った時点で、怖かったけど意を決して洞窟に突入したらしい。


 すると、奥で俺が倒れて居るのを発見して今に至ったと言う事であった。


 こんな可愛い妹を心配させてしまい、申し訳ない気持ちがいっぱいになり思わずギュッと抱きしめた。


「お兄ちゃん痛いよぉ」


「ゴメン ゴメンお兄ちゃん思わず感動して、つい抱きしめちゃったよ。」


「ところで身体大丈夫?」


 俺は身体のあちこちを触って見たり、動かしたりしてみたが、特に変わった所がなかった様だった。


「うん。大丈夫!それより宝物発見したと思ったのに何も無かったみたいだな。何かあると感じたのに気のせいだったみたいだ。でも、何で気絶したんだろう?」


「お兄ちゃん本当に心配したんだから、無理しないでよぉ」


 と言ってジュリはプクッとほっぺをふくませている。


 あぁー。なんて可愛い妹なんだと思いつつ、妹と二人で母の実家に帰って行った。右足の小指に赤黒いアザが出来たのを気付かずに…


 それから暫く、何事もなく夏休みが終わりに近づき、自宅に帰る事になったのだが、それは、前触れもなく突然起こったのだった…


 自宅に帰る車の中でそれは突然起こった。


 少し気になっていた右小指にあった赤黒いアザが広がってきたのだ。痛くは無いが赤黒くなった部分は動かないのだ。


  最初に気付いたのは高速道路を走っている時だった。ふと見ると右足の足首が赤黒く変色していた。足首が動かない。


 右足小指に赤黒いアザができた時は、動かなくても支障もなく、左足の小指もそれほど自由に動かせないので気にならなかったのだが、足首が動かせないのは別である。


 尚且つ、急に赤黒くなったので、両親も妹も慌てて狼狽ろうばいし、早く自宅のある地元の病院に連れて行こうという事になった。


 地元の病院に到着する頃には、右足の股の付け根まで侵食し、赤黒く不気味になった右足は、うんともすんとも動かせなくなっていた。


 それからの俺の人生は悲惨であった。


 結局、何処の病院にいっても原因不明で片付けられ、どんどんアザは侵食していき、最初のうちは友達もお見舞いに来てくれたが、だんだん遠ざかっていき、たまに学校に行っても赤黒いアザが気持ち悪いらしく、病原菌が移るから近づくなと罵られ、先生も、最初は庇ってくれたが偽善者ぽい感じで本当は近付きたくないんだなと、ふとした瞬間に感じる。


 そのうち両親もストレスからか喧嘩が絶えなくなり、自分に気づかれないように喧嘩してるみたいだった。


 この赤黒いアザは中学に上がる頃には両足全体に侵食し全く歩けなくなり、

 中学も最初の数日間行っただけで、周りからの、ばい菌を見る様な白い目に耐えれなくなり不登校になっていった。


 原因不明の病気なので、移らないと言えば嘘になるし、自分でも仕方が無いかとは思う…


 しかし、妹のジュリだけは、そんな俺の看護を、文句を言わずに、ずっと続けてくれた。


  とても有難く思う。

  思えばジュリはお兄さん子だった。どこに行ってもついてくるし、俺が言う事は何でも肯定してくれる。


 俺が病気になった後も甲斐甲斐しく世話もしてくれる。俺が病気になってから、嫌な事があって癇癪かんしゃくを起こした時でも、親身になって聞いてくれてる。本当に、できた妹だ。


 そんな日々が31才まで続いた。


 ある日、国立最先端医術研究ラボ施設というところから、連絡があった。そこでは、最先端の医術を研究しており、俺の病気に興味を持っているとの事だった。


 取り敢えず、実際に見てみたいので国立最先端医術研究ラボ施設に来て見て下さいと言う事だったので、ダメ元で行ってみた。


 結局何も解らなかった。

 しかしラボは、現在の医療技術では治らないかもしれないが、何十年、何百年先なら、治療技術が発見されるかも知れないので、身体を冷凍保存して、医療技術が発見されたら、解凍して治療してみたら?と言う事を提案された。


 勿論、料金は無料、治療技術が見つかった後は、ラボが存続している内は金銭的に面倒を見てくれるとの事だった。実際には、国立施設なので国が存続している限り何百年も立って冷凍保存から復活たとしても、その後の事は、例え身内が全員生きていなくとも、責任を持って面倒を見てくれるとの事だった。


  家族は反対したが自分は良い話だと思った。


 自分のせいで両親の喧嘩も絶えないし、妹も、とても美人に成長しているが婚期を逃している。俺の事を気にし過ぎて結婚できないんだと思う。


 多分、一生結婚しないで俺の面倒を見るつもりだと思う。


 俺は、家族にこれ以上迷惑をかける事はできない。特に妹には、これまで迷惑かけた分幸せになって欲しい。


 そして俺は決断した。冷凍保存処置を受ける事を。


 両親と妹は、自問自答して、ウォンウォン泣いた。でも最終的には、俺の考えを受け入れてくれた。


 俺もこれ以上家族に迷惑をかけたいとは思わない。家族の幸せの為、妹の為、俺は冷凍される事を決断した。


 そして今日に至る訳だが、実際冷凍されるとなると緊張する。


  これは実際体験してみないと分からない事だと思うが、生きてるまま冷凍されるのだ。


  この気持ちは冷凍マグロなどにしか共感してもらえないかと思うが、冷凍マグロが何を考えてるかは謎である。


  実際には考えてるかもしれないが、自分の意思と関係なく、冷凍されるので恐怖は感じないのかとも思う。


  しかし自分は今から冷凍されると知っている。とても怖いがこれは、家族の幸せの為である。そして自分の為でもある。これ以上、家族が不幸になるのは、自分は耐えられない。


 両親は涙を流していた。妹も、俺の手を握り号泣していた。


  「大丈夫だよ。母さん、父さん今まで育ててくれてありがとう。そしてジュリ、今まで俺の為に自分を犠牲にしてくれてありがとう。これからは自分の幸せの為に生きてくれ。」


  両親、妹は、目に涙を浮かべて何か言いたい様だったが、言葉が詰まって

 ひたすら涙を流していた。


  そしてカプセルに入れられた俺は家族の泣き顔を見ながら一瞬にして冷凍された。

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