春遠からじ

かめかめ

春遠からじ

北の国では雪が降り、天気予報に雪だるま。

南の国では陽が照って、西の国ではあゆの風吹く。


いつのまに、こんなに夕日が伸びただろう。

畳の上をどこまでも、夕焼けだけが伸びていく。


温かい日と思っても、すぐにはコートをしまえずに。

雪の日は持たずにいたが、そろそろ傘もさすだろう。


くしゃみをしたら、マスクはいるかと母が問う。

風邪ではないよと答えると、花粉のためだと押し付ける。


高かった暖房代も頭打ち、あとは野となれ山となれ。

野には土筆や蕗の薹。山には見知らぬ茸も生えて。


食卓に緑をかさね、花を活け。

夜ふかしの供に日本酒の、熱燗も今日、ぬる燗になる。


いつからか、こんなに夕日が伸びただろう。

ごろりと畳に寝そべって、手を伸ばしても掴めない。

 春はすぐそこ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る