世界の片隅にも居場所のない私

黒江七右衛門

第1話 お金がない。

「お金がない」


 そう言われて、私の「仕事」と言う居場所が無くなることになりました。

 この職場に契約社員として就職して一年。ようやく仕事や職場の人間関係にも慣れ始めたのに「お金がない」と言われて、もう直ぐ私は無職になります。

「その仕事を選んだオマエが悪い」

「なぜ正社員を目指さなかったんだ」

そうですね。そう思われるのはごもっともです。

 ただの言い訳ですが、私なりに転職活動を頑張ったのです。

 ですが、ハローワークに相談すれば「ここは資格が必須だよ」「ここは経験者を募集してるから無理そうだね」と言われ。ようやく見つけた未経験者募集の求人に応募すれば、書類で落とされ、そのうち貯金も少なくり、契約社員でもいい。ちゃんとお給料さえ貰えればそれでいいと思い、気が付けばその繰り返し。幾多の会社の契約社員を経験し、気が付けば職歴は、あっと言う間に5社を軽く超えてしまいました。


 正直言って、底辺です。底辺女子です。(もう三十を超えましたから、女子というのもアレですが)


未婚彼氏ナシのアラサーもう直ぐ無職


終わっている。

私の人生終わっている。

死んでしまった方が世のため人のためになるのではないか。


 そんなことを考えながら、野を越え山を越え川を越え。ド田舎の無駄に広い車線を時速30キロでトロトロ車を運転したりもしました。

 前に話したと思いますが私はド田舎に住んでいるのです。見渡す限り田んぼ、ではありません。私の住むド田舎は田んぼより先に山です。山に囲まれているのです。

 鉄道なんてありません。バスだって、朝と夜の二本。それだって通勤に使えません。だって、行きのバスはあっても帰りのバスはないのですから。

 だから、運転免許は必須。自家用車は一人一台は持っていなければ生活なんてできません。実家に住んでいますから、家賃光熱費はかかりませんが、その代わり車の維持費はかかります。

 もう直ぐ無職になるのに、車の税金を払わなければなりません。保険料を払わなければなりません。しかも、今年は車検もしないといけなのでその費用もかかります。

 正直言って本当にお金がありません。

 転職サイトなどを見て良さそうな求人に応募すれば、即日メールで不合格の通知。スカウトされる求人は派遣ばかりです。

 違う、私は正社員として働きたい。正社員として長く働きたい。正社員として胸を張って生きていきたい。それだけなんですけどね。

 涙なんて出ません。正直言って、雇用切りを言われた日も会議室から出たら普通に仕事をしました。正社員の人と世間話をして笑いもしました。その日の夜は眠れなかったけど、次の日も普通に仕事に行き、普通に仕事をして帰宅しました。


だけど、やっぱり心は傷ついているのです。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る