第25話

「んん……ここは?」


 見慣れない天井だ。漠然とした不安が、身体の痛みと一緒に襲ってくる。特に後頭部が痛い。どこかで頭を打ったのか、前後の記憶を探るが、特に思い出せない。


「おお、雄二。起きたか。オレが判るか?」


「判るよ。壱河賢一。僕の親友でしょ」


 僕が高校に入学して初めてできた友だち。もちろん、賢一以外にも友だちは居るけど、学校以外で過ごす以外の時間が濃密なのは、男子では賢一くらいだ。


「よかった……ここに来てから1時間は眠っていたから心配したんだぞ」


「1時間も? というか、ここってどこなの? 賢一の家ではないだろうけど」


 フローリングではなく畳張りで、僕が寝ている寝具もベッドではなく布団だ。明らかに和のテイストで、ドアの代わりに襖が部屋を仕切っているように見える。


「おま、それも忘れてしまったのか……これはひどい。記憶障害ってやつか?」


 どうやら、その可能性のほうが高いらしい。僕はどこかで頭を打って、それに至るまでの記憶をなくしてしまった。思い出そうにも、思い出せなくてもどかしい。


「まあ、最初から説明するとだな……オレたちは三沢の提案で、学校を休んだ五反田に今日のぶんのプリントやら宿題を届けに来たんだ」


「……そう言われたら、そんな気もしてきたよ。うん、だんだん思い出してきたかも。確か門の前で困っていたら、使用人の廿六木さんが来て家に入れてくれたんだよね」


「そうそう、それでまあ、いまに至るって訳だよ」


 廿六木さんに家のなかへ通してもらって、そこから現在までの記憶はない。でもここが五反田さんの家のなかだということが分かって、不安が少しだけ消えた。

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