第23話

 呼吸が荒くなって、徐々にお腹の奥に、切なさを感じるようになってきた。この状態はとても危ない。ゆきとは友だちという関係を超えてしまうかもしれない。


「……ギブアップかしら? あたしがやられたのと同じくらいの時間が経ったから、これくらいで観念してあげるわ。やり返しとはいえ、悪かったわね」


「え、あの……」


「どうしたの、なつ。そんな媚びるような目をして。もしかして、発情しちゃった?」


「うう、ゆきのせいだよぅ。もう、わたし……我慢できないよぅ」


 自分でも何を言っているのか分からなかった。理性と本能のはざまで、わたしは戦っていた。友だちと一線を越えるのは良くない。でも、切なくてたまらない。


「ええと、本当に発情しちゃったの? やりすぎちゃったわね、ごめんなさい」


「謝るのはいいから早く何とかしてよっ! ゆきだって、本当は続きがしたいんじゃないの? ゆきのときも果てる途中でやめちゃったしさ……ね?」


 少し前のことを思い出す。ゆきのを弄んだときは、彼女の一喝でやめてしまったけど、未だにゆきも頬が赤いみたいだし、可能性は充分ある。


「小悪魔の誘惑ね……確かに物足りなさは感じたけれど、あたしたちは友だち同士で、それに女の子同士なのよ。一線を越えたら、もう戻れないわよ?」


 友だちからその先へ。しかも、男の子ではなく女の子と踏み越える。これは許されることなのだろうか。これがもし仮に、雄二へのいたずらだとしたら、前回と同じで後悔するかもしれない。それでも目の前には、未体験の快楽がある。


「大丈夫だよぅ。あくまで、わたしたちは自分を満たすだけ。それ以外は普通に友だちとして接すればいいんだよっ。そうすれば、気持ちも楽でしょう?」


 残念なことだけど、理性は本能には勝てない。これがもしかしたら、あの有名な本能時の変なのかもしれない。本能は、理性程度でどうにかできるものでもないみたい。

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