第13話

「お嬢さま……これはいったい、何を?」


「あっ、廿六木さん……あの、これは、えっと」


「お嬢さまもお年頃でしたよね。気付かずにすみませんでした」


「ち、違うの! これはいわゆるトラブルってやつで! 決してあたしが欲求不満で彼を襲ったとかそういう訳ではなくて、ええとその――」


 廿六木さんが何かを悟ったように、クールな笑みを浮かべて五反田のほうを見つめている。そのいっぽうで、五反田は必至に誤解を解こうと弁明している。


 何を隠そう、彼女は雄二に覆い被さっている体勢をしていて、しかも下着姿だから余計に怪しい。


「うう、ゆき……すごくえっちだよぅ。まさか雄二を襲うなんて、ね」


 まったく関係ないが、三沢は三沢で頬を赤らめ、何やら言っている。目を背けたくなるような阿鼻叫喚、カオスティックな光景がそこにある。


「お嬢さま、落ち着いてください。こういった衝動は人間なら、おそらく誰にでもあるものです。恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ!」


「だからそうじゃなくって! 転んじゃっただけなの! 転んだ先にたまたま弐宮くんが居ただけで、あたしと彼には何もないの‼︎」


「今度は雄二がゆきに寝取られてるよぅ。えへへ……やっぱり悲しいけど、ちょっぴり興奮しちゃうなあ」


 冷静に諭そうとする廿六木さんに、気が動転したままの五反田、それから恍惚とした笑みを浮かべて不気味に佇む三沢。


 なんだこれ。何と表現すればいいのか分からないけど、帰りたくなった。

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