第74話 冒険者ギルド


 翌日。


 ジェニーたちはキノコ狩りへ向かい、俺、マリン、ミカは、初心者ギルドに用事があるため、ギルドへと向かった。


 出かける際、朝倉と家を出るタイミングが被ったのだが、朝倉は俺に「おはよう」とだけ言ってどこかへと歩いて行った。

 正直、俺は朝倉が苦手なのでがっつり話しかけられたらどうしようかと思っていたが、そんなことはなかったので少しホッとした。


 それと、朝倉のそばにパートナーの姿はやはりなかった。

 朝倉の初のアリーナ戦は、俺がアリーナで戦う一週間前に行われたのだが、オルガから聴いた話によれば試合開始早々に降参を告げたそうだ。この話を聴いて俺は心底呆れたもんだ。

 とにかく、アイツとは関わりたくないね。うん。



 初心者ギルドでは、三人の身分証明書の更新が行われた。引っ越したから住所変更の手続きと、ミカが俺のパートナーに変わったことの記載だ。加えて、初心者サポートが終わったことで、今後支払わなければならない税金の項目や支払い方法などについて説明された。説明されたのだが……うん、後でもらった書類百回ぐらい読もう。


 んで、ここでちょっとした問題が起きる。

 初心者ギルドから冒険者ギルドに移籍するように言われたのだ。なんでも、アリーナで勝利を収めた場合、そいつは初心者ギルドでは受け付けてもらえなくなるらしい。で、これの何が問題かというと、キノコ狩りバイトができなくなってしまうことだ。10月もあのバイトを続けて、そこにマリンの給料をプラスすれば、次のアリーナの辞退料を払えるはず予定だったのに。


 俺は未だに自分のチート能力の正体がハッキリしてない状態だ。そんなヤツを雇ってくれる仕事場が冒険者ギルドですぐに見つかるかどうか。


 何度か交渉を試みてみたものの「決まりですので」の一点張りで聞き入れてはもらえず、仕方なしに、俺たちは冒険者ギルドへと向かった。



 冒険者ギルド、これがもう遠いところにあるのなんの。初心者ギルドから約三時間歩いてようやく着いた。次来るときは馬車に乗ろうと誓ったね。


 初心者ギルドは主に街の外側にいくつか点在しているのだが、冒険者ギルドは東区のど真ん中に一軒しかない。それは西区や北区など他の区も同じらしい。

 魔法ギルドや生産ギルドだって複数あるのに、不便だ。

 その代わりにとでもいうのか、冒険者ギルドの建物は初心者ギルドと比べて立派な外観で、三階建のレンガ造りの建物だ。北区から流れる大きなの川の中にある島の上に建てられており、ギルドに行くためには木材でできたアーチ状の橋を渡る必要がある。


 冒険者ギルドで登録手続きを済ませた俺たちは、馬車に乗って家まで帰った。



 ふー、今日は歩き疲れたな。


 でも、今夜はマリンの唐揚げだ。あれを食えば即元気になれる。



 誰か雇ってくんないかなぁ。

 アリーナで戦うのはもう御免だ。痛いし死にかけるし、何よりもマリンとミカに嫌な思いをさせたくない。


 明日から自分の足でも探してみよう。

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