今夜は一緒に
流々(るる)
Are you gonna stay the night?
「ただいまー」
誰もいない部屋に向かって声を掛け、誰もいない部屋の明かりをつける。
――あれ……?なんか……
東京の大学に進学し、一人暮らしを始めて二年。今では習慣となってしまったけれど、そもそもは寂しさを紛らすためにやってみたのが始まりだった。
だから、先週の連休に地元で就職した親友二人が遊びに来てくれた時はうれしかった。この狭い部屋に女三人で
つい愚痴ってしまったけれど、「あんたはあたしたちの憧れなんだから」と、三人で行った居酒屋帰りにゲーセンで取った人形をくれた。
「この娘、金髪だから日本語が分からなくて、きっと寂しがってるよ。二人で仲良くしな」って。
――なんか……違う……
めんどくさいけれど、シャワー浴びるか。
サークルのメンバーと飲んできたので帰りが遅くなってしまった。このまま寝ちゃいたいところだけれど、クレンジングしないと明日の朝がヤバいことになる。
熱いシャワーを浴びていると、眠気も覚めてすっきりしてきた。さっきのクラブで掛かっていた曲のリフが耳に残っていて、思わずハミングしてしまう。
三年ぐらい前に流行ったらしいけれど、その頃はEDMなんてほとんど聞いてなかったから、曲名も分からない。でも、いい曲だ。明日、先輩に曲名を教えてもらおう。
――誰か……いる……?
このマンションは女性単身者専用。セキュリティもしっかりしているけれど、何と言っても管理人のおばちゃんがスゴイ。
「私は親御さんからあなたたちを預かっているんだから!」が口癖で、エントランスのカウンター越しにいつも見張っている(もちろん勤務時間中のみだけれど)。友達はもちろん、恋人だと言われても男性をオートロックの中へは入れないらしい。
ちょっとウザいけれどいい人だし、正直、おばちゃんがいてくれると安心だ。
――見られて……いる……誰に?
やっぱり、なんか変だ。
いつもと空気が違う気がする。
部屋に帰ってきた時からずっと、
誰かがいるはずない。こんな狭い部屋、隠れるところなんてないもの。
誰かに見られているはずない。玄関ドアもカーテンも締まってるし。
もう寝よう。早く寝ちゃおう。
なかなか寝付けなかったけれど、やっとウトウトしかけた……その時。
誰かが――いる。
枕元に誰かがいる気配が、はっきりと伝わってくる。
見られている。
誰かが私をじっと見下ろしている。
こわい。
けれど……
こわい。
ダメ、目を開けては。警戒音が頭の中に鳴り響く。
けれど……
ダメ、目を開けては。
けれど。けれど、けれど……
目を閉じたままでいるなんて、耐えられない。
そう、きっと目を開けたら、気のせいだってわかるはず。
けれど……もし……
ダメ、目を開けては。
けれど、もう耐えられない。
勇気を振り絞って、目を開けてみる。
金髪の人形が私を見つめて言った。
「Are you g
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