第17話 作業補助

「あのプチプチを切るのでしたらやりましょうか。熱線魔法なら得意ですから」


「いえ、さすがにこれは学生会の作業ですしちょっと申し訳ないかなと……」

 そういう綱島先輩の背後からあの大きい白人男性の先輩が。

「お願いしマス。カット出来れば後は青葉サンの魔法で大丈夫デス」

 あっさりそう頼まれてしまう。


 そして。

「青葉サン、この人が魔法でカット出来るそうデス。指示おねがいしマス」

 一気に話が進んでいく。 

「ごめんなさい。ではお願い。こっち」

 という訳で私は奥へ。


「この型紙の通りにプチプチを切ればいいんだけれど、私の炎魔法だと範囲が広くなりすぎて焼けちゃうの。だからお願いしたいんだけれど大丈夫」


「やってみます」

 出来る自信はある。

 受験のための魔力操作の訓練。

 ノートの紙を熱線で1枚だけ切る練習を何度もやった。

 教えてくれる先生等がいないからそんな1人で出来る訓練しか出来なかった。

 でもその経験が役に立ちそう。


 とりあえずプチプチのロールを伸ばし、その上に台紙を置く。

 そして台紙を焼かないよう、台紙の輪郭を意識して熱線放射。

 台紙を取ると措定通り、台紙の形に切れている。


「大丈夫です」

「ありがとう助かる。じゃあそれをあと49枚、全部で50枚お願い」

 いきなり、なかなか結構な量だ。

 でも大丈夫、それくらいなら魔力も持つ自信がある。


 最初は1枚ずつ台紙を置いてカットしていたが、だんだん手間になってきた。

 台紙は左右対称なのでひっくり返しても大丈夫。

 ならばという事で2枚重ねでやってみる。

 おもり代わりの板を端に置いてやれば大丈夫だ。

 調子に乗って今度は3枚重ね、4枚重ねと……


 やっている途中で気づく。

 そろそろ50枚になっているんじゃないか。

 数えてみたら49枚だった。

 危ない、余分に作ってしまうところだった。

 最後の1枚をゆっくり切りだして、完了だ。


 その間に青葉サンと呼ばれていた先輩は、

  ① 私がカットしたプチプチの上にパソコンとACアダプタを置き

  ② 更に上に説明書や保証書等の紙やCD等を置いて

  ③ プチプチをたたみ、熱でプチプチを密着させる

という手順で梱包作業をやっていた。

 こう書くと面倒なようだが、実際はほぼ魔法で全自動でやっている。

 どうやらカット以外の工程は魔法で出来るようだ。


「この梱包作業そのものは工作魔法で出来るんだけれどね。あまり工作魔法が得意じゃないからカットとか接着には自分の炎魔法を使っていたの。でも私の炎魔法はどうしてもあまり範囲を絞れないからカットに手間取っていた訳」


 一方男性3人は後から来た10台のパソコンに何やら魔法をかけている。

「あれはロビー先輩が筐体や外装の修理再生をやって、朗人がそれ以外の内部メカの修理再生して、最後に典明がハードディスクの記録状態がマスターと同一になるよう複写しているの。同じ工作魔法でもそれぞれの得意分野があるからああやって分業している訳」


 傷ついたり日焼けしていたりする外装が新品同様になっていく。

 見ていて不思議で面白い。

 確かにこんな魔法があったら中古再生品でも新品同様に使える訳だ。

 パソコンはまあ、旧型は性能上の問題とかもあるのかもしれないけれど。


「エイダ、留学生会に連絡頼むデス。あと10分で台数揃うデス」

 どうもこの大きい白人の先輩がこの場の司令塔のようだ。

 ロビー先輩って呼ばれていたかな。

「わかりました」

 パソコンに向かっていたエイダ先輩がスマホを取る。


 綱島先輩がやってきた。

「ごめんなさい、でもありがとう。おかげで助かったわ」

「いえ、大した事はしていませんし」


 その後からまたもロビー先輩が付け加える。

「もう授業が始まったデスから出来るだけ早く渡したかったデス。留学生会なら寮にいる学生に直接渡せるから今日中に間に合うデス」

 なるほどなあ。

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