第3章-14 自室で暇つぶしってネットと本が無かったら無理だよね
車という密室でランをふたりっきり。しっかり朝食を取ってもお腹がすいてくる頃、やっと本部に戻れた。その間、最初の30分は俺もランも気を使って話を振りあったが、直ぐにネタは尽き、残りの3時間以上を息苦しい空間で過ごした。テレビ付きのナビが欲しい。
「じゃあリロとシオン探してご飯食べに行こうか」
ランはリロとシオンを探しに行ったので、俺は美鈴さん達を探しに行こう。まぁ美波さんはいつも食堂の裏で仕込みをしているから簡単に探せるし、美鈴さんも美波さんに聞けばすぐに見つかるだろう。
「ランちゃん久しぶりー。ユウくんも久しぶり」
美鈴さんはランに会えて上機嫌だ。この6人でご飯を食べるのは2回目、前回は医者を呼ぶ羽目になった。あまりいい記憶ではない。
「で、なんで帰ってきたの?なにか失敗した?」
美鈴さんは心配してくれてるのだ。決して煽っているわけではない、と思う……多分。
ゆっくり食事をしながら話を進める。
「その病気の子って確認した?」
「え、いや。見てない、ですけど?」
「うーん……。迅さんより先に、高木君にも声をかけてみな。あのリロちゃんを診てくれたお医者さんね」
確かに、娘さんの存在の有無くらいは確認すべきだった。病名とかも聞いておけばよかった。
「じゃあ俺は高木さんと迅さんのところ行ってくるから、ランは適当にブラブラしてて」
久しぶりの姉妹水入らずの時間を邪魔したら悪いし。俺と美鈴さんが一応真面目な話してるから喋りにくそうにしてた。そういえばリロもシオンも少しふっくらしたかな。
「いらっしゃい。症状は何かな?」
相変わらずアルコール臭い部屋に、高木さんだけじゃなくて看護師っぽい人もいる。作業してて年齢も分からなかった。
「高木さん、お久しぶりです。少し相談がありまして、えっと……。今お時間大丈夫ですか?」
今鉱山で働いてること、トーゴという元鉱山長が大金を着服していたこと、そのお金は娘の薬代に使われていたこと、今も月に金貨120枚が必要なこと伝えた。
「月に120枚の薬って聞いたことがないですね。抗がん剤じゃあるまい」
30日分って事は1日で金貨4枚か。確かに高い。
「エルフの秘薬と言ってました。病名も効果も聞き忘れてしまって」
「じゃあ僕も鉱山に行きましょう。エルフの秘薬も気になりますしね」
そうか、高木さんなら延命じゃなくて治療ができるかもしれない。
「迅さんへの挨拶が終わってから1時間くらい待っててください。準備がありますので。」
「わかりました。よろしくお願いします」
その足で迅さんの部屋に赴く。白衣で外を出歩くものなんだ。
迅さんは珍しく1人で部屋にいた。簡単な挨拶をして高木さんと同じ説明をし、高木さんも鉱山へ行く旨を伝えた。
「高木君、君がいなくて病院はまわるのか?」
「基本的には大丈夫でしょう。ナースの湯口さんに任せるつもりです」
「わかった。が、3日以内に帰ってこい」
割とあっさり了解してくれた。現在唯一の医者が離れるリスクで断らないまでも渋ると思ってたが。
「それと金貨1000枚以内で全てを解決しろ。できなければ、そのトーゴを切れ」
8ヶ月くれるってことか。迅さんにしては優しい。
高木さんが俺を見るのでokの意味で頷く。
「わかりました。今日、鉱山へ行き治療方針を決めてきます。あと、エルフの秘薬については病院として研究させてもらいます」
つまりはエルフの秘薬にかかる費用は別の財布ということか。研究に秘薬を買うとすると最大で8個しか買えない。迅さんはこれも考えての1000枚か。高木さんが牽制してくれて助かった。俺が気がつくべきだった。
「いいだろう。エルフとの繋がりはまだない。できれば直接的な関係を結んできてほしい」
つまりトーゴを介さず、俺もしくは高木さんがエルフと仲良くなって来いと。排他的で有名なエルフとお近づきになるのは難しいだろう。
「トーゴと相談しつつ接触を試みてみます。ただ、もし関係が悪化した際に秘薬を手に入れることができなくなる可能性があるので、治療が済み次第のアプローチになります」
つまりは治療が失敗したらコンタクトとってやんないぞ、少しくらい協力しろよって事。高木さんばっかりに頼ってはいけない。
「ふっ、いいだろう。まぁ頑張ってくれ」
「では、1時間後に向かいましょう。救急車で行くので、荷物の一部をユウさんが運んでくれませんか」
荷物を運ぶくらい何でもない、もちろんイエスだ。それよりも救急車があることに驚きだ。
これから忙しくなりそうだ。鉱山もやっと稼働し始めたばっかりだし、トーゴの娘さんのこともある。できればエルフとお近づきにもなりたい。あーあ、のんびり暮らしたい。ゲームしたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます