第3章-10 鉱山3日目、仕事っぽいことをやってみる
朝、目を覚まし、いつものように服ごと全身に浄化をかけて気が付く。
部屋に見慣れた美少女がいる。
「おはようございます」
眠気は一瞬で吹き飛んだ。
「お、おはよう。なんでここにいるの」
この宿、鍵無いもんな。3階ごと借りてるからまだ安心して寝れるけど。
「昨日の仕事の続きをする許可を頂きたくて」
そのためだけに朝から部屋に居たのか。ていうか丁寧な対応をするために、朝に聞きに来たんだと思うけど、寝てる時に部屋にいるのはバッドマナーだろ。心臓に悪い。
寝顔を勝手に見られるのって恥ずかしい。
「気になってたのか。続きは労働者にやってもらってもいいよ」
なんかやりたそうだし「労働者にやれせる」とは言えなかった。
「いえ、私が残した仕事なので」
なんで少しくらい楽しようとか考えないのかなぁ。昨日は手がぼろぼろになってたのに。
「わかった、今から行きたいんだよね。俺もついてくわ。着替えるからちょっと待ってて」
着替えると言っても姉は部屋から出る気配がない。この世界で下着や肌着を着ている人は極少数で、下着を着ていれば見られても問題がないという風潮がある。貴族も下着だけは自分で着替えるらしい。
姉に見られながら着替えをする。この世界で2ヶ月を過ごし体も引き締まってきたので見られても平気だ。少し、ほんの少しだけどマッチョが体を見せたがるのがわかってきた。
ぱぱっと着替えて財布をポッケに入れて山に向かう。まだ外は薄くらい。途中で開店準備中の屋台に声をかけてサンドイッチもどきを売ってもらった。姉にも無理やり食わせる。
姉が加工した名札はほぼ出来上がっていた。手のひら大の木片が200枚弱袋に入れてある。実は家具職人の才能でもあるんじゃないか。
「すごいね。こんなにできたのか。後どれくらいかかる」
「あと30個ほどなので朝食までには出来ると思います」
一時間で30個くらいか。木を倒すところから始めてそんなスピードでできるのか。なにかコツがあるのかな、ちょっと教えてもらお。
「じゃあ俺も手伝うからやり方教えてよ」
コツはあった。肉体強化をつかったゴリ押しだ。
太さが人間くらいの木を切り倒すのに斧で5発。切るより叩き折るに近い。
出来た丸太はノコギリで薄切りに。薄切りにした木材は斧で無理やり手のひら大にカット。
こんなの華奢な女の子のやることではない。筋肉ダルマがやることだ。見せてもらったときはドン引きした。そして真似たら俺でも出来たことにもびっくりした。肉体強化、優秀すぎる。
今日の朝食は雑炊だ。ここ2日のBBQで残った食材をぶっ込んだ雑なものだが、野菜も肉もたくさん入っているので美味しい。
「食べながら聞いてくれ。今日から仕事を開始するわけだが今日は採掘は行わない。まずは名札と名簿の作成をする」
名簿はナルが全部やる。トーゴもナルに押し付けた。
護衛のやることは無いので昼まで休みにしてもらった。
先に前職が建築関係の人を集めたが3人しかいなかった。大工は1人。あとは下働きが2人。全員犯罪奴隷だ。こわい。
残りの人は建物の大規模な掃除だ。すみずみまでキレイに、とお願いしたのでしっかりやるだろう。ジガンを中心にやるようにお願いした。
「この建物に部屋を増やしたいんだけど増築ってできる」
せめて男女別。できれば数人で1部屋くらいは割り当てたい。他にも病室は作らないといけない。この希望を伝える。
「無理だな。男女別なら板を張るだけだが、部屋をたくさん作るとなるとそう簡単にはいかねぇ。増築するくらいなら新しく作ったほうが早い」
答えてくれたのは大工。この3人のリーダーにした。犯罪内容は殺人。
目の前に殺人経験がある人がいるのはすごく怖いが、舐められたらいけない。
「んーじゃあ小屋って作れるか。けが人の病室にしたいんだけど」
「サイズやどこまでちゃんと作るかによるが、材料費は金貨で何十枚だぞ。山で取るにしても限度がある。材料費0とは考えないでくれ」
山から調達することは考えてなかった。労働者に林業やってた人、なんていないよなぁ。今回はいいか。金でなんとかしよう。
「じゃあ小屋を建ててもらおうかな」
地面に直接実物大の見取り図を書いていく。
医者予定のおばさん(名札にはマイヤと書いてある)もガンガン要求をしてくる。
40人が寝れる環境でキッチン、トイレを要求された。
「結構豪勢になりそうだな」
大工は顔をピクピクさせてる。仕事大変そう。
「時間かかってもいいから頑張って。人手が足りないなら言ってくれたら、何人か使えるようにするからさ。お金は。できれば金貨50枚くらいで」
俺も苦笑いになってる。
「80枚以下なら山から持ってくる必要があるぞ」
財布の中身厳しいな。
「わかった。80枚、足りないならもう少しくらい出す。その代わり丁寧に作ってくれ。スピードよりも丁寧さを重要視してる」
安物買いの銭失いにならないように釘を刺す。大工達も結構張り切ってるから多分真面目に仕事してくれる。採掘よりも好きな仕事なんだろう。
男女別にするのはカーテンで区切ろう。どうせ女は30人くらいだし。
財布の中は残り25枚。本格的にやばい。
掃除班は1時間位で終了の報告を得た。流石に200人で掃除したら1時間でキレイになるようだ。
次に命じたのは採掘道具の整備。ボロボロのつるはし使ってたし整備してくれ。まぁこれも一瞬で終わりそうだなぁ。
ここまで姉はずっと俺の後ろで静かにしてる。もう少し静かについてきてね。
「ユウ様、名札と名簿は完了したにゃ。男女別、前職別にまとめといたにゃ」
もう、ナル最高。理想の部下。
「お疲れ様。ほんと、ありがとう」
医療系がばあさん入れて2人。建築系が3人。鍛冶屋が2人。飲食系が5人。残りのほとんどが農民だ。すぐに仕事を割り振るのはこのへんか。
「どう、人事やってみる」
ナルのが顔が広いだろう。多分。
「一人では厳しいと思うにゃ。でもやれなくはないと思うにゃ」
ナルなら出来ると思う。まぁ一緒にやろうか。
姉はどうしようか。もう少し暇してもらうか。
怪我をしてる人を除いてぴったり200人が働いている。女と15歳以下の子供は鉱山に潜らない方向で、前職も考慮しつつ配属を考える。これが結構大変。手を抜いてもいいけど生産性に直結する。たぶん。
細かく全員分の配属先を決め切った。とにかくつかれた。
途中で道具の整備を終えた、と帰ってきたが邪魔だったので全員を小屋作りに行かせた。あっちも邪魔に思ってるだろう。
ランに食堂配属の7人を呼んできてもらう。
「君たちは今後食堂で働いてもらう。全員分の食事を調理すること。食材の買い物や食器類を洗うことも仕事のうちになる」
この7人は前職がシェフである人を除いては女性と子供で構成してる。採掘よりは安全だろう。
他にも女性は採掘以外の仕事を割り当てている。ごりごりの男女差別。
「基本は1日3食で1食金貨2枚でなんとかして。とりあえず今日の昼やってみて」
金貨5枚を姉に渡してついて行かせる。姉は簡単な計算はできるらしいので騙されることはないだろう。
やべぇ。今日やりたいこと全部おわった。できればそろそろ鉱山に入ってもらいたいけど採掘しないって言っちゃったしなぁ。どうしようか。
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