第2話  花の種

親から花の種を貰いました

何のヘンテンツもない、一粒の小さな種です


でも何の花の種なのか、どんな花が咲くのか親は教えてくれず、私自身も良く分かっていませんでした


花なら咲けば綺麗に決まっていると、勝手に思っていたのです


早速自分の庭に撒きました

花が咲いたときに、誰よりも早く自分が観賞出来るからです


暫くして芽がでてきました

それでもまだ何の花かは分かりません

植物の芽はどれも似たり寄ったりなのです


やがて葉も茎も伸び、スクスクと成長していきました

きっと大きな花が咲くだろうと、自然と期待は膨らみます

そのためには努力を惜しみません

水やりや雑草取りや害虫駆除など、できることから始めます


これからを楽しみにしていたところ、梅雨の長雨に祟られてしまいました

その後に大型の台風も直撃します

台風の後は連日の猛暑日


それまで順調に育っていた花の種は、これらの悪条件にも健気に耐えていました

しかし連日の猛暑日は、花の種の忍耐を遂に越えてしまったのです


ある朝見てみると、葉も茎も萎れていました


花の種を植えれば芽が出る、葉も茎も伸びる、そして花が咲く

それは規定路線であり、私はそう信じて疑いませんでした


それなのに……


どんなに努力しても、花は咲かないこともあるという現実を初めて知ったのです


でも私は悲しくはありませんでした


親から貰った花の種を咲かすことができずに、只ひたすら申し訳なく思うだけです

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