幼なじみと2人して神社に向かうこのシチュエーション、見る人が見たら羨んだりするんだろうか
「1人500円です」
「学割とかありませんか?」
「ごめんね。財政課からきつく言われてて、おまけとか無しなんだ」
「こちらこそすみません。2人分お願いします」
「ありがとうございます。はい、これ自転車の鍵」
割り勘にしようとしたらユウリは天地がひっくり返ったような表情をしたので僕が払った。まあ、主に僕の用事だからしょうがないけど。
「あー、風が気持ちいーねー」
僕の少し前をユウリの自転車が走る。女子の制服には似合わないランニング専用の濃いブルーのシューズと
「ねえヒロオ。あの標識で合ってる?」
幹線道路に『護国八幡神社』という標識が掲げられている。僕は、うん、と頷き、2人して交差点を左折した。
曲がった後は急激に道路の質が落ちる。車がようやくすれ違える程度の狭い道で、何年も補修をしていないであろうアスファルトは隆起や凹みでガタガタだ。この市の観光スポットにも指定されているのに。でもユウリは意外な反応をする。
「いいねー。いかにも異世界へ行くって雰囲気だねー」
「・・・神社は異世界じゃないよ」
「でも、神聖なパワースポットなんでしょ?」
「確かに神聖な場所だけど、もっと身近な存在だよ、神様って。あんな異世界モノみたいな現実の生活と断絶された世界じゃないよ」
「ヒロオ。みんな現実逃避したいんだよ。引きこもったり仕事しなかったりってその最たるもんでしょ? 世のニーズも無視できないんだよ」
「なんか、嫌だなあ」
でも確かにこの細いナチュラルな参道に入ってから既に30分は自転車を漕ぎ続けている。『異世界』っていうユウリの説も一理あるかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます