第10話 妖精さん達の日常 その1

 今まで何種類かの妖精さん達を紹介しました。

 この子達が普段どうやって過ごしているか、気になりませんか?


 すっごく気になる? 仕方ありませんね。お教えしましょう。


 先ず、雪の妖精さん。

 この子は、雪が降らないと会う事は出来ません。

 たまに、東京でも雪が降る時は有るでしょ?

 そんな時に外に出ると、玄関の外で私を出待ちしてます。

 ヒューっと飛んできて、私にぴとって張り付きます。

 可愛いでしょ?


 勿論用事がある時は、一緒に遊ぶ事は出来ませんけど、道中は一緒にいます。

 とは言え、電車やバスの中には入って来ません。

 溶けてしまうんでしょうね。

 それと、言わずもがな。往来で妖精さんとお話する時は、念みたいな感じで会話します。

 そうじゃないと、一人でぶつくさ独り言呟いているみたいで、変な子じゃないですか。

 流石に私も、その位わかる様に成長したんですよ。

 えぇ。子供の頃とは違います。


 次にお掃除の妖精さん。

 この子達は、言うまでも無いかもしれませんが、ず~と掃除をしています。

 二十四時間、年中無休。ブラック企業も泣いて逃げ出す仕事量。

 別に私が強制している訳では無いですよ。

 酷い想像は止めて下さい。


 この子達って疲れないのかしら。

 ふと思った私は、お掃除の妖精さん達を観察した事が有ります。

 どうやら、この子達には役割分担らしき物が有るみたいです。

 埃落とし班、床履き班、お風呂班、トイレ班みたいに。

 たまに自分の役割を終えて、横になって寝息を立てているお掃除の妖精さんを見かけます。

 ゆっくり休む事も必要です。人も妖精さんもね。


「あなた達、たまにはお休みしたら?」


 でも面と向かってそんな事言ったら、涙をぽろぽろ零して思いっきり泣くんです。

 返ってすごい罪悪感です。だから仕方なく放置です。

 好きなだけ掃除して、好きな時に休めば良いんだわ。


 因みにお掃除の妖精さんは、掃除機の様な電化製品は使いません。

 使うのは箒とか雑巾とかです。

 なので私が用意したのは、ミニサイズのコンパクト箒セット!

 ホームセンターでせがまれて五つ程買いました。

 卓上用らしいのですが、手のひらサイズの妖精さんは、これで充分みたいです。


 それと私が手縫いした、ミニサイズの雑巾。

 サイズは十センチ角で作りました。

 三十個近く作りましたよ。お掃除の妖精さん達に感謝を込めて。

 手渡しした時の嬉しそうな表情は忘れられません。


 私が居ない時に洗浄液を作り、せっせと掃除をします。

 夜中もお掃除をします。

 私はもう慣れましたけど。

 夜中にごそごそ音がしたら、お掃除の妖精さん達だなと思う様になりましたから。


 因みに定番ことGさん! 

 黒光りする悍ましいあいつは、お掃除の妖精さん達が退治してくれます。

 でも、退治したGさんをゴミ箱にそのまま捨てるのは、やめて欲しいです。

 開けた時にびっくりします。


 さて、次はお料理の妖精さんです。

 お料理して無い時には、何してんの?

 私も不思議に思いました。


 どうらこの子達は、有名洋食店や和食料理店等、様々な店でレシピの研究をしてるみたいです。

 それ以外にも、魚河岸や農家に行って素材の目利き訓練をしている様です。

 TVの料理番組を熱心に見ている子もいます。

 一日の終わりには、皆で集まって情報共有している様です。

 勉強熱心と言うより、プロフェッショナルとはかくあるべきと、教えられている様です。


 道具の手入れも手を抜きません。

 上京の際に両親に持たされた道具を、綺麗に磨き上げます。

 特に包丁は念入りに砥ぎます。


「ごめんね。今度もっと凄い包丁を買ってあげるよ」


 私の言葉に、この子達は首を横に振ります。

 どうやら、両親が買ってくれた包丁に愛着が有る様です。


 この子達は、創作料理にも余念が有りません。

 熱い料理バトルでも繰り広げられているのでしょうか?

 複数の子が、バチバチと火花を散らせながら視線をぶつけ合い、出来上がった料理を持ってくる事が有ります。

 味見役が私で良いんでしょうか。

 私の微妙な表情を読み取って、勝敗が決まる様です。

 凄いですね。料理の腕を競い合って高めているんですよ。

 この熱いノリは見習いたくはありませんけどね。


 次はお勉強の妖精さん。

 この子はひたすら読書かネット検索をしています。


「あのね。勝手に図書館に行ったら駄目よ。読みたい本は私が借りてきてあげる」


 私はこの子に、言い聞かせた事が有ります。

 当たり前じゃないですか。

 夜中にフワフワ浮かぶ本。何の都市伝説ですか!


 そのおかげで私はこの子を連れて、毎週図書館巡りをさせられる羽目になりました。

 難しい専門書から雑学本まで、借りるジャンルは問わない様です。

 但し、借りた本は何度も徹底的に読み返します。

 検討も怠りません。

 古い情報と新しい情報を選り分けて、考察を繰り返している様です。


 ネットの情報も同様に、ちゃんと選別している様です。

 ネットにはあらゆる情報が転がってますから、情報の新旧だけでは無く、正誤も含めて検討し情報収集する姿は、頭が下がる思いです。


 さて、そろそろ四大元素の妖精さんの日常です。

 この子達は、フリーダムです。


 火の妖精さんと水の妖精さんは、大抵鬼ごっこしてます。

 実はこの子達、結構仲良しさんです。

 お風呂にお湯を溜める時は、タッグを組みます。

 お料理の妖精さんのお手伝いをする時も有ります。


 風の妖精さんは家中を飛び回ったり、日向でお昼寝したり自由気ままです。

 私が居ない時は、外にお出かけする事も有るみたいです。

 一見自由に見えて、一番空気の読める妖精さんですから、火と水の妖精さんがヒートアップして、湿気が溜まりかけると、さり気なく湿気を外に逃がしてくれます。


 余り会いに行けない土の妖精さんは、この間思いっきりやさぐれてたので、ホームセンターで大きめのプランターと土を買ってきて、その中に埋めときました。

 プランターは、取りあえずベランダに放置です。

 私だって忙しい時は有るんですよ。公園に遊びに行く暇がない位、時間が無い時もね。

 ベランダに居てくれれば、毎日顔を合わせますから、それで笑顔になってくれるなら、良いんじゃないですか?


 次は氷の妖精さんの出番です。

 この子は、常に冷凍庫の中に居ます。

 冷凍庫の中で踊ってます。

 たまに寝てます。寝てる姿も可愛いです。


「氷作って、お願い」


 お願いすると、デフォルメキャラの氷を作ってくれます。

 飲み物に入れるのが、勿体ない出来栄えです。

 氷作るしか出来ない妖精さんですけど、良いんです。だって可愛いんだもん。


 さあ、今度はお仕事の妖精さん。

 この子が普段何をしているのか。

 私自身、一番疑問な妖精さんです。

 だって、私がアルバイトで困った時にポンと現れる妖精さんですよ。


 この子は、色々な企業や仕事の現場に行って、あらゆる分野のノウハウを研究しているそうです。

 凄いと思いません?

 この子が居れば、人生勝ち組間違いなしですよ。

 そうは言っても、そのノウハウを私が活かせなければ、意味は有りませんけど。


 予防医療の妖精さんは、敢えて言わなくても良いかな。

 だって、大抵私の周りを飛んで、お口をモグモグさせてるんですから。

 不思議要素満載ですが、この子はこれで良いんです。

 おかげで、私も風邪をひかなくなった訳ですし。


 音楽の妖精さんは、お料理の妖精さんに近い日常を送ってる様です。

 CDショップやら、コンサートやら、ライブやら、録音スタジオやら、世界各地を飛び回り、あらゆるジャンルの音楽を吸収して、帰って来ます。

 帰って来たら練習。練習は私の居ない時にこっそりとしている様です。

 それで、私の前でいざ本番!


 健気ですね。でも、演奏を聴いてくれるのが、嬉しいんでしょうね。

 演奏にはなるべく拍手で答える様にしてます。

 その時の笑顔は、やりきったと言うか満足と言うか、とてもいい笑顔をしてくれます。


 これが、今まで紹介した妖精さん達の日常です。

 大抵引き籠っているのが、お掃除、お勉強、火、水、氷の妖精さん。

 ほとんど外出してるのが、お料理、お仕事、土、音楽の妖精さん。

 雪の妖精さんは期間限定なので置いといて、フリーダムな風の妖精さんの行動はいまいち掴めません。予防医療の妖精さんも謎行動が多いですね。


 それぞれの妖精さんは、他の妖精さんの邪魔はしません。

 追いかけっこする火と水の妖精さんは、お勉強の妖精さんの読書を邪魔しません。

 お勉強の妖精さんは、お掃除の妖精さんの邪魔にならない様に読書します。

 ちゃんと、家の中でも住み分けが出来ていますし、協力もし合います。


 賢く可愛い妖精さん達。

 わいわい賑やかな妖精さん達との暮らし、いつかあなたも体験出来るといいですね。

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