第十六話 仮加入


「ん?俺たち宛に手紙が来てる、騎士団からだ」


「なんて書いてあるの?」


 国王様に会った週の土曜日の朝、一通の手紙がきた。そこには騎士団への仮加入の説明と加入書があった。



1.騎士団として、高校生としての仕事をする。

2.日曜日は騎士訓練に参加することに努力すること。

3.仮ながらも実際に戦場に行くこと。



「てか騎士団って結局なにをするんだ?」


「知らずに手伝うって言ってたの⁉」


「うっ、大体はわかるけど詳しくはわからないだけだ」


「騎士団は魔王討伐に作られた団、今は魔王の幹部を倒すことが目標なのよ」


「どんな風に戦うんだ?」


「どんなって、えっと、人間とモンスターが対立して並んで同時にわぁ~ってぶつかり合う」


「そういう感じか」


 結構怖そうだな。


「ここにサインすればいいのね」


 俺たちは規約をしっかり見てサインを書いて手紙を外に投げた。この手紙の紙は魔力が流れていて外に投げると自動的に届くようになっている。


「さぁこれで今日から騎士団の仲間入りだな」


「うん!」


「訓練は明日だし今日はこの一週間の疲れをとるか」


「国王様に会って学校休んだ次の日アルト問答無用でヘルサ先生にしばかれてたもんね」


「そうそう、いい先生だけど鬼教官だよな」


 ここ最近でやっと体を休めれる日だ。俺とルイナはソファーに座ってくつろぐ。


「はぁ~、体を休めるのはいいけど暇だな」


「そうね~、どーする~?酒でも飲む?」


「朝からかよ」


「そうよね~、ならアルトの耳でも引っ張ろうかしら」


「いてててて、どうしてそうなるんだ」


「あははは、楽しいからに決まってるじゃない」


 そういえばルイナとこうやってじゃれ合うの久しぶりだな。夏休みは一日中話してたけど、学校では昼飯のとき以外会わないしな。まぁ学校以外は朝から夜までほぼ一緒なわけだが。


「ルイナってさ、好きな人いるの?」


 ふと思ったことを口に出した。


「ふぇえ⁉い、いきなりどうしたの」


「ちょっと気になってさ」


「いいいいないわよ!」


 いつ見てもルイナが動揺するのも面白いな。そして可愛い。って何思ってんだ俺は!


「ふーん」


「そもそも男を好きになったこともないわよ!」


「うわ、可哀そうに」


「なんでよ!」


「恋を知らないなんて」


「し、知ってるわよ恋のことくらい」


「嘘だな、恋を知ってるならそこまで心は乱れたりしないだろ。変に『恋』というものに囚われてるだけだ」


「ぐっ」


 自分でもよくわからないことを言ったがルイナは黙り込んだ。すると俺の腹に手を置いた。


「まさかゼロ距離⁉」


 俺はすぐになんとかかわそうと体を動かすと俺の頭は床にぶつかった。よく見ると足が氷で凍り付いている。ルイナは立ち上がりそのまま手を俺に向ける。


「我を怒らす愚か者よ、全てを凍らす絶対零度の氷に飲み込まれ、華やかに散りゆくがよい!」


 あー詠唱魔法使うってことはそうとうパニクってるな。そんなこと考えてる暇はねぇ!


 俺は足を凍らされこけたときに腰から出て落ちたバリス刀をとって鞘から抜いた。そして抜くと同時に炎属性の魔力を付与した。


零凍氷華れいとうひょうか!」


 ルイナの手から氷が伸びてくる。俺はタイミングを見計らって刀を振った。


 しゅ~と氷が溶ける音が聞こえる。すごい力で押してくる。少しでも刀をずらせば当たってしまうだろう。


「ぐ、うっ」


 ずっとこれが続けば俺が体力を失って当たる。その前にルイナを正気に戻さないと。


「ちょっと怒ったからって本気になるんじゃねぇ~!」


 俺は膝を曲げ詠唱魔法をかわし、そのまま立ち上がると同時にルイナを押し倒した。


 ん?手に柔らかい感触が


「ひぁんっ!」


 手を見るとルイナの胸の上にある。


「うおぉ!そのルイナさん、これはその」


「死ね!」


 俺は顔面を殴られ足が凍ったまま、また頭を床にぶつけた。


「消えろこの変態!クズ!バカ!アホー!」


「ちょ、ちが、ぐっ、あがっ!」


 多分骨折れたわ。

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