第十三話 実戦

 そうして何時間かヘルサ先生から剣術を教えてもらった。


「やっほ~!」


 お弁当箱を持ったルイナがやって来た。


「ふむ、もう昼か。では昼ご飯の時間にしよう」


「やっとですか」


 俺は疲れ切っていた。なにせ一回も休憩を許されなかったからだ。


「あはは、アルトしごかれてるね~」


「お前は気楽でいいな」


「それよりアルト君、君は弁当を持って来てるのか?」


「私がアルトの分も作ってきてます!」


「仲のいいやつらだな」


 そうして俺たちは座って弁当を開けた。


『いただきます』


「ん~、おいしい」


 今までの疲れが癒される。


「感謝しなさい」


「ありがとうな」


「ふふん」


 ルイナは感謝されて機嫌が良さそうだ。


「君たちはどういう関係なのだ?恋人なのか?」


「こいびっ!」


 あーあ、またルイナが暴れるぞ。


「そそそんなわけないじゃないですか!」


「ど、どうしたのだそんなに焦って」


「焦って⁉なに言ってるんですか⁉」


 ルイナは立ち上がって言った。


「ルイナ君の様子が変なのだが」


 ヘルサ先生は小声で俺に話しかける。


「恋愛系のこと言われると頭のネジが外れるんですよ」


「不思議な性格だな。私も恋愛に対しては奥手だがここまでではないぞ。それでどうすれば元に戻るのだ?」


「他の話に変えるんですよ」


「わかった」


「なに二人でこそこそ話してるんですか⁉」


「そ、それよりルイナ君は勉強の方はどんな感じだ?」


「え?もちろんちゃんと出来てますよ」


「魔法の方は?」


 話している間にルイナは座って食べながら会話するようになった。


「まぁ騎士団には入るには色々勉強しないといけないって先生が言ったので頑張ってますよ」


「努力してるな、これなら騎士団に入れそうだ」


「本当ですか⁉やった~!」


 ルイナの調子は完全に戻ったようだ。


「そういえば先生は元騎士団なんですよね」


「そうだが?」


「騎士団に入るにはどうするんですか?」


「20歳以下だとまず上級ジョブになる試験を受けて資格を取る」


「上級ジョブ?」


「大人になってから使えるジョブのことだ。ルイナ君は白魔導師の資格を持っていたな」


「はい」


 なるほど、だからルイナは試験を受けたのか。


「そして騎士団試験を受けて合格する、それだけだ」


「それだけって」


「アルト君も騎士団に入るのか?」


「一応入りたいとは思ってます」


「どういう理由で?」


「えっと、ルイナの手伝い?」


「それはつまり、ルイナ君が騎士団に入ったら一緒に戦うということか?」


「そうなりますね」


「全くよくわからんやつらだ」


「自分でもそう思います」


 俺たちは会話してるうちに弁当を食べ終わった。


「さぁ!剣術勉強の再開しよう」


「うぅ~、またあれをやるのか」


「頑張ってね~」


 そう言ってルイナは教室に戻った。


「今度は実戦で試してみるか」


「実戦⁉」


「ああ、そうだ」


「今の俺にできるんですか?」


「言っただろう君には才能があると」


「言いましたけど」


「最初に剣を合わせたときわかったが君は反射神経もいいし、ちゃんと私を、そして剣を警戒していた。あとは周りの警戒も怠らないことと、相手が予想以外の動きをしても焦らないことだ。それは実戦で身に着けていくのが一番だろう」


 反射神経がいいのはFPSゲームをやっていたからだろうな。


「わ、わかりました」


「ついてこい」


 先生は詠唱魔法を唱えて飛んだ。続いて俺も飛んで先生の後ろについていく。


 そのまま学校を出て、町を出た。町を出ると草原が広がっている。他の町への道もある。


「どこまで行くんです?」


「もうすぐだ」


 少し飛んでいると急に先生が止まった。


「あそこだ」


 先生が指を指した所には小さい洞穴があった。


「あそこはゴブリンの住処だ。君の相手にはちょうどいいだろう」


 そういうと先生は降りた。俺も続いて降りる。


「ゴブリンってどのくらいの大きさなんですか?」


「そうだな、小学5,6年生くらいだろう」


「へー」


「よし、刀を出して魔力を付与しろ」


 言われたとうりにやった。今回も炎属性の魔力を付与した。

 先生は近くにあった小石を洞穴に投げた。

 すると槍を持ったゴブリンが6体出てきた。


『ギィ~!』


「うぉ!」


「私は上で見守っているからな」


「は、はい」


 二体のゴブリンが横に並んで突進してきた。俺もゴブリンに向かって走った。そして槍が俺を刺すギリギリで飛んでゴブリンの後ろに着地し、がら空きの背中に刀を斬りつけると真っ二つに斬れた。そこから炎が舞い上がりゴブリンは消し炭になった。


『ギィ~……⁉』


「よし」


 後ろに来る予感がした。すぐさま後ろを向くとやはりまた2体のゴブリンが突進してきていた。今度は縦に並んでいる。


「無能かと思ったら結構頭使ってくるな」


 これではさっきの戦法は使えない。なら他の戦法を使えばいいだけだ。


 俺は手を前に出しゴブリンの前に土の壁を出した。ゴブリンは見えないが立ち止まってるであろう。


俺はジャンプして壁を飛び越した。ゴブリンが戸惑っているのが見えた。俺は頭が下で足が上にある状態でゴブリンに手を向けて炎魔法を撃った。空中で一回転をして着地した。ゴブリンたちは叫びながら灰となった。


「ふぅ~」


『ギィギィ~!』


 あとの二体が左右から突進してくる。俺は真下に向かって風魔法を撃って体を上に飛ばした。俺がさっきまでいた所にゴブリンがいる。そこに向かって手を向け土魔法を撃ってゴブリンも空中に上げた。

 ゴブリンは何が起こったかわからず混乱している。俺は空中で上がったゴブリンの斬った。このゴブリンたちも叫びながら灰になって散ってゆく。


俺はそのまま詠唱魔法を唱えて、空中に浮いた。


「ふむ、かなりいい戦いだったぞ」


 戦い終えた俺にヘルサ先生が寄って来た。


「結構頭使いましたよ」


「臨機応変に対応出来るのは良いことだ」


「ありがとうございます」


「かなりアクロバットな戦いだったが」


「今の俺にはああするしかなかったんですよ」


 それも夏休みの間にルイナに『魔法剣士になるには体力も筋力もつけないといけないわよ』と言われたので毎日筋トレをしていたが、それだけではなくこの世界に来てから身体能力も上がっている。さらに皮膚も硬くなって、元の世界だと超人と言われそうなことを今では簡単できてしまう。包丁で指を斬ることももうなさそうだ。そもそもこの世界に包丁はないが。


「今日はここまでにしよう」


「疲れた~」


「よくやったな」

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