第十一話 バリス刀


「ぐぁ~疲れた」


「ほら子供相手になると疲れるでしょ」


 俺たちはあのあと夕方になったので子供たちと別れて家に帰る途中だ。


「だって男子4人で風魔法を使って近づけないようにしたりするんだもん」


「あぁ、あれふざけてるんだと思ってた」


「いたって普通だったよ!」


「あははは」


「はぁ~、女子は恋の相談してくるしな~」


「別にいいじゃない」


「だって先生が好きってどーしよーもないだろ」


「そ、そうだけど」


「しかも風魔法で砂を操って遊ぶからみんな顔にめっちゃ砂ついてて、拭いてあげてもすぐまた遊ぶから」


「楽しそうだったけど」


「まぁな、子供と遊ぶのも悪くないな」



 俺たちは家に帰り、ご飯を食べ、風呂に入り、寝る。そして次の日からも公園で魔法の練習をして、時々子供たちと遊ぶ日が続いた。




 そうしてルイナの夏休み最後の日がきた。


「よし、これで基本の4属性魔法はバッチリね」


「疲れたー」


「魔力量も最初少なかったけど結構ついたんじゃない?」


「そりゃ毎日ランニングしててスタミナついたみたいなもんだしな」


「アルト兄ちゃんすごーい」


「私もアルトお兄ちゃんみたいになりたい」


 続いて子供たちみんなが『なりたい』と言う。


「いやいや、みんながなるのは俺じゃなくてルイナのほうだよ」


「私⁉」


「ああ、成績優秀だし教えるの上手いしな」


「そうかもしれないけど、私なんて」


「自身持てって!子供たちもこんなに上手くなったし」


 この夏休みの間、ルイナは子供たちにも時々魔法を教えていた。おかげで子供たちは俺ほどではないが風、水、土魔法はそれなりに出来るようになった。


「そうね、よし!みんな私を見習うのよ!」


『うん!』


 すぐ調子に乗るのは見習われてほしくないがな。


「これからどうする?」


「昼にもなってないわね、うーん。そうね、アルトの剣を買いに行きましょう」


「剣?」


「そうよ、魔法も大体使えるようになったんだから今度は剣術を学ばないとね」


「おぉー、やっとそこまできたか」


「よし、ならさっそく武器屋にレッツゴー!」


「ルイナお姉ちゃんありがとうね、夏休みの間私たちに魔法教えてくれて」


「ふふっ、どういたしまして」


 ルイナは子供たちの頭をなでる。


「早く学校のみんなに会いたいな」


「みんなどんな反応するかな?」


「きっとビックリするだろうな」


「楽しみ!」


 俺も子供たちの頭をなでた。


「じゃ、またな」


「うん、またね」


『またね~』


 俺たちは子供たちに手を振りながら公園を飛んで出た。泣きそうな顔で手を振ってる子もいた。


「二度と会えないわけじゃないのにな」


「でもこれからは毎日会えるわけじゃないからね」


「本当にいい子たちだったな」


「アルトと違ってね」


「お前もだよ」


「『も』ってことは自分がいい子じゃないって認めてるんだぁ~」


「俺が言ったことに否定しないんだぁ~」


「今否定しようと思ってたの!」


「本当かな~?」


「本当よ!」


「必死だな」


 ルイナと口喧嘩をしながら武器屋に向かった。




「いらっしゃーい」


 武器屋の中はものすごい量の武器が並んである。槍や短剣、斧、弓矢、鉄甲などが置いてある。


「すっげ~」


「私魔導士だから武器屋に行ったことないのよね」


 ルイナは店員さんに剣が置いてある場所を聞いた。


「こっちね」


 ルイナについていくと剣が傘立てのように置かれているものが道の両脇にずらりと並んでいる場所にきた。


「ふぉぁ~」


 こういう剣が並んでいるのを見ると俺の厨二心が騒ぎ出す。


「すごい目がキラキラしてるわね」


「そりゃそうだろ!こんなに剣があるんだぞ⁉」


「ど、どうしたの、怖いわよ」


「あ、ごめんな、ちょっと気持ちが高ぶっちゃって」


 自分の気持ちを収めて剣を歩きながら見てみた。


「ん~」


「どういうのがいいの?」


「日本刀ってわかる?」


「にほん刀?」


「やっぱりわかんないか、えっと刃が片方しかなくてちょっと反ってるやつなんだけど」


「バリス刀のことかしら」


 そういってルイナはどこかにいき、あるものを持って戻ってきた。


「これ?」


 それは日本刀とほぼ同じ刀だった。


「それそれ!バリス刀っていうの?」


「そうよ、エスタル国の前の前の国の名前バリス国が使ってた武器ね」


「へー」


「でもこの武器使ってる人全然いないわよ」


「マジか」


「全然というより全くね」


「なぜこのバリス刀の良さがわからないのか、理解に苦しむわ~」


「誰なのよ」


「バリス刀があるところどこ?」


「こっちよ」


 ルイナについていくと


「ほぁ~」


「バリス刀はこの列だけね、人気もないから」


「これだけでも十分過ぎる」


 模造刀が売ってある店でもここまで多く並べられた日本刀は見たことがない。


「ど~れ~に~し~よ~か~な」


「ど~れ~で~も~いい~よ~な~」


「お~ま~え~は~だまってろ~」


「べ~つ~に~いい~じゃ~ん」


「なんでこんな喋り方なんだ?」


「知らないわよ」


 刀を見ながらゆっくり歩いていると


「おっ、これは」


 それは俺がたくさん持ってる模造刀の中で一番好きな模造刀と似ていた。

 目貫が赤く、柄巻が黒く、銀色に光る刃のバリス刀。


「これにしよう」


「わかったわ」


 俺たちは会計を済ませて、外に出た。


「えーと、バリス刀は腰の横につけるのよね」


 俺は買ったバリス刀をベルトに差した。


「うん、いい感じ」


「見た目だけ様になってるわね」


「でもルイナ剣術知ってるのか?」


「全然知らないわよ」


「え⁉」


「大丈夫よ、私の高校に元騎士団の先生がいるからその先生に教えてもらうのよ。明日からになるけど」


「そうか」


「あとは特にすることないし帰りましょうか」


「わかった」

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