第三話 ジャルカ


「へー、やっぱり木組みの家ばっかりだなー」


「アルトの世界の家は木じゃないの?」


「昔は木造だけだったけど今は鉄骨造が多いかな」


「てっ、こつ?」


「鉄っていう木よりも固いやつがあるんだよ」


「鉄は知ってるけどその鉄骨は知らないわ」


 鉄骨は作られてないのか。


「ここが商店街よ」


 遠くまで続く真っすぐな道の両脇に色んな店が開いている。


「ほぇー、面白そーう」


「ここには色んな物があるからね」


「俺がいた世界でも商店街ってあるけどこんなに盛んな商店街を生で見るのは初めてだな。というか市場みたいな感じだな」


「ここでは今日の晩御飯のジャルカの材料を買うわよ」


「ジャルカって?」


「んーとね。いい説明が思いつかないから食べてみてからのお楽しみ」


「わかった」


 そうして俺とルイナは一緒にジャルカという料理の材料を買うことになった。


「人参とジャガイモを二つずつくださーい」



「牛肉を300グラムくださーい」


 そういうのは日本と一緒の読み方なのか。しかもこの世界の食べ物は俺の世界にもあるやつなんだな。多分料理名が違うだけなのだろう。


「ジャルカの元をくださーい」


「なぁルイナ」


「なに?」


「そのジャルカって米と合わせて食べる料理?」


「そうそう!知ってるの?」


「俺の世界にも料理名は違うけどそれと全く同じ料理があるんだよ」


 ジャルカっていうのはカレーだろうな。


「このお米くださーい」


「おい、10キロのやつを買うのか?」


「先にたくさん買ってたほうがいいでしょ?」


「いやそうだけど、これを持つのはきついぞ」


「あぁー、そういえばアルト魔法使えないんだっけ?」


「多分なー」


「しょうがないわねー」


 ルイナは10キロのお米の袋に手の平を向けると袋が浮きだした。


「うおぉ!」


「これは風魔法で浮かせてるのよ」


「すげ~!」

 

 ふとルイナを見るとドヤ顔でこちらを見ている。すごくウザい。


「さっき『小学校で習わなかったの?』って言ってたけど魔法って誰でも使えるの?」


「そうね、基礎の魔法は小学校から中学校まで習うけど、高校からは自分の得意な属性の魔法を極めていく感じよ」


「ふーん」


 やはりこの世界にも学校はあるんだな。


「てか誰でもできるんならさっきのドヤ顔はなんなんだよ」


「ドヤ顔?そんなことしてないわよぉ~?」


 こいつは人をいらだたせる天才か。


「なら俺も魔法使えるんじゃね?」


「そうね、試してみる?」


「お、やった」


「まずは軽いものからからね。私のハンカチを浮かせてみよー!」


「どうやってやるんだ?」


「どう言えばいいんだろ?」


「俺が知るか」


「んーと、風が下からハンカチを押す感じをイメージして」


「風が下から押すイメージねぇー」


 俺は手をハンカチのほうに向けてイメージをした。


 すると手から風が出てる感じがした。


「お!浮いた!」


ハンカチが俺の肩くらいまでに上がった。


「おぉー、初めてにしては上出来ね」


 俺はさっきの仕返しにルイナに向かってドヤ顔をした。ルイナは『ちっ、褒めるんじゃなかった』という顔をしている。


「ま、まぁアルトの得意な属性が風だった可能性があるわけだし、普通だったかもね」


「そうですねぇ~」


 そういいながら俺は満面の笑顔を見せた。


「ぬわぁーもう!次は服を買いに行くわよ!」


「怒ってる?」


「怒ってない!」


 そんな会話をしながら俺たちは商店街を抜け服屋へ向かった。

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