7ページ目

中から光が溢れ出す。

その眩しさに一瞬目が眩むが、よく見ると装甲の内部は空洞になっており金色に光るコアを中心に非常に小さな文字が大量に描かれているのを確認できた。


「これは…アストラルを動かしてる命令式?」


文字が小さすぎる上、中をグルグルと動く文字も有る為何が書かれているかまでは確認できない。


「大方正解だ、私の中には動かす為の命令式や記憶と共に元となる本の内容が記されている」


つまり…と言いながらアストラルはテーブルに触れる。


「『変換対象〔木のテーブル〕分子構造解析完了、原子構造解析…完了、原子再構築』」


するとアストラルの手を中心に木の机がみるみる内に黄金に変換されていく。


「といった具合に我々写本は元本げんぽんの内容に添った魔法を使うことができる」


「これ…あの時の檻を変えたのと同じ魔法…?でも魔法の法則ルールを完全に無視してる!」


そう、一般的な魔法と言うものはが全てだ。

アイドニが悪党を拘束していた魔法も「植物への成長促進」と「風による蔓の操作」であり決して無から有を木から鉱物を生み出すような万能なものではない。


しかし、アストラルはそれをひっくり返すような奇跡をアキタカの目の前でやってみせた。


「…すごい…すごい!すごいよ!アストラル!どうやったの!?仕組みは!?どんな命令式を組んだらそうなるの!?質量は変わらないのかな!?ねぇ!」


未知というモノが大好きなアキタカは興奮のあまり椅子の上で立ち上がり黄金に換えられたテーブルに手をついてピョンピョンと飛び跳ねる。


「落ち着けアキタカ、行儀が悪いぞ」

「はい!」


野うさぎのように跳ねていたアキタカはアストラルに叱られると直ぐに座り直した。


「この世の物質は生物の目では確認できない程の小さな粒で構成されている、それを分子ぶんしと呼ぶ」


「うんうん」


いつの間にかアキタカは何処からかノートを取り出し熱心にアストラルの話を書き写していた。


「その分子を構成している更に小さな粒を原子げんしと呼ぶ、この原子という物は本来ならば干渉不可能な領域だが…私の魔法は分子や原子のに有るものに干渉し組み立て直す事で別の物質へと変化させる事が出来る」


「さっきやって見せてくれたヤツだよね!その魔法の具体的な名称ってあるのかな!元本のタイトルってどんなの!?」


「…3歳からの……」

「なになに?」


「『3歳からの原子変換術式』だ…」

「3歳からの…」


2人の間に奇妙な間が生まれる。

アストラルが珍しく恥ずかしそうにしているのが目に見えて分かるがアキタカは内心それ所ではなかった。


「このふざけたタイトルは決して私が考えたわけではなく作者のオリアクスが「ぼく!10歳だけどまだ間に合うかな!?」


アキタカは新たな知識を身に付けようと必死であった。


「…この魔法には特殊な『目』が必要だ、最小の世界を目視できなければ知識として知っては居ても人間に使いこなす事は不可能に近いだろう」


「そうかぁ…」


アストラルが申し訳なさそうに説明を付け加えるとアキタカは分かりやすく肩を落とした。


「でもそんなアストラルが何で…どうやってこの世界に来たの?伝説通りだと確かメイジレコードって…」


「ああ、伝説の通り地上とは違う場所にあるが…具体的な場所に関して直接的な話は出来ないよう命令式で発言に制限をかけられている」


伝説ではメイジレコードのある場所は『別の次元』『雲の上』『世界の切れ目の向こう側』など…

どれもだと言わんばかりの表現の仕方をされている。


なら、アストラルはどうやって来たのか?目的は何なのか?アキタカはそれも聞きたかったがアストラルの話を聞く限り難しそうであったが…。


「だが、場所以外なら伝えることが出来る」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る