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凄まじい勢いで走って追いかけるアストラル。

重量級の全力疾走に草を抜いて固めただけの道では耐えられずアストラルの硬い足に抉られていた。


「なんだアイツは!?バケモノか!?」

「なんでゴーレムが馬より速いんだ!もっと速く走らせろ!!」

「こ、これ以上は無理ですぜ!」


誘拐犯の男達もアストラルに気付き狼狽え始めた。


「おーい!アストラルー!」


アストラルが後方の馬車に目を向けると小窓からアキタカが満面の笑みで手を振っている所がチラチラと見える。

手を振られたら返すのが人間の礼儀だと思っている節のあるアストラルも走りながら手を振り返した。


もうすぐ後方の馬車に追い付く所で、馬車の両脇に居た馬に乗った男がスピードを落としてアストラルを挟むようにして並んだ。


「死ね!ガラクタ野郎!」


と右側を走っていた男がアストラルに剣を振った。

…がアストラルはその剣を手で受け止め握力のみで粉々に砕く。


「ヒッ…ヒィィイイイ!!」

「脆いな…」


そう呟くと剣を抜いたほうの男の首根っこを掴み引きずり下ろした。ついでに左側を走っていた奴も馬から引きずり下ろし、むさ苦しい大男2人をあたかも子猫を扱うかのように両手にぶら下げる。

もちろんその間もスピードを落とさず走ったままだ。


「しかし、人間と言う生き物は先程砕いた鋼の塊よりも脆いらしい…なら丁重に扱わねばならんな?」

「へ、へぇそうでございやす旦那ァ…へへへよくご存じで…」

「命だけは…命だけは…!」


実力差が明らかとなった為、ぶら下げられながらも両手をもみ下手な胡麻を擂る悪党達。

それを意に介さず小窓から覗いているアキタカに目を向ける。


「アイドニ少年、聞こえるか」

「は、はい!」

「これから教育上良くないことをする」

「わかりました!」

「え!なに?アイドニ!?」


直ぐに察したアイドニが小窓の外を覗いていたアキタカの頭を抱えるようにして目と耳を塞ぐ。

アストラルは感謝の意を込めて頷くと走るスピードを上げて前方の馬車に並ぶ。

狙いを定めると右手の悪党を前方の馬車の御者に向かって投げた。


「ヒィィイイイ!!!すみませんすみません許して下アアアアアア!!」


飛んできた大男ごと吹っ飛んでく御者。

低木に向かって飛んでいったので気絶はしていても死んではいないだろう。


御者を失った馬車は道から逸れてその先の草むらのなかで転倒した。

中から男が出てくるのを確認すると左手の悪党も投擲する。

「ごめんなさいごめんなさい!!やめて!やめてぇ!!アアアアァァアァアァァァァ!!!!グペッ!!」


投げた悪党は出てきた悪党に見事命中し両方気絶した。


「さて…どうしたものか…」

子供達を乗せた残りの馬車と並んで走りながら考える。

先程転倒させた馬車は悪党しか乗っていなかったため大きく出れたが、中の子供を傷付けずに馬車を止めるとなると難しい。


「仕方ない…これだけは使いたくなかったが…」


そう呟くと馬車に手を触れる。


「『スキャン、内部構造確認中…保護対象探知完了…変換対象〔鋼鉄の檻〕分子構造解析中…完了、原子構造解析、原子再構築中…完了』」

「わ!なに!?」


アストラルのが終わるとアキタカとアイドニが入っていた鋼鉄の檻が風船のように弾力性を得て膨らみ始めた。とても柔らかい為苦しくはないが身動きがとれなくなる2人。


「すまない、少しの間我慢しててくれ」


そう言うと狼狽えている御者を殴り飛ばし、馬と馬車を繋いでいる紐を切る。

馬は逃げ出し馬車のみが走るそれをアストラルが前から受け止める。

ミシミシバキバキと音を立て形が歪になりながらも馬車は停止したが、思わぬ急停止に乗って居た残りの悪党が前方から外へ投げ出され地面に頭を打ち気絶した。

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