見えない扉⑪


 彼らの行おうとしているのは、

『全世界同時兵糧攻め計画』

 である。

 つまりは、彼らが事実上の七割以上を牛耳っている食品流通ネットワークを故意に停止させ、抗争をめぬものであれば兵糧攻めを決行しようとするものである。

「だけど、これだけでは返ってこちら側が攻め入れられる要因を作りかねない。だから、他の組織と組む必要があるんだよね」

「ええ。それで、自然原理主義を掲げる〝ネオ・ネイティ〟と手を組む必要があったというわけね」

「そうだね。確かにネオ・ネイティは、あれも武力で核融合情報自治区を破壊しようとしている組織だけど、もちろんあの人たちは人間や生き物を機械に換えたりしない自然派組織だからね。当然、あの人たちも食べ物がなければ生きてはいけない」

「つまり、それも共存共栄の関係というわけね。そちらが戦うだけしか能のないのであれば、こちらだってコントロールし易いから」

「そういうことだよ。科学だって医学だってどんなに有用性のある知識だって、それを上手く活かせられなければ、ただの手に持て余す道具にすぎない。つまり、馬鹿と鋏は使いようってことさ。決してこのことわざは、相手をけなして言っているんじゃない。要は、道具は使いようによっていかほどにも能力を出し切れるという例えさ」

 そしてすぐさま、抵抗組織フォール・アシッド・オーは、彼らが牛耳っている全世界の食物を一旦停止させた。

 無論、それによって彼ら自身も利益を落とす羽目になったのだが、

「元々、食品と言う分野は相場制だからね。無理にでも高く買ってくれる地域があるお陰で、それもそれほどのダメージを負わないでいられる」

 と言うわけである。


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