全世界接近戦㊸
※※※
しかし、いかな小紋でも、この敵を相手にするのは困難を極めていた。
彼女は、かの羽間正太郎が唯一認めた弟子と言うこともあり、本能的に〝三心映操の法術〟を使用することが出来る。
それは、自らの無意識がとらえた知覚によって、先々に起こる危険を察知し、それに対処する究極の感覚的体術である。
だが、そんな小紋であっても、師である羽間正太郎のように、それを糧にして相手を打ち倒すまでには至らない。
なぜならば、彼女は究極の奥義〝三心映操の法術〟を道具として活かしきれていないからだ。
(あのお二人に、大見得切ってあんなカッコいいこと言っちゃったけど、僕の腕前じゃ、もういっぱいいっぱいだよ……!!)
小柄な身体を
しかし、だからと言って、小紋にはこれ以上の打つ手がなかった。
四方から無尽に投げ出される銀色の円月輪は、その出どころや角度が分からなくとも、究極の法術によって飛来する軌道を捉えることが出来る。
とは言え、この集中力が途切れてしまえば、いかな彼女とて全てはご破算に帰す。
(なんとかしないと、なんとか……)
小紋が、焦燥の汗を滴らせ、繰り返しトンファーを振りかざした時である――、
(逃げて……)
声が聞こえた。
(逃げて……。小紋さん……)
どこからか、聞き覚えのある優しい声が、心の奥底に響いてきたのである。
「何!? 何なの!? 誰? この声……!?」
一度目に聞こえてきた時は、さすがに幻聴の類いであると思ったが、幾度となく脳裏に木霊するその声が、現実のものであると確信できた時、
「この声……!! もしかして、クリスティーナさん!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます