災厄の降臨㉜


 偵察任務の三日目にして、ようやく寄留地の西側に位置する第127自治区のエリアに差し掛かった。

 この127エリアは、巨大な新興住宅地を中心とした街が基礎であったため、周辺はしっかりと整地がなされており、外部からの侵入を阻んだ防御柵で隔てられていた。それさえ敷設されていなければ、とても変容な集落には感じられなかった場所である。

「しかし、ここも以前調べた自治区と同じですね。防護柵の内部側だけが、しっかりと燃やされてしまっている……」

 シグレバナが冷静に周辺を見渡した。

 三人は、この間と同じように、しっかりと熱源と放射線防護の対策を施した全身スーツを着込んでその周辺に乗り込んだ。

 とは言え、シグレバナに備わったそれぞれの放射線を示す数値にも問題は見られず、極めて有害な発生ガスも検知されていない。

「一体何なのでしょう? ここまで徹底的した破壊をする理由は……?」

 このカレンバナの言葉が全てである。正確無比。必殺必中のまるで全てを杓子定規で計ったかのようなこの破壊工作に、三人それぞれ息を飲むばかりである。

「あの獰猛で低知能の代名詞でもあった凶獣が襲ったにしては……」

「あまりにも出来過ぎていますね、この状況は……」

 元87部隊の彼女たちにとって、この凄惨な光景が偶然の産物でないことは容易に理解出来る。

 無論、すでに小紋も同様の意見を持っていた。

 かの弱肉強食を絵で描いたようなヴェルデムンド世界では、このようにピンポイントで凶獣が破壊行動を行ったという前例がない。

 そればかりか、襲われた人々のむくろが、防護柵外のエリアに全く見られないのは、かえって異様でしかなかった。

「そうだね、カレンバナさん。シグレバナさん。これは本当に出来過ぎているよ。まるで、誰かが意図してヴェロンたちを操って襲わせているみたいだよ」

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