災厄の降臨⑫
そう言って、カレンバナがシグレバナに問い掛けた瞬間である――。
「なにやつっ!?」
カレンバナが何かの気配に気づき、草むらの中に得意の十字手裏剣を放った!
と同時に彼女らが体を預けていたハンモックが、中心から真っ二つになる。
しかし、その直前にシグレバナもいち早く気配に気づき、小紋を抱きかかえたまま、三メートル上にある太い枝まで一気に跳躍していた。
「ふう、間一髪でした……。しかし、なぜ、このようなくせ者の気配に気づかなんだか……」
瞬間、シグレバナが足元に目を凝らす。シグレバナは、87部隊きっての元工作要員である。がゆえに、彼女に備わる索敵機能は、その他の部隊員の能力を凌駕している。
シグレバナは、即座にカレンバナに直接通信を行う。
(き、気を付けてください、カレンバナ……)
呼応して、
(シグレバナ……一体状況はどうなっているのです? 身共のセンサーでは、気配に気づくのがやっとでした。それだけに、曲者のその後の足取りが掴めません……)
カレンバナが、胸の谷間に携えた十字手裏剣を構えながら辺りを
(そ、それが、身共のセンサーでも感知出来ないのです……。確かに命を狙われた形跡があるのですから、そう遠くには逃げていないはずなのですが……)
(そんな……!? シグレバナの
カレンバナもシグレバナも困惑した。シグレバナの感知能力は、この木々に覆われた暗闇の中でも、半径三百メートル周囲の対象を見逃すことはない。
「姿を現しなさい!! そこに居るのは分かっているのです!! そちらから姿を見せなければ、こちらから行くのみです!!」
カレンバナが叫んだが、辺りは元通りしんと静まり返り反応が無い。
「鳴子沢さま、鳴子沢さま、起きてくださいまし!!」
枝上でシグレバナが小紋を揺り起こすと、
「う……うん」
と、気だるそうに瞼をこすりながら、
「あれ? やだ……僕ってば、こんなところで眠っちゃったの?」
シグレバナの豊満な谷間から、恥ずかしそうに耳を真っ赤にしながら見上げる小紋。彼女は、今の今までシグレバナの術中の夢の中であったことすら認知すら出来ていない。
「鳴子沢さま、緊急事態です!! 身共らは何者かに命を狙われております!!」
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